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がんから再起、支えは大きな秋田犬 一緒の時間が「人生のご褒美」

6/8(木) 11:10配信

sippo

にぎやかな街が大好き

 夕暮れ時の公園のカフェで、Kiyoさんは友人とおしゃべりを楽しんでいた。2人の足元にゆるりとくつろいでいるのが3歳のメスの秋田犬「七海」(ななみ)だ。

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 七海はグレーと白の長い毛に覆われ、体重が21キロある。それでも秋田犬にしては小柄だそうだ。寝そべっていても、その大きさは人目を引く。長毛の秋田犬はめずらしいこともあり「何犬ですか?」と聞かれることはもちろん、「何の生き物ですか?」と尋ねられることもある、とKiyoさんは笑う。

 七海はカフェやショッピング、人の多い街中が好きだという。お散歩中もお気に入りのカフェの前を通ると、「え~、寄って行かないの?」というように立ち止まって、先を行こうとするKiyoさんに一瞬だけ抵抗する。

 人が多くて明るい街の通りを歩くときは足取りも軽くルンルンだが、住宅街に近づき、人もまばらになるとトボトボと寂しそうだ。

「カフェに入ったからって、おやつがもらえるわけでもないし、人通りが多いところを嫌がる犬もたくさんいると思いますが、七海は華やかな街が好き、本当に女子なんです」

毎日1時間半の散歩

 七海が正式にKiyoさん一家の家族になったのは、2014年の7月。その10カ月ほど前、Kiyoさんの体にがんが見つかった。

「すぐにはがんと向き合うことができず、ワーワー泣いたんです。そしたら夫が、病気が治ったら犬を飼おうと言ってくれて。私はずっと犬のいる生活に憧れていました。でも、夫に動物の毛のアレルギーがあったので、何となく諦めていたんです」とKiyoさんは振り返る。

 約半年ほどの治療を経て退院すると、ホームページで知ったミグノンの保護犬の譲渡会に、夫と小学4年生だった息子と一緒に出かけた。そこで出会ったのが七海だった。

 七海は生後3カ月ぐらいの時に河原に捨てられていたという。動物愛護センターの人に保護され、ミグノンに引き取られて「耳印」と呼ばれていた。Kiyoさんは、「秋田犬は大きくなるし、家の中で飼うのは……」と少し迷ったが、息子が「どうしても『耳印』を飼いたい!」といって聞かなかったため、1週間のトライアルを決めたという。

「連れて帰ると、家族にも家にもなじんで、一緒にいることが本当に自然で。不思議なことに夫のアレルギーも出なかったんです。弟か妹がほしいといっていた息子は大喜びで、七海という名前も彼がつけました。もう最初から、家族になることが決まっていたみたいに、七海は私たちのところに来てくれました。七海と引き合わせてくれたミグノンにとても感謝しています」

 Kiyoさんは、退院直後は5分歩くだけでも息が上がっていた。だが今では七海との散歩で毎日1時間半ほど歩く。Kiyoさんは「こうしていると、病気だった時間の方が夢みたい」だという。友人も元気になったKiyoさんを見て「入院していたんじゃなくて、山にこもって修行でもしていたんじゃないの」などと冗談を言うそうだ。

 Kiyoさんは七海と暮らすようになるまで、どちらかというとインドア派だった。外出の際も基本的にパンプスで、スポーティーな格好をする機会はなく、スニーカーも履かなかった。

「最近夫がプレゼントしてくれるのは、だいたいアウトドア系のウェアです。雪遊びの好きな七海とスキー場に行ったり、夫の実家の島根へ行ったり、七海のいない外出は考えられません。いつかは、キャンプデビューもしてみたいです」とすっかりアクティブ派だ。

「七海は気管支や肝臓、腎臓などが弱く(現在漢方薬治療とマッサージで体質改善を目指している)、ここぞという時にはしゃぐために、普段は体力を温存しているようにテンションが低めです。ほえないし、人に飛びついたりもしないので、本当に手がかかりません。ただ、私の体調や気持ちが、七海にもシンクロするみたいで、私がくよくよすると、七海も何となく具合が悪そう。だから七海のためにも、私がポジティブに明るく過ごしたいなと。七海のいる時間は、私にとってこれからの人生のごほうびだと思っています」

 お互いを思い合い、幸せを紡ぎ合う七海とKiyoさん家族。日々発信されるKiyoさんのインスタグラムは、幸福感にあふれ、それを見る私たちをもほっこりさせてくれる。

sippo(朝日新聞社)

最終更新:6/8(木) 11:12
sippo