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NCAAアメフット現役選手が明かす日本の大学スポーツ“文化”の違和感

6/9(金) 16:03配信

スポーツ報知

 2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、大学改革の一環として、全米大学体育協会(NCAA)をモデルとした「日本版NCAA」の導入が政府・与党で検討されている。全米大学体育協会(NCAA)に所属するハワイ大のアメリカン・フットボール部で活躍する伊藤玄太(23)=RB=は「文武両道」で多忙な大学生活と日本の大学スポーツへの期待を語る。

 三重県出身の伊藤は、中学時代はクラブチームで野球、部活動でバスケットに取り組んでいた。法政二高に進学後にアメフットを始めた。

 「最初は法政二高でも野球部に入ったんですけど、3日で辞めました。法政大の野球部はほとんどが推薦入学で、内部進学では数人しか活躍できなかったんです。アメフット部に入って、高校2年の時から本格的に米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)を見始めました。高2、3年の時には、川崎市内で行われたNFLのコンバインにも参加しました。そこでアフリカ系アメリカ人の選手がすごい動きをしていて…刺激を受けたのも大きかったですね」

 法政二高を卒業後、2013年10月に単身渡米。米カリフォルニア州サンタモニカ大(2年制の公立大)に入り、語学を学びながら、強豪校への入学を目指した。特待生にはなれなかったが、ボランティア活動も評価され、成績評価値平均値「GPA(4点満点)」で「3・95」をマーク。十数校に合格し、ハワイ大への進学を決めた。

 NCAAは全米約2300校中ハワイ大も含め約1200校が加盟し、人気の高いアメフットやバスケットボールを中心に野球、ソフトボール、ラクロス、サッカー、陸上など様々なスポーツが行われる。アメフットの試合では10万人の観客を集めることもあり、街中がチームカラーに染まる。放映権を中心に年間約1000億円の収入があり、教育や施設などに再配分されている。

 日本人大学生も活躍している。バスケでは、ジョージワシントン大の渡辺雄太、ゴンザガ大の八村塁のほか、アメフットでは早大学院高出身の高田ジェームス(RB)もユタ大でプレーする。昨年9月にはUCLAに所属する庄島辰尭がアメフットで「日本生まれ、日本国籍の選手」として初めてNCAA1部校の公式戦でプレーしている。

 米国での大学生活は「練習漬け」のイメージとはかけ離れたものだった。伊藤は大学で経済学を専攻し、練習でも頭も体もフル回転させる毎日を送る。

 「シーズン中は午前4時半に起きて、6時半から練習します。10時に朝食を取って、10時半から午後3時半ぐらいまで授業を受けて、午後4時から部活のミーティングや練習で約2時間。午後6時に自宅に戻り、そこから勉強したり、自主トレしたりです。土曜日は試合で、休みは日曜日だけ。外出する元気も出ないので家で寝てます…」

 アメフット用具一式をそろえると、20~30万円以上と高額な費用がかかるが、大学ではすべて支給される。メディカルサポートも充実し、チームにはドクターやトレーナーが帯同し、選手の体調管理にも目を配る。本拠地となるアロハ・スタジアム(1975年完成)は約5万人を収容。ハワイにはプロチームがなく、カレッジ・スポーツへの関心も高い。ハワイ大は強豪ではないが試合前から、スタジアム周辺でバーベキューをしたり食事をしながら地元の大学に声援を送る。 同じスポーツでありながら、日本ではいまだに一部の高校や大学で体罰などが行われ、先輩・後輩の関係が絶対視される“文化”がある。伊藤も日本特有のこうした考え方に違和感を感じていたという。

 「日本では、一部の人たちが『自分が苦しい練習をこなしたから、後輩もやるべき』という考えを持っているように思います。私のチームには約120人の選手がいて、ほかにヘッドコーチや関係者がいます。国籍も年齢もバラバラですし、中には30歳近い人もいます。先輩だからこうだ、とか後輩だからこうだ、という考えもない。お互いを尊重していて、日々の目的、チームの勝利に向かって練習している感じですね」

 伊藤と同じRBは5人。新たに2~3人が入学するとみられている。充実した環境の中、8月の開幕に向け、レギュラー奪取を目指す戦いが始まっている。

 ◆部活動の脱任意団体化の流れも

 日本の大学では多くの部活動は任意団体として活動してきた。遠征などの活動費は部員から徴収する部費、OBや企業の寄付金、大学からの助成金に成り立っている。大学の関与は限定的だった。体罰などに加え、金銭絡みの不祥事が後を絶たないのは、制度そのものの問題点も大きい。

 関東学院大、筑波大、日本体育大、早稲田大学などでは、大学側が一元的に部活を管理・運営する取り組みを進めている。京大アメフット部は、部を一般社団法人化することで資金管理などを適切に行う取り組みを始めた。

 大学によって手法は様々だが、組織内にスポーツ活動を一体的に統括する「AthleticDepartment」(アスレチック・デパートメント、体育局)を設置。選手の安全確保や適正な会計管理を行うことで、スポーツ事業や大学のブランド力の向上に生かす狙いある。

 日本の五輪選手の3分の2は大学生や卒業者で占めており、「カレッジ・スポーツ」の改革は急務だ。文部科学省の検討会議では「大学の部活の持つ資源や公益的な役割を発展させるためには、抜本的な改革の時を迎えている」と指摘されている。2020年東京五輪・パラリンピックまであと、3年。プロも含めてスポーツのあり方、価値をもう1度、問い直す時期が来ている。(記者コラム・久保阿礼)

 

最終更新:6/9(金) 16:48
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