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鯨文化を守りたい 長崎県内唯一 東彼杵で70年続く鯨肉入札会

6/8(木) 10:15配信

長崎新聞

 「くじらの町」を掲げる長崎県東彼東彼杵町では今でも県内で唯一、鯨肉の入札会が開かれている。約70年前から毎月続く伝統は6日、826回目を数えた。鯨の食文化を守ろうとする関係者の思いに触れた。

 町は江戸時代から大正ごろまで五島や平戸など県内で捕れた鯨の集積地として発展。九州各地への輸送拠点として栄えた。入札会は1950年ごろJR彼杵駅近くの「彼杵鯨肉」(板谷康司社長)で始まった。現在は、主に国から払い下げられた調査捕鯨による鯨肉を取り扱う。業者は仕入れた肉を加工し、飲食店などに販売している。

 午後1時の開始を前に、店先にはミンククジラなど数種類の鯨肉が25の部位に分けられて並んだ。多くは、煮しめや湯かけ鯨として食べられる「白手物(しろてもの)」と呼ばれる、皮に近い部分だという。かすかにだが独特の匂いもした。

 この日は県内から3業者が参加。最盛期には30業者近く集まり、並べきれないほど商品が並んだ。今は多くても県内や福岡、佐賀などから10業者程度という。

 入札会前には参加者が一緒に鯨料理を食べる。テーブルを囲んで「最近はどんな加工品が人気があるか」といった情報を交換する。昔から変わらない風景だ。諫早市で鯨肉店を営む中原喜一さん(60)が活況時を振り返り「昔は食事の時に酒も入り、酔った勢いで入札している人もいた。お祭りみたいだった」と笑う。取引量も多く「父が貨物列車一両分を仕入れていたときもあった」。かつてのような業者同士の駆け引きは薄れているようだが、この日も入札時の沈黙には緊張感が漂った。

 80年代に商業捕鯨が禁止され「家庭の味」から「高級品」になった。近年は反捕鯨国の批判も強いが、板谷社長は「鯨文化を守りたい。参加が1人でもいれば入札会は続ける。意地もある」と話す。

 ただ学校給食での供給がなくなり、子どもが鯨肉を食べる機会が減ったことに後悔もある。「一度でも食べれば懐かしい味になる。また『家庭の味』に戻ってほしい」と普及を願っていた。

長崎新聞社

最終更新:6/8(木) 10:15
長崎新聞