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【インタビュー】メリマック、これぞ伝統ブラック・メタルの真髄

6/8(木) 12:09配信

BARKS

フランスのブラック・メタル・バンド、メリマックの5枚目となる新作『オメガフィリア』が6月9日に発売となる。フランスときいてメタルのイメージを持つ人は多くないかもしれないが、実はフランスは意外とブラック・メタルが盛んな地でもある。中でもメリマックは結成が1994年と、フランスのシーンでは最古参に属するバンドだ。新作『オメガフィリア』では、骨や歯を使った儀式に始まり35人のラテン語合唱で終わる圧巻の曲展開が繰り広げられる。『オメガフィリア』を聴けば、彼らが自分たちの音楽を「ブラック・メタル以外の何モノでもない」と言い切ることにも納得だ。

『オメガフィリア』発売にあたり、リーダーでギタリストのパーヴァーシファイアー、そしてバンドのコンセプトを握るボーカリストのヴェスタルに話を聞いてみた。

──ニュー・アルバム『オメガフィリア』がリリースになりますが、過去の作品と比べてどのような内容になっていますか。

パーヴァーシファイアー:進歩した点は色々あると思う。今回一番注意した点は、より1990年代のセカンド・ウェイヴ・ブラック・メタルに根差した作品にしようとしたことだ。よりモダンでない、そしてもっと雰囲気のある自然で有機的なサウンドにするために、レコーディング・スタジオも変えたんだよ。それから曲の構成がシンプルになっているね。『オメガフィリア』は非常にバラエティに富んだアルバムで、速い曲、キャッチーな曲、アトモスフェリックな曲…色々入っている。非常に良いバランスになっていると思うよ。

──確かに過去の作品と比べると曲も短めでシンプルですが、一方で「アット・ザ・ヴァンガード・オブ・ディセプション」などは9分を超えていますし、通常の基準からすると大作なのではないですか。

パーヴァーシファイアー:メリマックの曲に長いものが多いのは故意ではなく、自然に曲を書いた結果なんだ。曲は物語であり、単純な直線ではなく、異なった雰囲気をもたらし、複数の形態を持っている必要があると俺たちはずっと考えてきた。今回は、同じことをより少ない数のリフでやろうと試みたんだ。以前よりも同じリフ、あるいはそのバリエーションが繰り返し現れる。相変わらず、俺たちの曲は2部構成になっていることに変わりはないけどね。つまり後半は、前半とかかなり異なった雰囲気になっているということさ。俺たちはこういうスタイルが好きなんだ。90分の映画にしても、同じことが延々と繰り返されるのでは、とても観る気がしないだろ?

──前作から5年が経過していますが、長い期間を要した理由は何だったのですか。

パーヴァーシファイアー:これまではたいてい3年ごとのペースでやってきたのだけどね。俺たちは普通の仕事もしているし、音楽の方もサイド・プロジェクトがあったりと忙しかった。アルバムを1枚作るというのは、非常に長いプロセスが必要なんだ。何千時間もかかる作業さ。今回5年もかかってしまったのは、過去の作品とは違うものを作りたかったから、とるべき方向性を定めるのに時間がかかったからだよ。インスピレーションというのはコントロールできるものではないからね。降ってくるときは降ってくるのだけど。毎年平均点のアルバムをリリースし続けるよりも、じっくり時間をかけてクオリティの高いアルバムをリリースする方が良いということさ。俺たちは常にパーフェクトと思えるものを追求しているんだ。

──アルバムのタイトル『オメガフィリア』とは、どのような意味ですか?

パーヴァーシファイアー:「オメガ」というのはすべての終わりのこと。すべての始まりである「アルファ」の対極だ。接尾辞「フィリア」というのは、他の言葉と結びついて「異常な執着」や「傾向」を表す。ネクロフィリア(=死体愛好者)、ヘモフィリア(=血友病)とかね。倒錯的な意味を持つこともある。これでだいたい想像がつくと思うけど、『オメガフィリア』は、「あらゆる終わりへの愛、執着」ということさ。これはいろんな解釈ができるけどね。終わりとは何か?死について?世界の終わり?それとも自己破壊による自分の終わり?これらすべて、もしくはそれ以上のことさ。

──歌詞の内容は非常に難解ですが、一体どのようなテーマを扱っているのでしょう。

ヴェスタル:前作『The Acausal Mass』は、グノーシス主義の歴史についての本から影響を受けた、非常に「コンセプト的」なアルバムだった。グノーシス的な生命についてのコンセプト、宇宙論に大きな影響を受けたので、それを『The Acausal Mass』で表現したかったんだ。結果としてあのアルバムは複雑な概念を持つ、とても「文学的」な作品になった。『オメガフィリア』では、もっと「人間」的な内容に立ち返ろうと思ったんだ。自伝的要素を混ぜ合わせてね。もっと有機的な歌詞にしたくて、歌詞はさっと書き上げた。特に死やいくつかの依存症という俺が直面していた個人的問題を書きつける感じで。もちろん今でもグノーシス主義的な現実の認識の仕方をしているけれど、今回はもっと肉体的な解釈になっている。

──「ザ・ファルシファイド・サン」の中には、「ブラック・メタルがすべてをめちゃくちゃにしてしまった」という一節がありますが、これはどういうことですか?

ヴェスタル:俺たちはみな20年以上ブラック・メタルに関わっていて、ブラック・メタルがただの音楽以上のものであることをよく知っている。そしてまたブラック・メタルは、まぶたを焼いてしまう超越的パラダイムであるのさ。もし十代の頃、ブラック・メタルに出会わなければ、俺の人生はもっと良いものだったのは間違いない。グノーシス主義の啓示のように、ブラック・メタルは俺たちの魂を啓蒙し、燃やすのだからね。まぶたを焼かれて、一体どうやって生きろというんだ?俺たちは目覚め、この世界はニセモノで、芯から腐っているということを知るとき、現実はますます耐え難いものになるのだから。

──アルバムにはゲストが何人か参加していますよね。"Ritual"とクレジットされているFrater Stephaneはどのようなアーティストなのでしょう。

パーヴァーシファイアー:Frater Stephaneは、アンビエントのプロジェクトをやっている奴なんだ。アルバムのイントロを作ろうという話が出たのだけど、俺は個人的にイントロって好きじゃなくてね。長いイントロなんて誰も聴きたくないだろう、退屈で。俺はイントロなんて絶対飛ばすからね。だから非常に短い、しかも1曲目の一部になっているイントロなら良いということになった。それなら1分も2分も待たなくていい。それでギターのA.K.がFrater Stephaneを知っているというので、彼に頼むことにしたんだ。彼はメリマックのファンだったからね。特に彼には何の指示も与えず、好きにやってくれとお願いしたのだけど、とても素晴らしい出来だったよ。

──彼はパーカッションを演奏しているのですか?

パーヴァーシファイアー:パーカッションと言えばそうなんだけど、実を言うと彼は儀式に使うような不思議なものを色々演奏しているんだ。骨とか歯とかね。子供の抜けた歯とか(笑)。そういうものを使って不思議なノイズを作り出しているんだよ。

──アルバム・ラストを締めるクワイヤはどのような経緯で参加したのですか。

パーヴァーシファイアー:アルバムのエンディングにふさわしいものが欲しかったんだ。オーケストラのような感じにしたかったんだけど、キーボードは使いたくなかった。シンセを使ったコーラスも考えたのだけど、やっぱりラテン語の歌詞をつけたかった。そういうのができるソフトも試したけど、さっぱりでね。それで、A.K.の母親が週1でコーラスの集まりに行っているというので、その仲間に参加してもらえないか聞いてもらったんだ。そしたらOKということで、平均年齢がそれこそ70歳以上の35人ほどのコーラスをお願いすることになった。彼らはどんな作品に参加させられているかは知らなかったと思うけど(笑)。ラテン語の歌詞について「どういう内容なんだい?」なんて聞いてくるものだから、「とりあえずレコーディングしましょう、あとで教えますから」とか言ってごまかして(笑)。35人のコーラスをレコーディングするのは大変だったよ。テンポを合わせるだけで一苦労だったけど、その甲斐はあったよ。

──メリマックはたいていブラック・メタルにカテゴライズされますが、自分たちのスタイルを説明するとしたらどうなりますか。

パーヴァーシファイアー:俺たちはブラック・メタル・バンド以外の何ものでもない。俺たちは、非常に伝統的なブラック・メタルの概念を受け継いでいるからね。今でもコープス・ペイントを続けている数少ないバンドのひとつさ。いつも「正統派ブラック・メタル」なんて言われるけど、俺たちはそんな言葉は使わない。「ブラック・メタル」という言葉で十分さ。

──最近のブラック・メタル・シーンについてはどう思いますか。良くなってきているでしょうか。

パーヴァーシファイアー:いや、間違いなく悪化していると思う。バンドの数が多すぎる一方、クオリティが高いものは少ないだろ?1990年代は、買ったアルバムがすべてマスターピースだったのに。最近は大量にクソみたいなアルバムが出て、その中から宝石を探すのは容易ではない。今は誰でもアルバムを作れるからね。最近はあまりアルバムを買わなくなったよ。ライ部を観て良かったバンドのアルバムは買うけど、昔みたいに何も考えずにCDを買うというのはなくなった。バンドだけの問題ではなくて、バンドをやっていなくても、みなウェブジンやらレーベルやらを始めるだろ?純粋なリスナーがいなくなって、みな何かしらシーンに関わろうとするからね。最近はブラック・メタル以外の音楽を聴くことの方が多くなってきたし、ブラック・メタルでない音楽の方がよっぽどブラックだったりもするしね。

──では最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

パーヴァーシファイアー:日本のファンにもぜひアルバムを聴いてもらいたい。日本ではブラック・メタルはあまり人気がないのだろう?日本のファンが俺たちのアルバムを聴いて、気に入ってくれれば、メリマックも日本に行けるかもしれないからね。ヨーロッパやアメリカはあちこち行ったけれど、アジアではプレイしたことがないんだ。ぜひ日本に行きたいよ。

取材・文:川嶋未来/SIGH
Photo by Alizee Adamek

メリマック『オメガフィリア』
2017年6月9日 世界同時発売
【30セット通販限定 CD+Tシャツ】¥5,000+税
【CD】 ¥2,300+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
01. コータライジング・コスモス
02. ザ・フォルシファイド・サン
03. アポファティック・ウェポンリー
04. ガターズ・オブ・ペイン
05. サイツ・イン・ザ・アビズマル・ルアー
06. セスプール・コロネーション
07. アット・ザ・ヴァンガード・オブ・ディセプション

【メンバー】
パーヴァーシファイアー(ギター)
ヴェスタル(ヴォーカル)
A.K.(ギター)
デソーン(ベース)
ブラスタム(ドラムス)

最終更新:6/8(木) 12:09
BARKS