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【インタビュー】アナセマ、新作は「ハードでモダンでアンビエントでエレクトロニック」

6/8(木) 18:16配信

BARKS

6月9日に世界同時発売となるアナセマのニュー・アルバム『ジ・オプティミスト』は、バンドにとって初のストーリーに基づく作品だ。2001年にリリースされた『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』のジャケット・アートから端を発し、そこから発展していったという新作『ジ・オプティミスト』は、どのような作品なのか。

ダイナミズムとアンビエンスの起伏に富んだ『ジ・オプティミスト』の道程を案内するのは、ダニエル(ギター、キーボード)とヴィンセント(ヴォーカル、プログラミング)のキャヴァナー兄弟だ。彼らの導く先に待つのは?

──『ジ・オプティミスト』のコンセプトは『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』(2001年)のアートワークからインスピレーションを得たそうですね。

ヴィンセント:このアイディアを得たのはレコーディングの数ヶ月前、去年(2016年)の9月ぐらいだった。ロンドンでソングライティング・セッションを行って、5月から俺とダニエル、そしてジョン(ダグラス/ドラムス、プログラミング)の3人で曲のアイディアをぶつけあい始めたんだ。そうしているうちに『ジ・オプティミスト』のストーリーが形作られてきた。主人公が真夜中のアメリカ西海岸の道路を旅するというテーマは、主にダニエルによるものだった。ジョンと俺は補足的なアイディアを出したり、曲をアレンジしたり、曲順を変えたりした。そうして音楽の旅が完成したんだ。

▲『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』のアートワーク
ヴィンセント:ストーリー仕立てのアルバムは今回が初めてなんだ。主人公は過去の亡霊に追われていて、車で走り出す。そして彼の旅が始まる。『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』のジャケット写真がサンディエゴ郊外のシルヴァーストランド・ステイト・ビーチだったこともあって、舞台はアメリカ西海岸のイメージがあった。でも地域については限定することなく、聴く人が自由に解釈してくれればいい。『ジ・オプティミスト』は幾通りかの聴き方をすることができる。アナセマの新曲のコレクションとして、ひとつのストーリーとして、人生の比喩として…そのどれもが正解なんだ。“ザ・オプティミスト”は俺たちを投影したキャラクターであり、リスナーの代弁者であり、誰でもない存在だ。

──アルバムの音楽性について教えて下さい。

ヴィンセント:ハードで、モダンで、アンビエントで、エレクトロニックで…いくつもの要素が個別に存在するのではなく、ひとつのバンド・サウンドとして存在している。前作『ディスタント・サテライツ』(2014)にともなうツアーでドラム・マシンやシンセサイザーと慣れ親しんできたことで、エレクトリックな要素が特別なものでなく我々の音楽性の一部として溶け込んでいる。自分たちで予想していなかったスタイルも採り入れることになった。「クローズ・ユア・アイズ」のジャズは俺たちが「ジャズをやろう」と思ったわけではなく、曲がジャンルを選んだんだよ。

ヴィンセント:「クローズ・ユア・アイズ」は2008年頃、俺がインプロヴィゼーションで書いたキーボード・パートから発展していった曲で、ずっとシーケンサーに保存していたパターンをヴィンセントが聴いて「これ、いいじゃない?」と言い出した。プロデューサーのトニー・ドゥーガンとトロンボーン奏者のマイケル・オワーズによって、この曲は完成することができた。トニーは映画『タクシードライバー』サウンドトラックのイメージを出そうとしていてね、すごく良い仕上がりになった。1日で完成したんだ。ただ、この曲を聴いて「アナセマがジャズに挑戦した」と感じる人はあまりいない気がする。1枚のアルバムにさまざまな音楽スタイルを採り入れるのは、常にやってきたことだから。

──アルバムの曲作りに入ったとき、どんな音楽性になるかイメージしていましたか?

ヴィンセント:いや、あまり事前に決めてしまわない方がうまく行く。自分たちの可能性を狭めることなく、自由に創造性を羽ばたかせるようにしている。アイディアの断片をリハーサルに持ち込むことはあるけど、曲の形にはまだなっていない状態なんだ。アルバムで最初に書いたのは「ジ・オプティミスト」だった。そして曲が揃っていくうちに、それぞれのアイデンティティが際立ってくる。曲自身がどうなりたいのか、明らかになってくるんだ。たとえば25曲を書いたとして、その中から10曲あるいは12曲が自己主張する。俺たちが選ぶのではなく、曲がアルバムに入ることを選ぶんだよ。曲のテンポやキー、ダイナミクス、流れ、構成…曲間の効果音に至るまで、理由と必然性があるんだ。

ヴィンセント:2016年4月から曲を書き始めて、アルバムのアイデンティティが固まったのは8月だった。その頃に全体の流れや起承転結が決まったけど、それは論理的に説明できるものではなく、直感に負う部分も大きかった。

──プロデューサーのトニー・ドゥーガンはモグワイやベル&セバスチャン、スーパー・ファーリー・アニマルズなどを手がけてきましたが、近年のアナセマのポスト・ロック的アプローチとどのように呼応したでしょうか。

ヴィンセント:アナセマの音楽にはアンビエンスとクレッシェンド、そしてダイナミズムがあるという点で、ポスト・ロックと共通するかも知れないけど、正直いわゆるポスト・ロックのことは知らないんだ。モグワイやシガー・ロスは好きだし、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーも良い。でも、他のバンドはほとんど知らない。トニーの作業はアナセマの音楽の深さを掘り下げるものだったし、他のバンドと比較する必要のないものだったよ。

──主人公が“ジ・オプティミスト=楽観主義者”と名付けられているのは何故ですか?

ヴィンセント:一種のアイロニーなんだよ。このアルバムを聴くと、何故主人公が“楽観主義者”なのか、不思議に思う人が少なくないだろう。それがいいんだ。謎の部分があって、リスナーを考えさせる、発見することがあるアルバムにしたかった。主人公はサンフランシスコを旅立って、真夜中、雨が降る中、荒廃した小都市に到着する。そして何故自分がここにいるのか、自分は何者なのか、自分に問いただすんだ。

ヴィンセント:『ジ・オプティミスト』はタイトルだけでなく、多くのアイロニーがあるんだ。太陽のまぶしいカリフォルニアの空の下で主人公が苦悩するというストーリーもそのひとつだよ。もちろんそんな感情は世界中、地域を問わずどこでもあるんだけどね。

──アルバムをレコーディングする前、2016年のイギリス・ツアーで「ジ・オプティミスト」や「スプリングフィールド」「ゴースツ」などをプレイしましたが、それでアルバムにどのような影響がありましたか?

ヴィンセント:「ジ・オプティミスト」の後半2分は最初は存在しなかったけど、ステージで披露することで、「このエンディングがあった方が良い」と確信したんだ。当初はあまりお客さんからの反応が良くなかった。でもエンディングを付け加えたことで、みんなクレイジーになって盛り上がったんだ。その新しいバージョンをスタジオでレコーディングした。もしステージでプレイしなかったら、「ジ・オプティミスト」のエンディングは生まれなかった。レコーディングする前の曲をステージでプレイするのは、バンドの最初期を除くと、これが初めてだったんだ。『We're Here Because We're Here』(2010)のときもアルバム発売前に「シン・エアー」「エンジェルズ・ウォーク・アモング・アス」「ア・シンプル・ミステイク」をプレイしたけど、その時点でアルバムは完成していたし、ライヴの反応によってアレンジを変えたりはしなかった。

ヴィンセント:お客さんの前でプレイすることで、曲のあるべき姿が見えてきた。まだ『ジ・オプティミスト』を完成させたばかりだし、次のアルバムのことは考えてすらいないけど、次回もレコーディング前にライブでプレイしてみるのもいいかもね。

──『ジ・オプティミスト』発表後のツアーの予定は?

ヴィンセント:夏はヨーロッパや南米を回って、その後に北米から本格的な『ジ・オプティミスト』ツアーを始める。二部構成のショーで、前半でアルバム全曲を曲順どおりにプレイするつもりだ。スクリーンへのビデオ・プロジェクションをしたり、スペシャルなライヴになるよ。プロジェクション用の映像を撮影しているスタッフがいて今、“ジ・オプティミスト”と同じ道程を辿っているんだ。今は彼が“ジ・オプティミスト”なんだ(笑)。

ヴィンセント:日本でもぜひ二部構成の『ジ・オプティミスト』ライブをやりたいね。前回(2015年8~9月)の日本公演は素晴らしい経験だった。日本の人々は礼儀正しくて、素晴らしい文化を持っている。一言も日本語を話せなくても、どれだけいても飽きないだろうね。ライブでのお客さんの反応も素晴らしかったし、次回は東京に加えて、地方都市でもプレイしたい。

取材・文:山崎智之
Photo by Caroline Traitler

アナセマ『ジ・オプティミスト』
2017年6月9日 世界同時発売
【100セット通販限定CD+Blu-ray Audio+Tシャツ+直筆サインカード】¥7,500+税
【初回限定盤CD+Blu-ray Audio】¥3,800+税
【通常盤CD】¥2,500+税
※日本語解説書封入
1.32.63N 117.14W
2.リーヴィング・イット・ビハインド
3.エンドレス・ウェイズ
4.ジ・オプティミスト
5.サンフランシスコ
6.スプリングフィールド
7.ゴースツ
8.キャント・レット・ゴー
9.クローズ・ユア・アイズ
10.ワイルドフィアーズ
11.バック・トゥ・ザ・スタート

【メンバー】
リー・ダグラス(ヴォーカル)
ジェイミー・カヴァナー(ベース)
ダニエル・カルドーゾ(ドラムス)
ジョン・ダグラス(ドラムス/プログラミング/キーボード)
ヴィンセント・カヴァナー(ヴォーカル/プログラミング/キーボード/ギター/ベース)
ダニエル・カヴァナー(ギター/ベース/キーボード/ヴォーカル)

最終更新:6/8(木) 18:16
BARKS