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「がんばらない介護」をIoTで安価に支援、キヤノンMJとベンチャーが共同開発

6/9(金) 12:10配信

MONOist

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は2017年6月8日、IoT(モノのインターネット)関連ベンチャーのZ-Worksと資本業務提携を行い、IoTを活用した介護支援ビジネスを本格展開すると発表した。安価な非接触センサーを複数使うことで入居者の状態を検知する「居室見守り介護支援システム」を共同開発し、大手~中堅の有料老人ホーム向けに展開する。1居室当たりの価格(税別)は、基本構成導入費用が10万円から、サービス利用料金が月額2000円から。2020年までの累計販売目標は約7000居室となっている。

【居室見守り介護支援システムの構成などその他の画像】

 居室見守り介護支援システムは、Z-Worksが目指す「がんばらない介護」の実現に向けて、介護スタッフの負荷を軽減するために開発された。システムは、要介護者の脈拍や呼吸、寝返りの回数などを検知するマイクロ波センサーや、人感、温度、湿度、明るさを検知するマルチセンサー、磁気によるドア開閉状況とともに人感、温度、明るさを検知するドアセンサー、センサーからの情報を920MHz帯を使う通信規格Z-Waveで集積し有線LANもしくは3G/LTE回線でクラウドとつなげるゲートウェイ、センサー情報から要介護者の状態をクラウド上で解析する「行動翻訳エンジン」から構成される。

 Z-Works 代表取締役 共同経営者の小川誠氏は「大手電機メーカーや精密機器メーカーが展開する介護支援システムは、自社開発のセンサーを含めて1施設当たり数千万円に達するような高価なものが多い。キヤノンMJと当社が開発したシステムは、比較的安価な海外製のセンサーを複数用いて、それらのセンサー情報をクラウドで解析するので、導入費用を安価に済ませられる。また、各センサーを有線でつなげる必要がないので基本的に工事が不要であり、設置にかかる時間も短い」と語る。

 また、センサーが全て非接触であることも重視している。「要介護者となる高齢者の多くは肌が弱いこともあって、装着型のセンサーを嫌がる傾向にある」(小川氏)という。

●SOMPOケアネクストで先行導入

 今回の発表に先駆けて、損害保険大手SOMPOホールディングス傘下のSOMPOケアネクストの介護施設への先行導入を実施した。SOMPOケアネクストは、居室見守り介護支援システムにより、転倒/転落、誤嚥、介護事故などを抑制し、事故の未然防止や早期発見による重篤化防止につなげることを目標としていた。

 SOMPOケアネクストの事例では、ベッドの床板の中央にマイクロ波センサーを、サイドフレームの下部にマルチセンサーを、居室の出入り口やトイレにドアセンサーを設置した。最も重視していたのは、大きな問題につながる可能性のある離床行動や徘徊(はいかい)の検知である。サイドフレーム下部のマルチセンサーは、要介護者が離床する際にベッドサイドから脚を降ろすことを利用して離床行動を検知できる。マイクロ波センサーで検知する心拍数と呼吸数からは、寝返りの回数に加えて、離床行動も検知可能である。また、居室の出入り口のドアセンサーによって、要介護者の不自然な外出を検知できる。

 トイレのドアセンサーは、要介護者が1日に何回トイレに行ったかを本人にヒアリングすることなく把握できる。ドアセンサーは浴室にも適用可能で、浴室内で転倒などによって動けなくなり、長時間入室したままになっている事態などが分かる。小川氏は「高齢者はドアを開放したままトイレや浴室に入ることがある。ドアセンサーは、ドアの開閉を検知するだけでなく、人感センサーも組み込んでいるので、そういった問題にも対応できる」と説明する。

 しかし、最も重要なのは、介護スタッフが求める要介護者の情報についてヒアリングした上で、介護施設や各居室の状況に合わせてセンサーを設置し、適切な情報を提供できるようにすることだという。居室見守り介護支援システムには、管理者向けに、各センサーからの情報を詳細に確認できる機能がある。しかし、現場で働く介護スタッフにとっては、そういった詳細な情報よりも、緊急対応が必要な情報だけを知らせてくれる方が使いやすいことも多い。実際に、SOMPOケアネクストでは、緊急対応が必要な状況を検知した場合にだけナースコールで呼び出すという運用を行っていた。

 小川氏は「あくまで支援システムであり、100点満点は難しい。ヒアリングによってどこまでできるかを確認し、支援できる範囲を設定する。もしかしたら60~70点かもしれないが、人材不足に苦しむ介護スタッフの手助けになれば」と意義を強調する。

 なお、SOMPOケアネクストは、今後全国の115施設に居室見守り介護支援システムの導入を広げていく方針である。

●介護市場に期待するキヤノンMJ、2020年の売上高目標は20億円

 高齢化が進む国内の介護市場は急速に伸びており、その市場規模は2007年の6.4兆円から、2025年には15.2兆円になるという調査もある。キヤノンMJは、キヤノン本体に頼らない独自成長領域の1事業として介護支援ビジネスに期待を寄せている。そこで、居室見守り介護支援システムを含めた介護支援ビジネスを担当する専門部署を2017年7月に設立することとした。介護施設向けの業務管理システムや、2016年5月に発表した高齢者の運動機能測定を効率化するシステム「ロコモヘルパー」と併せて、2020年の売上高目標を20億円に設定している。

 また、Z-Worksとの協業は、映像解析による介護関連ソリューションにも展開を広げていきたい考えだ。キヤノンMJ 総合企画本部 経営戦略部 新規ビジネス推進課の木暮次郎氏は「プライバシーの問題のある居室は今回のシステムで対応できるが、居室以外の共同スペースなどはカメラを用いたソリューションが必須になる」と述べている。

最終更新:6/9(金) 12:10
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