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博多陥没、7カ月ぶりに地下鉄工事再開 崩落リスク、どう回避?

6/8(木) 9:55配信

西日本新聞

 福岡市と大成建設を代表とする共同企業体(JV)は8日午前0時、JR博多駅前の道路陥没事故で中断していた市営地下鉄七隈線延伸工事を7カ月ぶりに再開した。順次ボーリング調査を行い、地盤改良などの安全策やトンネル本体の掘削工法などを検討する。掘削の着手は年末以降になる見通し。

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 ボーリング調査は10日から始め、地盤の状態を詳細に把握するため、陥没地点から博多駅側に向かう「博多駅前通り」の約200メートル間で約30カ所、3~4カ月かけて行う。この日は作業員が車線の一部を交通規制し、まず3カ所の調査地点に柵を設置して作業場所を確保するなどした。

 近くの飲食店員安藤優海さん(21)は「また穴が開かないだろうか」と不安げ。不動産会社の店舗責任者小川博文さん(49)は「陥没で1週間まともに仕事できなかった。二度と事故が起きないように慎重に進めてほしい」と注文した。

 今後も車道は最低片側1車線、歩道は1・5メートル以上の幅を確保するという。市交通局は「より安全性の高い工法への見直しを検討する」としており、2020年度の開業目標に間に合うかどうかは依然、見通せない。

■崩落リスク、どう回避

 8日未明、再開した福岡市営地下鉄七隈線の延伸工事。二度と事故を起こせない状況の中、関係者が最も神経をとがらせているのは地下水対策だ。国の第三者委員会がまとめた最終報告書は、坑内の水抜きや土砂撤去作業について、一歩間違えればトンネルや周辺地盤が崩落するリスクを指摘。専門家も「高度な土木技術が必要」と慎重な作業を求めている。

 七隈線建設技術専門委員会委員の安福規之・九州大大学院工学研究院教授(地盤工学)によると、現在は坑内に充満した地下水や土砂の抵抗力と、トンネル上部の岩盤層側からの圧力が均衡を保っている状態という。一部掘削済みの博多駅側トンネルの両脇には「炭質頁岩(けつがん)層」と呼ばれる軟らかい層が並走しており、安福氏は「一気に水を抜けばバランスが崩れ、数センチの地盤沈下が起きる恐れもある」と指摘。「地下水位と地表面の沈下計測は細心の注意が必要だ」と警戒する。

 地質と地下水位計測を行うボーリング調査地点は事故前より大幅に増やし、約30カ所で実施する。国の最終報告書は現場一帯を「不規則で複雑な地質構造」と結論付けており、地下水を多く含んだ砂層とトンネル坑内をつなぐ「水みち」がもし岩盤層に残っていれば、水抜きや掘削時に崩落の危険性を伴うからだ。

 市交通局と大成建設を代表とする共同企業体(JV)は地質の状況を把握した後、専門委での議論を踏まえ、地盤改良を行う範囲や適切な薬液の強度を見極めていく方針。とはいえ、安福氏は「岩盤層の亀裂や水みちをボーリング調査でピンポイントに見抜くことは相当難しい」とみる。「コストはかかるが、初めから広い範囲で強めに地盤改良し、遮水性を確保する選択もある」と提案する。

 水抜きと土砂撤去の手法や掘削工法について、交通局建設課は「そこまで検討できる段階にない」。事故現場で採用されていた「ナトム工法」や、国の最終報告書が検討を促した、大型ドリルで掘り進めるのと同時に壁面を補強する「シールド工法」と新技術の活用が選択肢となりそうだ。

 補償や土砂撤去費用はJVが負担する一方、設計変更や工事にかかる追加費用は市の負担。交通局は「安全とコストをてんびんにかけない」と安全最優先の姿勢を強調するが、多額の公費負担が生じる可能性もあるだけに、市民が納得できる丁寧な説明も不可欠となる。

【ワードBOX】JR博多駅前道路陥没事故

 2016年11月8日早朝、福岡市博多区のJR博多駅前で道路が幅27メートル、長さ30メートル、深さ15メートルにわたって陥没。けが人はなかった。現場は福岡市が発注し、大成建設などの共同企業体(JV)が受注した市営地下鉄七隈線延伸工事区間で、トンネル掘削とコンクリート吹き付けを繰り返す「ナトム工法」を採用していた。市は埋め戻しを優先し、1週間後に道路通行は再開。国土交通省の第三者委員会は原因について、トンネル上部の岩盤層が想定以上に薄くもろかったとした上で、地下水対策などの安全対策が不十分だったと結論付けた。

=2017/06/08付 西日本新聞朝刊=

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最終更新:6/8(木) 9:55
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