ここから本文です

低迷「巨人」の責任は、誰にあるのか

6/8(木) 12:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 かつての「常勝軍団」が危機に瀕している。巨人が6月7日、メットライフドームで行われた埼玉西武ライオンズ戦に敗れ、悪夢の12連敗を喫した。これで球団史上ワーストの連敗記録を更新。借金も何と「9」にまで膨れ上がってしまった。

【ファンの間から「仏像監督」と揶揄】

 浮上のきっかけも見い出せず、リーグ首位の広島東洋カープには7日現在で11.5ゲーム差にまで引き離されてBクラスの5位に沈んでいる。わずか2.5ゲーム差の最下位・東京ヤクルトスワローズと事実上の“ブービー争い”を繰り広げているという悲しい現状だ。

 この歴史的な恥辱にまみれた試合後、高橋由伸監督はメディアの取材に応じて「これは現実なんでね。現実として受け止めなきゃいけない」と冷静に振り返り、さらに「挽回するチャンスはある。明日からまたがんばるしかない」とも述べた。大手新聞社や各テレビ局は指揮官の言葉を大きく扱っていたが、相変わらず感情をむき出しにすることもなく淡々と話す姿勢にはどこか怖さも感じた。

 これまで高橋監督のコメントには各方面からブーイングが上がっていた。ネット上では今も「まるで他人事のようにしか聞こえない」「“自分は悪くない”という姿勢が見え隠れする」「選手のことばかり責める」などと批判的な書き込みが殺到している。

 それでも指揮官はこの日も、いつもと変わらぬスタイルを貫いていた。試合中継中にクローズアップされると、その際は決まって「仏頂面」。自軍の選手が好プレーを見せると拍手こそ送るが、やはり表情は固いままだった。ただでさえ重苦しい巨人ベンチのムードなのに、これではお通夜のように沈んだ雰囲気になってしまう。ハッキリ言って「暗い」のだ。

●ファンの間で「仏像監督」の声

 このように感じているのは、言うまでもなく筆者だけではない。試合中、積極的に動く様子がほとんど見られないことから高橋監督がファンの間で「仏像監督」と揶揄(やゆ)されている話は一部メディアで報じられ、ネットユーザーの間でも広まりつつある。選手たちだっていくら懸命にがんばっても指揮官がこういう調子ではやる気を失ってしまっても不思議はない。

 そして、前述した7日の西武戦後のコメント。「球団史上ワーストの12連敗にも落胆することなく務めて前向きに飄々(ひょうひょう)と語った」と言えば聞こえはいいかもしれない。しかし大変申し訳ないが、そうは思えなかった。開き直って、投げやりになってしまっているとしか感じ取れないような言葉だった。

 実際、ネット上でもこの指揮官の発言に賛同する書き込みは皆無に等しく、逆に強く反発する声が大多数を占めていた。当たり前だ。全員とは言わないまでも、おそらくメディアの報道を目にするであろう何人かの選手たちもネットユーザーたちと同じ人間。彼らが、自分への発言を見聞きしてどのように感じるのか。高橋監督は、何も考えていないのだろうか。もしそうならば、残念ながらチームを預かる現場トップとして不適格と言わざるを得ない。 

 高橋監督は3年契約で就任2年目。もう新人監督としての猶予は昨季で終わった。今季以降は結果が出なければ、とことん叩かれる。それがプロの宿命だ。しかも読売巨人軍という世間からも大きな注目を浴びる球団の監督を引き受けた以上は、それなりの覚悟を持っているはず。だからこそ、その責任を果たさなければいけないし、もっと気概を見せなければならない。

 「仏像監督」やら「やる気のないコメント」などと突かれた挙句、底なしの連敗地獄にハマってしまっては選手だけでなくファンだって離れていってしまう。チームがこんな苦境に立たされてまで仮に「感情を露にしないことが現役時代からの自分の美学であり、ポリシーなんだ」とこだわりを捨て切れずにいるとするならば、今すぐ辞表を出したほうがいい。

 では、チーム低迷の要因は高橋監督だけに問題があるのだろうか。球団フロントにも大きな責任があるはずだ。

●由伸監督の任命責任

 昨オフに総額30億円超えとも言われる巨大補強を敢行し、特にFAでは福岡ソフトバンクホークスから森福允彦投手、横浜DeNAベイスターズから山口俊投手、北海道日本ハムファイターズから陽岱鋼外野手を獲得。ところが森福はリリーフ失敗を重ね、山口と陽はコンディション不良で開幕一軍に間に合わず大きく出遅れている。球団の内外から「FA補強は失敗だった」と指摘されていて、編成トップへの風当たりが猛烈に強まっているのは言うに及ばないだろう。

 問題はまだある。球団フロント幹部たち、さらに親会社幹部たちには由伸監督の任命責任も問われる。すでに周知の事実だが一昨年のシーズン終了後、原辰徳前監督の辞任を受け、まだ現役だった高橋由伸に後任として推し上げたのは、他ならぬフロント幹部たち、そして巨人の親会社である読売新聞グループ本社の経営陣たちだった。

 球団の内情を知る事情通はこう語る。

 「まだ現役続行を望んでいた由伸の“外堀”を埋めるような形でオファーを断り辛くしたフシも感じ取れたが、そういう流れの中で本人に監督就任を打診。由伸も内心で現役に未練は残しながらも受諾した。

 彼に白羽の矢が立ったのは生え抜きのスターであり、人気やインパクトの面を考えてのものだったと言えるだろう。ただ由伸を入団当時から知る古参の球団関係者たちの間からは『いきなり監督を任せるのはいかがなものか』『“プリンス”とも言われたお坊ちゃん的な性格は監督に向かない』などと指摘する声が出ていたのも事実。

 それもあって球団上層部では由伸を指揮官として現場で教育できる経験豊富な鬼軍曹をヘッドコーチに据える案も当初は浮上していたと聞く。ところが由伸本人がこれに難色を示し、原前監督とともに退団濃厚だった穏健派の村田真一コーチをヘッド格に置く形でまとまった。球団及び読売上層部も無理強いで監督になってもらった負い目があるので、由伸の意見には『NO』と言い辛いところもあったのだろう」

●体制存続か新体制樹立か

 そう考えると今のベンチが機能不全に近い状態となってしまっているのも理解できるかもしれない。開幕5連勝を飾った今季スタート当初のようにチームが波に乗っている時はいいとしても、このような「巨人史上最悪の危機」とささやかれる低迷時に高橋監督や村田真ヘッドら首脳陣同士がまるで“馴れ合い職場”のような関係になってしまっているとしたら、互いに遠慮して言いたいことも言えず、問題は一向に解決しない危険性が出てくるからだ。

 こういう不測の事態を生み出してしまうかもしれないというリスクを事前にほとんど考慮せず、原前監督の退任ありきで高橋監督の早期就任にゴーサインを出してしまった責任者たちの罪は決して軽くはない。

 いずれにしても、もう今の巨人は何らかの形でメスを入れなければならないほどの「重症」に陥っている。それは誰が見ても間違いない。この連敗街道はいつかきっと止まる。しかし、たとえこれから何度か勝ったところで根本的な問題の解決には至らない。

 このドン底を味わったことを反省材料に由伸体制をいま一度、さまざまな意味で軌道修正する必要性があるのではないだろうか。「体制存続」か、あるいは「新体制樹立」か――。

 結果が伴わなければ、巨人だけでなくどんな会社組織でも血の入れ替えは断行しなければならない。ましてや「過去最悪」に陥ってしまったのだから、それは求められる当然の処置だ。球団の英断と素早い動きが今後注目される。

(臼北信行)