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これを読めばすべてわかる! プレミアリーグ 16-17シーズン「全クラブ通信簿」(1位~10位編)

6/7(水) 8:25配信

SOCCER KING

 誰が言ったか、「監督の世界選手権」。2016-17シーズンのプレミアリーグは、伏兵レスターの優勝で混迷を極めた前シーズンとは打って変わって、希代の名将たちが率いるビッグ6による完全な支配体制が築かれた。

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 その意味で言えば大きな波乱はなかったが、遠くから見たら“凪”の海も、近づいてみたら“時化(しけ)”だったなんて場合もある。つまり6強内の勢力図には数々の驚きがあった。アントニオ・コンテのチェルシーは予想を上回る強さを見せた。優勝候補筆頭だったペップ・グアルディオラや、欧州カップ戦不参加の優位性を持っていたユルゲン・クロップを抑えて輝いたのはマウリシオ・ポチェッティーノ。一方でアーセン・ヴェンゲルは来てから初めてチャンピオンズリーグ出場権を逃し、ジョゼ・モウリーニョも“帝国の逆襲”ならず。プレミアの盟主だったアーセナルとマンチェスター・Uが、そろってトップ4を陥落したのは初めてのことだった。

 6強が例年よりも高いポイント水準で上位を争った一方、それ以外の14チームは7位エヴァートンを除いて勝ち点が伸びなかった。ボトム3のハルとノースイースト組(ミドルズブラ&サンダーランド)を除いた10チームはいずれも勝ち点「40」台で、このミドルエリアが大混戦だったのも今季の特徴だ。その中でシーズン途中での監督交代に踏み切ったレスター、クリスタル・パレス、スウォンジーが、それを機にチームの運命を大きく変えることに成功したのが印象深かった。

■優勝:チェルシー(93点)
 正直、100点満点をあげてもいいのだが、欧州カップ戦不参加のアドバンテージ、9月頃のちょっとしたつまずき(結果的にそれが3-4-3採用の布石になったわけだが)、そして今後のさらなる進化に期待して“伸びしろ”を残しておく意味で、少しだけ減点。彼らが獲得した勝ち点と同じ「93」を彼らの評点としたい。これは2004-05シーズンのモウリーニョ・チェルシー(95)に次いでプレミア歴代2位の勝ち点数。そしてリーグ戦38試合で「30勝」到達は、イングランドのトップリーグ史上初の快挙だった。
 9月のアーセナル戦に0-3で敗れてスパッと旧式の4-3-3を諦めた決断力、適材適所で機能性抜群の3-4-3を短期間で完成させた戦術センス、時に情熱的に、時に冷静に教え子たちの意欲と能力を引き出したマネジメント力。アントニオ・コン監督の完璧な仕事ぶりには驚嘆せざるをえない。
 そんなボスに明確な役割を与えられ、期待に応えた選手たちも見事のひと言。PFA(選手投票)、FWA(記者投票)、そしてリーグ公式と年間MVPの3冠を達成したエンゴロ・カンテを筆頭に、スランプから完全復活したエデン・アザールやジエゴ・コスタ、下馬評を覆してチームのキーマンとなったペドロ、ダヴィド・ルイス、マルコス・アロンソ、ヴィクター・モーゼズ……挙げればキリがないが、間違いなくシーズン最強のチームだった。

■2位:トッテナム(90点)
 スタメンの平均年齢はリーグ最年少の25歳298日。だが、トッテナムを「これからの若いチーム」と侮るなかれ。2年連続で最後まで優勝争いに絡み、ホワイト・ハート・レーンのラストシーズンという節目をホーム無敗で飾ったヤング・スパーズは紛れもなくプレミアリーグの主役である。
 マウリシオ・ポチェッティーノ政権3年目。見ていて楽しいハイプレス・ハイライン戦術により磨きをかけ、リーグ最多得点&最少失点を達成し、あらゆる面で昨季を上回った。18ゴール・7アシストのデレ・アリ、クラブレコードの15アシストを記録したクリスティアン・エリクセン、2年目でブレークしたソン・フンミンら、攻撃陣はみな出色だった。だが、何よりハリー・ケインである。序盤戦のケガもありここ3シーズンで最も少ないリーグ戦30試合の出場に留まったにも関わらず、過去2季を上回る29ゴールと大爆発し、2年連続得点王の座をゲットした。
 そのケインをはじめ、守備の要トビー・アルデルワイレルトやダニー・ローズを欠いた時期もあったが、指揮官が考案した新オプション「3-4-2-1」が機能したこともあり、多少の欠場者が出ても迫力を維持できるチームに成長した。

■3位:マンチェスター・シティ(50点)
『スカイスポーツ』や『BBC』の名だたる解説者たちが、開幕前の優勝予想でこぞってシティの名を挙げた。実際に開幕から公式戦10連勝というロケットスタートを切り、世界中がペップ・シティの誕生に心を奪われた。
 そんなインパクト抜群の登場シーンを思えば、「無冠でリーグ3位」という最終結果はなんだか物足りない。ジョゼップ・グアルディオラのプレミア挑戦1年目はCLストレートインという最低限のノルマを達成しただけ。そう言われても仕方がない。GKクラウディオ・ブラボ、DFジョン・ストーンズとペップの肝いりでやってきた新戦力が本業の守備で結果を残せず、両サイドバックが中央で“偽インテリオール”となる独自戦術を完璧に遂行できる人材もフェルナンジーニョだけだった。最後まで後ろが安定しなかったことが、最大の敗因だろう。12月のレスター戦(2-4)や1月のエヴァートン戦(0-4)、モナコと6-6の撃ち合いを演じてアウェーゴール差で散ったCLベスト16の試合などがその象徴だ。
 ただ、ケヴィン・デ・ブライネとダビド・シルバの創造力を存分に生かし、レロイ・サネやガブリエウ・ジェズスといった新星も台頭した攻撃陣は見応えがあった。後ろをどう改善し、前をどう伸ばすのか。2年目のペップ・シティも楽しみだ。

■4位:リヴァプール(70点)
 就任後初めてのプレシーズンを経て、ユルゲン・クロップ監督はチームをしっかりブラッシュアップ。代名詞であるカウンタープレスとハイプレスがそのキレ味を増し、昨季は散発的だったボール奪取後の攻撃はかなり流麗でスピーディーなものになった。絶好調だったシーズン前半戦はあらゆる試合で大半の時間を敵陣で過ごし、これでもかとゴールと白星を重ねた。
 ところが、フィリペ・コウチーニョのケガ、サディオ・マネのアフリカネーションズ・カップ出場に加え、年末年始の連戦によるレギュラー組の疲労も重なって“足が尽きた”1月にまさかの大失速。選手層の薄さ、ベタ引きしてくる格下の崩し方、セットプレーやカウンターへの対応力など数々の問題を露呈して優勝戦線から脱落した。3月以降は12試合でわずか1敗(8勝3分け)と持ち直してノルマだったCL出場権奪還は果たしたが、前半戦の躍動を思うと「もったいない」という感想がピッタリだった。
 ビッグ6+宿敵エヴァートンの上位7強相手には7勝5分け0敗と無類の強さを見せながら、それ以外のクラブに6敗(15勝5分け)というチームの“矛盾”が大いに悔やまれる。欧州カップ戦がカレンダーに加わる来季は、質・量ともにしっかりとした補強が必要だ。

■5位:アーセナル(40点)
 最後に手にしたFAカップのトロフィーも慰めにはならない。プレミア5位は、昨年10月で就任20周年を迎えたアーセン・ヴェンゲルにとってワースト順位。彼の就任以降で初めてCL出場権獲得を逃した。その上、サポーターはヴェンゲル政権で初めて「セント・トッテリンガム・デイ(スパーズよりも上の順位が確定した日)」を祝えなかった。泣きっ面に蜂である。
 前半戦はアレクシス・サンチェスの1トップ起用、後半戦は3バック採用というフレッシュなアイデアが目を引いたが、シーズンを通した不甲斐ない印象は何度も見かけた「Wenger, OUT」の文字が物語る。サンチェスの走力や気概に仲間が追随できないチームの“温度差”が露になり、メスト・エジルがスランプに陥った2月~3月は特に低調で、CLでは「いつもの16強」でバイエルン相手に2試合トータル2-10の歴史的大敗。そのバイエルン戦に限らず、リーグでもビッグ6直接対決の10試合で勝ち点わずか9ポイントと、やっぱり大一番に弱かった。
 賛否両論が渦巻く中で5月末に続投が発表されたヴェンゲルだが、「Same Old Arsenal(いつものアーセナル)」を脱却できなければ、来季もアンチ・ヴェンゲルのデモ活動が沈静化することは決してない。

■6位:マンチェスター・ユナイテッド(60点)
 さすがは「神」を自称する男。ズラタン・イブラヒモヴィッチさまさまのシーズンだった。プレミア28試合出場で17ゴール5アシスト。出場した全5大会でネットを揺らし、公式戦通算28ゴールをマーク。アレックス・ファーガソン勇退後のクラブで初めて公式戦20得点の壁を破った。正直、今季のマンチェスター・Uに彼がいなかったらと思うとゾッとする。
 というのも、彼が点取り屋として仕事をしたにも関わらず、リーグ戦38試合で総得点「54」はビッグ6の中でダントツの最下位であり、エヴァートン(62)やボーンマス(55)よりも少なかったのだ。ジョゼ・モウリーニョ仕込みの堅守こそ光ったが、点が取れなかった結果が、リーグ最多の「15分け」、プレミア創設後の最多となるオールド・トラッフォードでの「10分け」というドロー地獄につながった。9月から5月にかけて記録したクラブレコードのプレミア25試合連続無敗も、その内訳が「13勝12分け」ではあまりに厳しい。
 イブラ以外にもダビド・デ・ヘア、アントニオ・バレンシア、アンデル・エレーラと各ラインで奮闘した選手はいたものの、他の選手たちは総じて不完全燃焼なシーズンに。決死の覚悟で臨んだヨーロッパリーグを制覇して来季のCL出場権を獲得できたことが、唯一の救いである。

■7位:エヴァートン(80点)
 6位マンチェスター・Uとは勝ち点8差、8位サウサンプトンとは15差。ロナルド・クーマン新監督の下、文字通り「6強以外で最強」の立ち位置を確立した。過去2季連続で11位に沈んでいたクラブの嫌なムードは取り払われ、ロベルト・マルティネス政権の最後にはブーイングが飛んでいたグッディソン・パークで稼いだ勝ち点「43」はプレミアでのクラブ新記録だった。
 ロメル・ルカクがリーグ2位の25ゴールと大爆発し、相棒ロス・バークリーも昨季の不振を脱した。それでいてマンチェスター・Cと並ぶ17人のスコアラーを生み出すなど2枚看板に依存しきった印象もなく、ここ2年で失われていた堅守も新リーダーのアシュリー・ウィリアムズ、リーグのタックル王に輝いたイドリッサ・グイエらの活躍である程度は取り戻せた。さらに、トム・デイヴィスやメイソン・ホルゲイトなど有望な若手を積極的に先発させ、実践で鍛える大胆な“クーマン節”も健在だった。
 シティ、アーセナルに一度ずつ勝ったものの2勝2分け5敗だった対6強の成績や、わずか4勝で得点数もホームの半分以下だったアウェー戦の出来など課題も色々と出てきたが、総じて実りあるシーズンだったと言っていい。

■8位:サウサンプトン(60点)
 8位とまずまずの順位でシーズンを終え、4季連続でトップ10を維持したが、稼いだ勝ち点はわずか「46」。ロナルド・クーマン前監督が過去2季連続で60ポイント越えだったことを考えれば“後退”の印象が残る。
 足かせとなったのは、リーグワースト6位タイの41ゴールという得点力不足。前半戦はチャーリー・オースティンが、彼が負傷離脱した後は1月にナポリから加入したマノーロ・ガッビアディーニが随所で卓越したゴールセンスを垣間見せ、ネイサン・レドモンドも7ゴールとまずまずの結果を出したが、攻撃陣全体の迫力で言えばあまりに一貫性を欠いていた。
 そんな理由からサポーターの人気は芳しくないクロード・ピュエル監督だが、彼自身は決して失望のシーズンだったとは思っていない。その背景にあるのが、リーグカップ決勝進出と、若手の成長である。育成に定評がある同監督はトッテナムに次いで若い平均年齢「26歳169日」のチームを作ったが、その象徴がジャック・スティーヴンスだった。ジョゼ・フォンテの電撃退団、フィルジル・ファン・ダイクの負傷離脱で不動のセンターバックコンビを失ったチームを懸命に救ったのが、先発に抜擢された23歳のスティーヴンスと、彼をリードした吉田麻也の急造コンビだった。

■9位:ボーンマス(85点)
 プレミアリーグ初挑戦で見事に生き残った昨季に続き、2年目も勇敢なプレースタイルで残留を勝ち取った。それどころか、終盤戦の華麗なラストスパートで順位を大きく上げて驚きのトップ10フィニッシュまで成し遂げた。
 評価がうなぎ上りのエディー・ハウ監督は、普通なら弱者の戦いを選んで然るべきリーグ最小予算規模の弱小クラブで、攻撃的かつアグレッシブな強者のサッカーを貫き通した。「いい組織を持っている。常にバックラインからプレーし、いいプレッシャーをかける。こういうやり方を続けるなら、彼はきっと偉大なチームの監督になれるだろう」。そうハウを誉め称えたのは優勝監督のコンテである。
 シーズンハイライトは、2点ビハインドからラスト15分で大逆転し、4-3で勝った12月のリヴァプール戦。エッジの利いた彼らのスタイルを象徴するような試合だった。その後の1月と2月は1勝もできない乱調期に入り、批評家たちは「残留したかったら引いて守れ」と声を荒げたが、ハウは屈しなかった。我慢の甲斐あってか、シーズン16ゴールと最高のシーズンを過ごしたジョシュア・キングのブレークも手伝って持ち直した3月以降は12試合でわずか2敗(5勝5分け)。ブレない信念の勝利である。

■10位:ウェスト・ブロムウィッチ(75点)
 一度も降格を味わったことがない男、トニー・ピューリス監督が真骨頂を発揮した。エキサイティングな試合もなければ、通を唸らせるような戦術もない。それでも、淡々と相手の攻撃を跳ね返し、カウンターとセットプレーで数少ない好機を生かす“ミッドテーブル仕様”の現実主義的スタイルに今季も注力し、難なく7年連続のプレミア残留を達成した。
 上位勢には大敗しても、同格以下の相手にはほぼ負けなし。そんな手堅いシーズン運びで、3月中には残留ラインと言われる勝ち点「40」を早々に確保した。その後、4月以降のラスト9試合は2分け7敗と一度も勝てなかったが、40ポイント到達後に大きく調子を崩すのはピューリスのチームではお馴染みの現象。2月頃まではエヴァートンと7位を争っていただけにもったいない感じもするが、ボスにとっては通常運転でノルマを達成しただけである程度は満足かもしれない。
 それよりも、注目してあげるべきは指揮官が最もこだわるセットプレーの有効性だ。今季の彼らは総得点のうち49%をセットプレーからゲットしており、特にコーナーキックから16ゴールはリーグ最多だった。自分たちの武器をこれほど有効に生かして結果を出せるチームも珍しい。

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最終更新:6/8(木) 4:14
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