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焦点:中東の航空業界に暗雲、サウジなどのカタール断交で

6/8(木) 13:57配信

ロイター

[カンクン(メキシコ) 8日 ロイター] - カタールとサウジアラビアなどアラブ主要国のいさかいは、中東地域の航空会社の経営に打撃を与え、乗り換え中継地としての位置付けを目指す湾岸地域の先行きに暗い影を落としている。

サウジアラビアなどがカタールとの国交を断絶したことで、カタール航空は予期せぬ周辺空域の閉鎖という事態に直面し、カタール国民は空路の移動ができなくなった。その結果、行き場に困った旅行客があふれ、カタール航空の首脳は国際航空運送協会(IATA)の年次総会の開催地であるメキシコからのトンボ帰りを強いられた。

IATAのトップ、アレクサンドル・ド・ジュニアック氏は総会後、「われわれ全員にとって、全くの驚きだった」と振り返った。

カタール航空にとって、こうした外交上のトラブルはここ3年で2回目に当たり、イラン上空を経由するよう多くの飛行ルートの見直しを迫られた。

飛ぶ鳥を落とす勢いとされ、ジェット旅客機に大量の資金を投じ、米国勢と熾烈な戦いを繰り広げたカタール航空を巡る状況は一変した。

英国の航空コンサルタント、ジョン・ストリックランド氏は「(カタール航空は)空路ハブを構築することに基づいたビジネスモデルで、空港や最新の航空機へ投資してきた。しかし、主な集客源である地域の主要市場からの人の流れを失っている」と指摘。「上空通過の禁止が問題なのは、飛行ルートの見直しという点からだけでなく、遠回りするために飛行距離が長くなるからでもある。時間もコストも余計に必要になり、乗り継ぎスケジュールもめちゃくちゃになる」と付け加えた。

ストリックランド氏によると、需要の一部が他の航空会社へと流れる可能性もあるという。IATA総会の参加者からは、欧州勢やトルコ航空のほか、アラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ航空やエティハド航空に追い風になる可能性があるとの声が聞かれた。

航空産業の専門家の中には、湾岸諸国の混乱は、西洋と東洋とを行き来する際の乗り換え拠点を目指す同地域一帯の政治的な複雑さを露呈させ、脆弱(ぜいじゃく)な印象を与えることになるとの見方も出ている。

IATAは先週、米国と英国が中東や北アフリカ路線の一部でラップトップ・パソコンなどの電子機器の機内持ち込みを禁止したことを受け、湾岸地域の航空会社の4月の利用が減少したとも発表しており、マイナス要因がいくつも重なりかねない状況だ。

航空機リース大手エアキャップ・ホールディングス<AER.N>のケリー最高経営責任者(CEO)は「短期的な出来事を大きく解釈しすぎだ」とし、「国際的な旅行というものの回復力は強い。われわれは過去10年を見ても、ロシアやブラジル、トルコ、ユーロ圏での危機をくぐり抜けてきた」と大げさに考えるべきでないと指摘。ただ、湾岸地域が抱える輸送能力は大きく拡大しており、今後、エアバスやボーイングによる大型機材の納入時期は遅れる可能性があるとも述べた。

湾岸地域での力学の変化は、イラン航空トップがIATAの役員に選出されたことにも映し出されている。これは少なくとも1979年のイラン革命以前からなかったことだ。

カタールは、サウジなどの隣国よりもイランと関係が近い。航空業界の専門家は、サウジとイランとの緊張関係の緩和が湾岸地域の安定化の鍵を握っているとみており、航空旅客需要にも影響を及ぼすと指摘している。

シンガポールのBOCアビエーション<2588.HKX>のトップ、ロバート・マーティン氏は「イランが仲間として復帰する機会があることが初めて明確になっており、そのことも中東地域に新たな緊張を生み出している背景の一つだ」と話している。

(Tim Hepher記者、Victoria Bryan記者)

最終更新:6/11(日) 3:26
ロイター