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【インタビュー】PlayStationプラットフォームの「これから」―盛田厚プレジデントが語る

6/8(木) 7:30配信

インサイド

世界最大規模のゲーム見本市「E3 2017」の開催が目前に迫り、ゲーム業界が最も盛り上がりをみせる時期。ソニー、任天堂、マイクロソフト、各ファーストパーティーがどんな発表を行うのか、その動向が大いに注目されています。

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編集部は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア盛田厚プレジデントを取材。2017年年末商戦に向けたPlayStationプラットフォームの戦略と今後の展望を語ってもらうと共に、気になるトピックにも答えてもらいました。

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■「もう一度、PS2時代の状況を作りたい」―盛田氏が描くプラットフォーム戦略とは


盛田プレジデント: 2016年はSIE、PlayStationとしては非常に好調に推移しました。ワールドワイドだけではなく、日本とアジアも非常に良い結果で2016年を終えることができました。最初のステップは、私が着任した2年ちょっと前に遡るのですが、「日本向けのタイトルが足りない」とすごく言われていて、遊びたいタイトルがないからPlayStation 4 (以下:PS4)をまだ買わないという話があった中で、日本のビッグタイトル、日本のユーザーが遊びたいと思っているタイトルを出していくことに注力しました。それを順次発表、発売されてきたということが、ここまでのタイミングでほぼできたと思っています。

ハードウェアの方もPlayStation 4 Slimで買いやすい価格になり、一方でPlayStation 4 Proのようなハイエンドのモデルも発売することができて、ゲームファンと言われている人たちに対してのアプローチは、基本的にはできたと思っています。我々の目標としていたPS4の第1ステップは、達成出来たと考えています。

次はいよいよ第2ステップに入っていきたいと思っているのが今年考えていることで、昔は子供の頃に各家庭に、子供がいる家庭にはほぼ必ずゲーム機があって、持っている友達の家に遊びに行き、みんなで遊ぶ、という時代がありました。その子どもたちが大人になり、仕事が忙しくなったり、家庭を持ったりしてゲームをやらなくなっているという状況が起きていると考えています。

それに対してもう1度「PlayStation 2」(以下:PS2)の時代のように家庭にはゲームがあって、ゲームを楽しんでいる、という状況を作りたい、簡単に言うとPS2ぐらいまでに売りたいというのを次の目標にしてやっていきたいと思っています。

その1つとして「Day of Play」というキャンペーンをE3に合わせて6月9日から約1週間実施します。SIEが設立して1年ちょっと経つのですが、グローバルで毎月戦略の議論やレビューをしたりしており、グローバルで何かできないか、という話になりました。

今までキャンペーンを打つというのは地域ごとで、商戦期って国によって違う。チャイニーズニューイヤーというのがあったり、日本ではお年玉需要や入学式、卒業シーズン、長い休みの前といった売れるシーズンがあり、アメリカで言えばブラックフライデーだとか、ホリデーシーズンだとか、売れるタイミングがそれぞれ違うので、それに合わせてみんなプロモーションを打ってきました。PlayStationという統一した戦略があり、グローバルでこれまでどういう活動ができるか、何ができるかという話をしてきたなかで、1つグローバルのキャンペーンを展開してみたらどれぐらいできるだろうというのをチャレンジみたいな、と。

「E3」というのはゲームファンにとっては楽しみにしているイベントなので、そこに合わせてグローバルに展開することで、インターネットが普及した今の時代ならではのやり方ができるのではないか、というのが今回のキャンペーンの狙いです。さまざまな商戦期はあるのですが、PlayStationがゲームファンのために作った商戦期というのが、どこまで盛り上げられるかどうかというのをトライアルとして試してみたいと思っています。

人って凄いイベントがあるとお祭り気分でワクワクして、米国で言うとスーパーボウルがやってくると、そこの街はなんとなくお祭りみたいになるんですね。それと同じような形で「E3」のタイミングでゲーマーがウキウキしているときに、ゲームファンに向けて、特にデジタルを中心にディスカウントキャンペーンのオファーをしてみると盛り上がるのではないかと考えています。

キャンペーン内容は各国で少し違いますが、PS Storeを中心に、日本で言うと50タイトル、日本のファン向けのタイトルをピックアップして、スペシャルディスカウントをやることにより、改めてゲームをこの週遊んで頂く。店頭においてはPS4とDualShock 4をセットで買って頂くとDualShock 4が半額になります。この機会にPS4を買って遊んで頂くというのもあるのですが、DualShock 4をもう1個買っていただいて、友達や家族と遊んで頂くと言うのをプロモートしたいという意味もあってこれを展開します。

もう1つは年末に向けてですが、これまでやってきた活動の繋がりで、PS2並を目指して、原点に返り、PlayStationをみんな知らなかった頃、ローンチした頃にPlayStationって何?と言われていた時の気持ちを思い出し、ゲームファンに向けてゲームタイトルをプロモートするだけではなくて、一旦ゲームをやれなくなってしまった人達やゲームをしていない人達に向けて「ゲームの楽しさってこういうもの」、あるいは「ゲームってこういう素晴らしい体験ができます」というメッセージを届けていこうと考えています。

子供の頃の体験ってすごく後まで残るので、ゲームで素晴らしい体験をすると、子供の心に残って素晴らしいイマジネーションを刺激できるので、親子で遊ぶ、という体験を提供したいです。


「全てのタイトルはPlayStationに集まる」と昔言っていたことがありましたが、いろいろなタイトルが出てくるべきだと思っていて、ゲームファン待望のタイトルはもちろんですが、『ドラゴンクエストXI』のように、誰でも名前は知ってるだろうとか、ナンバリングのどれかは遊んだことがある、というようなタイトルがいよいよ出てくるとか『New みんなのGOLF』のように家族や友達とカジュアルに遊べるものや『グランツーリスモ』のように車好きの人にうってつけのタイトルとか、さまざまなタイトルを出していくことで幅広くリーチしていきたいです。そして、親子で遊ぶ、これをきっかけに遊ぶというタイトルをたくさん出していきます。

さらにリアルなイベントとして「PlayStation祭」というイベントを、より強化していきたいと思っています。子どもたちが家で戦っていた、それを他の友だちが後ろで見ていたというのをさらにもうちょっと展開した形です。ゲームをどこかみんなで集まってチームを組んで戦う、あるいはそれを見て応援するという「見る楽しみ」としてのゲームをすごくプロモートしていきたくて、東京ゲームショウの後に地域ごとのキャラバンを実施したり、『Call of Duty』の大学対抗だったり、さまざまなものを「PlayStatio 祭」と呼び、点ではなくて線にしていく活動をしていきたいと思っています。

ゲームをやる人の裾野を広げていくと、最高レベルの技を見せていく、そこに憧れてもらう、というのが1つポイントだと思っていて、プロ野球があるからリトルリーグに入って草野球がある、ワールドカップを目指したいからサッカーを始めるという形と同じように、最高峰があると地域でやるゲームが盛り上がるという形を作っていきたい、それを「PlayStation祭」という形で盛り上げていきたいなと思っています。

もう1つ言うと、この先にあるのは、「みんなのPlayStation」「一家に一台PlayStation」ということを狙っています。もちろん、ゲームを楽しんでいただくためにやるのですが、ゲームだけじゃなくてビデオサービスやYouTube、音楽を聞くと言ったいろいろなエンターテインメントがあると思います。そんななか、どういうエンターテインメントでもPlayStationで楽しむことができる、最適な楽しみ方ができる形にしたいと思っていて、ゲームをやるためにPS4を買う、でもそのPS4はYouTubeを見たりビデオサービスを見るためにPS4を使っているとなると、PS4さえあればなんでも楽しめる、一家に一台PlayStationがある、そういうところを目指した動きというのはこれからどんどんかけていきたいです。

楽しいと言われるサービスはどんどんPlayStation上に持ってきたいというのと、せっかくソニーグループにエンターテインメントの会社がたくさんあるので、そういうシナジー効果も含めて、アニプレックスのアニメやソニー・ピクチャーズの映画、ソニー・ミュージックのアーティストなど、さまざまなコンテンツがPS4上で楽しめる、あるいは1つのIPやキャラクターをいろいろな形でプロモートしていく、アニメもやるしアニメがゲームになるし、それが映画になったり音楽になったりという、総合的に盛り上がっているということをソニーグループならできると思っています。

昔はそういう環境ってなかなかなかったのですが、インターネットも整いボーダーがなくなってきているので、実際にコミックがドラマになったり、それが映画化されたり、アニメが実写化されたり、ゲームが舞台になったり、アニメがゲームになったりということが出てきているので、それがソニーグループだと一層やりやすいし日本で回していける、それをまたアジアに展開できるというのはやりやすい可能性はあるので、そういう展開もどんどん加速していくことによって、みんなのPlayStationを周期的な流れでやっていきたいと思っています。

※次ページ: 盛田プレジデントにインタビュー、気になるトピックを直撃!

■スマホシフトによってゲームの裾野広がる、PS4ならではの体験を―盛田氏インタビュー


――オンデマンドのストリーミングを中心として、基本的にPlayStationプラットフォームのコンテンツは、デジタル配信での提供を中心にしたみせかたなのでしょうか

盛田プレジデント: ユーザーがどう思うかなので、我々はどちらかというと、例えば映像配信であれば、一番ユーザーが欲しいと思っているサービスはPlayStationに持ってきたいと思っていますし、PS Storeも同じで、できるだけ買いやすく、いろいろなタイトルを提供できるように頑張って改善やプロモーションはしていきます。でもユーザーの人達はやっぱりパッケージを持つという楽しみ、物欲もあると思うのですが、そこはユーザーのチョイスをできるだけ持たせるようにしたいです。ユーザーが何を一番欲しているかですね。デジタルだからこそ、ネットワークだからこそできることってありますし、せっかくそういうのがあるのだったらフルに活用できるようにさせたいですし、ディスクを買って、ダウンロードコンテンツはデジタルで買うといった連携させていくこともできるので、どうやったらユーザーが一番便利に感じるかというのも考えています。

――提供会社さんのやりとりなどが面倒くさいと感じる部分もありますが、そういうのも取り払っていきたいということですか

盛田プレジデント: できるだけユーザーというところに目線を置いていきたいですね。もちろんいろいろなことは配慮しなきゃいけないことはありますし、勝手にどんどん動いていいとは思っていないですが、一番楽しめる形にしたいです。

――第1のステップで国内タイトルを充実させていきたいとのことですが、逆に今一段落した感はユーザー目線としてはあります。そこから今後どうなっていくのか気になっています

盛田プレジデント: 時代もあると思うので一概に昔と同じことをやるとは言えないです。昔のIP『パラッパラッパー』を発売しましたが、みんなが楽しんでいたIP『クラッシュバンディクー』といったIPを出していくという活動は今展開し始めていますし、すごくゲームファンが欲しいと思っているタイトルを出してあげるというところから、楽しいタイトルを出していくというところにフェーズはシフトしてきています。昔のIPからちょっとカジュアルにみんなで楽しめるタイトルが提供できるようになっていく段階かなと思っています。そういう意味ではPS4が成熟期に入ったので、ソフトウェアの収穫期であり、ピークを迎えてくるということで、それに向けてE3でタイトルが発表できるのは楽しみです。


――今までスペックを活かしたリッチな、大人向けとも言える路線もありましたが、よりカジュアルなものを提供していくことになるのでしょうか

盛田プレジデント: そうですね。PS4 Proも含めてすごくリッチな体験というのはPlayStationの強みでもあるので、今後もそこは出していきます。一方で、もっとカジュアルなタイトルは是非出していただきたいと思っています。海外はインディーズがすごく強いので、いろいろなタイトルが出てくると思っています。

今後アジア展開も強化していきたいと思っていて、1つが東南アジア、もう1つが中国です。東南アジアは普及率もまだまだで伸びる余地があるので、そこに向けてお店を整理して販売活動をしていくというところです。

もう1つの中国はセンサーシップというソフトの認証をしていただかなければならないものもあり、リリースに時間がかかって思うようにタイトルを増やしていけないというのもあります。我々は今「チャイナヒーロープロジェクト」というのをスタートしていまして、ローカルのデベロッパーさんに対して開発機材のサポートやファイナンシャルのサポートをベンチャーキャピタルと組んでやっていくことで、ローカルの人にタイトルを作ってもらって、それをPlayStationでリリースして一緒に成長していく、現地と一緒に成長していくPlayStationというのが良いと思っています。

若い才能が欧米や日本も含めて展開できていくと、また新しいタイトルが日本のユーザーにも提供できる、韓国もそういう人達がすごく多く、VRタイトルも中国、韓国と盛り上がっていてどんどん出てくると思うんですが、そういった意味でもアジアのテイストは日本に近いところもあるので、いろいろなタイトルが出てきてくれると盛り上がってくれるのではないと考えています。

――VR元年から2年目に入りましたが、印象としてはいかがですか

盛田プレジデント: まず、去年PlayStation VRが出るタイミングで、皆さんのお陰でVRが盛り上がり、ユーザーの皆さんも盛り上がってくれました。VRはイノベーションだと思っているので大事に育てていきたいと話していて、そのために盛り上がっているから今のうちに1台でも多く売ろうという考えはあまりなくて、体験をちゃんとできるようにして、買ったけど余り使わなかったというのがないようにしています。

ちゃんと理解して買っていただく、納得して買っていただくことでちゃんと使って遊んでいただき、それを友達に話すというのをきちんとやっていきたいと思っていてそれを実行してきました。体験できる店舗を少しずつ増やしていき、そこだけは絶対焦らずやろうと言ってきました。そこはそれなりにやりきったと思ったのですが、リリースするタイミングで非常に需要が読みづらく、部品が足りなくなったというのは非常に申し訳ないと思っています。今も日本では足りていないので申し訳ないのですが、供給するとその日のうちになくなってしまっていて、それを補うために昨年のうちに増強しました。

欧米を中心に徐々に解消しつつあるので、早い段階でも日本でも解消したいと思っていて、店舗数を増やしてできるだけ体験できる場所を増やしていき、販売店舗数を拡大していきたいと思っています。


――日本ではみんなが持っているゲーム機はスマートフォンのように思えます。そこのマーケットが広がっていく中でコンソールからスマートフォンに移っていく人も多いと思います。そういったところに対して、どういう戦略を当てていくというイメージはあるのでしょうか?

盛田プレジデント: スマートフォン、モバイルゲームに人々がシフトして、コンソールゲームからスマホを買ってモバイルゲームをやるというよりも、既にスマホを持っている人が大半で、その中で彼らが手軽にできるゲームを初めて楽しんでいる、というのはその市場は市場で楽しんでもらえればゲームの裾野が広がるので良いと思っています。

スマホゲームに取られているからどうかというよりも、コンソールゲームならではの楽しみ方をユーザーに伝えることにより、PS4だからこそ体験できるというものをPlayStationで実現する、素晴らしい体験をして「またやりたい」というのをできるだけ増やしていくことだと思っています。

スマホゲームは通勤・通学中に手軽に出来て面白いと思っていて、市場もあるので我々もスマートフォンタイトルを出していますが、その中でもモバイルゲームをやっている人達に向けて、我々のPlayStationのノウハウで一番面白いゲームを出したいというのは我々のアプローチです。ですがそれは別の話で、PS4を遊んでもらって、コンソールの楽しみ方を知ってもらう、というのが大事じゃないかなと思っています。

――TVを持っていない、PCも持っていないけれど、スマホは持っている、というユーザーが増えてくると思います。PlayStationというプラットフォームを通じてできることはスマホでもできると思いますが、そこに関してはどういう考えをお持ちでしょうか

盛田プレジデント: 手軽に手元で楽しんだり、外で楽しめるという楽しさは否定しません。一方で360度の体験の素晴らしさ、コントローラーを使ったゲームの楽しさは違うものなので、そこは逆にぶれずに追求することじゃないかなと思っています。もっと言ってしまうと、エンターテインメントってだんだんボーダーがなくなっていくので、いろいろな連携があっていろいろな楽しみが広がっていくということもあると思いますが、それはまだ先の話で、次のステップだと思っています。我々もPlayStationがどうだということを考えず、楽しいものをやっていこうというのを話しています。

――PlayStationでの携帯機は、今後どうなっていくのでしょうか?

盛田プレジデント: 今後どうなるかというのは私が答えることはできませんが、我々が今PlayStation Vitaというものをどう捉えているかと言うと、この2年間PlayStation Vitaは子供に受け入れられ、子供がたくさん使ってくれています。そこは我々が重要だと思っていたことで、子供の頃にコントローラーを使って遊んでいたということは、子供の頃にピアノやバイオリンをやっていたかどうかというのと同じ話だと思っていて、できるだけコントローラーを使って遊んで欲しい、というのは今現在できていると思っています。PlayStation Vitaは日本の市場では元気だし、大事なプラットフォームだと思っています。

――本日はありがとうございました。


(聞き手、編集: 森 元行 / 撮影: 谷 理央)

最終更新:6/8(木) 10:11
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