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チームワークはいらない、それよりも成果だ

6/9(金) 6:41配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「優秀な人が辞めたから業績が伸ばせない」「高い目標を設定されたからチームメンバーのモチベーションが低い」――。そんな言いわけを社内でよく耳にするビジネスパーソンは多いだろう。ただし、優れたリーダーというのは、どんな状況であれ必ず成果を出しているのだ。その差はどこにあるのだろうか。

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 早稲田大学ラグビー蹴球部の監督として2度の大学選手権優勝を果たし、現在はリーダー育成事業などを手掛ける中竹竜二氏と、サイバーエージェント取締役で人事を統括する曽山哲人氏が対談。

 前編では目指すべき成果の定義を明確にすることの重要性を、具体的なエピソードとともに強調した。後編は勝つためのチーム作りやメンバーの評価基準などについて意見を交わした(以下、敬称略)。

●チームワークなんていらない

――チーム目標を明確に定義し、監督就任2年目で早稲田大学ラグビー部は優勝しました。

中竹: 2年目のチームには裏話があって、最初にリーダーたちに50対0で勝つよと言ったとき、どんなチームにしたいかを聞いたのです。彼らは一生懸命考えてきて、「4年生を中心にまとまって勝ちたい」と言いました。「なぜ?」と尋ねると、「去年の4年生はバラバラでまとまりがなかった。あのチームは勝てないと思ったから」と答えるのです。

 それだけ聞くと、とてもいい話に思えますが、僕は譲りませんでした。

 「いやあ、よく聞くよね、そういう話。けどさ、俺はお前たちのチームワークなんていらないと思う。4年生の一体感とか、正直申しわけないけど、どうでもいい」

 さらに続けました。

 「それって、取って付けたような良い組織の話でしょ。じゃあ聞くけど、お前ら1年からレギュラーで出てるけども、同じ学年で6軍の○○というやつ、本気でしゃべったことあるの?」

 そう聞くと、誰も口を聞いたことがなかったのです。

 「同期で話すらしたことないのに、これから一体感持ってやれるなんてうそだよね。過去3年間そんなことがなくて、今年だけまとまるなんてうさんくさいチーム、絶対勝てないよ」

曽山: 強烈ですね。

中竹: そんな彼らに対して、チームワークはどうでもいいから、全員がライバルで、1人1人が戦って、甘やかさない組織にしてほしいと伝えました。ただ、それは僕の意見なので、最後はキャプテンのお前が決めるべきだと言いました。

 彼はすごく良いやつなんですけど、考え抜いた結果、部員全員の前で「チームワークなんていらない」と自分の言葉で宣言したのです。

曽山: 素晴らしいですね。

中竹: 本当に男気のあるやつで、熱い典型的なリーダーでした。実際、そのシーズンのチームは本当にバラバラで、ギスギスしていて、決勝戦前日まで殴り合うような状態でした。

 ところが、そのキャプテンが最後に決勝戦で円陣を組んだとき、「俺たちは本当にバラバラでまとまらなかった。今日勝って、優勝してまとまろうぜ」と言って、本当に優勝したのです。良いチームになったなと思いました。

 そして3年目に入り、新しいリーダーに「お前たちはどうしたい?」と聞きました。すると、「去年は勝ったはいいけど、あんなにギスギスして卒業したくないです。あんな勝ち方は全然嬉しくない」と答えるのです。

 そこで僕も「だよね、俺もあれは嫌だと思ってたんだよ」と応じました。では、どうしたいのか聞くと、最終学年だけとかではなく、1年から4年まで全員が仲良くやれる気がする、全員で楽しく一体感もって勝ちたいということでした。

 そこで「それ、いいね!」と(笑)。このように前年と戦略、スローガンもすべて真逆に振ったのです。実際、その方がこのチームには絶対合うと思ったからです。キャプテンも普段は選ばれないようなタイプを据えて、まったく違うチームを作りました。結果、3年目も優勝しました。

曽山: こうした方が成果が出るという中竹さんの算段があったからですね。実は成果定義が明確であれば、チームの中身がどうなろうが関係なかったりします。でも、多くの人は仲が良いチーム、ノウハウを共有し合うチームなどと、成果を出すための手段を目的化してしまいます。

 サイバーエージェントにも藤田(晋社長)の言葉で、「テニスサークルの部長になるな」というのがあります。これはテニスサークルが悪いのではなくて、仲良しになっていることが存在意義になっている組織を指します。こういう組織もあって構わないが、サイバーエージェントは違うからということです。結果を出し続けることが1番であり、その上でチームメンバーの仲が良ければなおいいのですが、このことをはき違えてしまうのが若手リーダーに多いです。

 どういうチームを作りたいのか聞くと、仲が良いチームですとか、支え合えるチームがいいですとか言います。結果を1番に置いてないので、ぬるいチームになるのです。これはけっこう陥りがちな罠(わな)ですね。

中竹: 2年目にはそんなチームワークはうさんくさいと言い放ち、3年目で本当に仲間として勝ちたいというのが感じられたので、そうしようと決めました。

 2年目は本当に圧倒して勝ったチームでした。「Penetrate」というスローガンを掲げて、最初から戦略や戦術をいっさい変えませんでした。シンプルで、やることがバレバレでも、徹底して強くなれば勝てることを目指しました。

 一方で、3年目はメンツを見ても、それだけでは勝てないと思いました。ほかがやっていない新しいことにチャレンジし続けないといけないと、練習内容からすべて変えました。そこで効いてくるのがKPI(業績などの評価指標)です。試合に敗れても「この負けは、最後に優勝するための負けだから大丈夫。予想通り負けたんだから」と、選手たちに言い聞かせていました。そして最後にきちんと優勝するのです。

曽山: 今のお話を聞いていて、チームリーダーとして大事なことの1つに、戦力の見極めがあると思いました。前年に優勝したときの4年生メンバーはいないし、現有の戦力で結果を出さないといけないわけです。

中竹: 以前はこういう選手がいたよねと言っても仕方ない。ないものねだりですよね。そうした悩みは物理的に時間がとられるだけなので、選手にも考えるなと言います。

 一番良くないのは、外に目を向けたり、言いわけしたりすることです。目の前に時間もあるし、人もいるのに、それを見切ってしまうことがもったいないです。

曽山: 目の前の人を身切るというのは確かにありそうですね。僕らは社内に「ありもので戦う」という言葉があるんですよ。今いる人材では結果を出せないと言うマネジャーがいたとして、「では、ほかのマネジャーに変えて結果が出たら、お前は本当に恥をかくけど、それでもいいの?」と。

 もちろん、マネジャーを変えても成果が出ないことはあるだろうけど、今の戦力で戦うと決めるのはリーダーにとって退路が断てるので、この場をどうするかだけを集中して考えることができるようになるのです。それはすごく大事なことです。

中竹: それと、人は成長するのです。だから失敗から学ぼうねと言っています。

曽山: 失敗から学ぶための方法とは?

中竹: 失敗はいいよねという声掛けをさせるようにしています。「あー、その失敗いいね!」とか。

曽山: なるほど。

中竹: 仕事がうまくいって進ちょくすることも大切ですが、どうなるか分からないけど挑戦して、失敗したことについても、新しい試みだと承認するほうが可能性は広がると思います。

 ラグビーでも、無難にプレーする選手よりも、難しいプレーを果敢に試みる選手を承認します。その場で声掛けするだけでなく、僕は練習もすべてビデオ撮影するので、良い失敗はほかのメンバーにも見せて、こいつはこんなにチャレンジしていると伝えます。

――評価にもかかわってくるところですね。失敗しても挑戦している選手を評価する。逆に、能力がある選手でも挑戦してないと評価が変わるということですか?

中竹: まさにそういうことです。早稲田のラグビー部には毎年1~2人、ど素人も入部してきます。地方の進学校から受験して入学し、早稲田に憧れてきましたというタイプがいるのです。

 当たり前だけど、そんなやつは同期からいじめられ、先輩からもバカにされるわけです。でも、中には劇的に成長するやつもいるんです。僕はそういう選手を大事にします。

 あるシーズン、こんなことがありました。

 本当に下手くそで、万年6軍にいた選手を半年間見ていたら、6軍であることは変わりませんでしたが、ある試合でフェーズ(攻撃の一連の流れ)が20回も続いたとき、そのフェーズの中で、この選手が普通にパスしてボールを投げていたのです。大したプレーではないのですが、以前は毎回ボールを落としていたのに、ノーミスで20フェーズこなしているのを見て感動しました。

 でも、ほかのコーチ陣は誰もそこに気付いてないし、選手たちもそいつがすごいとは思っていないわけです。普通のプレーにすぎないわけですから。改めてビデオで見ると、明らかに成長しているのが分かりました。

 そこでビデオを編集して、ミーティングで全部員に見せたのです。まず何も言わずに見せて、「何が言いたいと思う?」と選手たちに問い掛けましたが、誰も答えられませんでした。

 「お前ら、半年前の××を覚えてる? この20フェーズをノーミスでやれるって、どれだけの成長か分かる? こいつよりこの半年間で自信持って成長したと言えるやつはいるの?」

 そうしたら全員下を向いたんですよね。

 「お前ら、こいつのことバカにしてたし、今もバカにしてるかもしれないけど、お前ら絶対に抜かれるよ。抜かれたときにはもうこいつの成長のスピードに勝てなくなるから。どうやってこいつがここまで成長したか、普段の生活をどう変えたか、きちんとリスペクトした方がいいんじゃないの?」と言いました。

 それから選手たちの態度が変わったのです。同じポジションのレギュラーの選手が「一緒にキックやろうぜ」など、コミュニケーションを取るようになりました。

 成果とは別に、組織として何を文化にするか、何を大事にするかを考えるのは必要でしょうね。

曽山: 僕も藤田から「リスクを取るやつを評価して」「リスクを取って失敗したやつは必ずねぎらって」と何度も言われています。

――リーダーが失敗を承認してあげるというのはよく聞きますが、なかなかできない人は多いと思います。その結果、部下も失敗を叱咤されるのを恐れて隠してしまったり……。

中竹: リーダー本人が自分の失敗を認めないといけません。

曽山: 自分の失敗を認められるキャパがないと駄目なわけですね。

中竹: リーダーが優秀で、失敗しないように見せていると、そんな上司に部下は「失敗しました」なんて言えるわけないですよね。けれども、「今回これ失敗したんだよね」「失敗してないんだけど、実はここが危ないんだよね」などとリーダーが打ち明けると、部下も「この人も一杯一杯なんだな」と理解します。それがないと部下も失敗を見せられないし、上司に隠そうとするでしょう。

曽山: 後は、小さなチャレンジから始めることもいいと思います。失敗させろと言っても、あまりにも大きな失敗をさせてしまうと自分の部署がつぶれてしまう危険性があるわけですから、リーダーの許容範囲の中で最大のチャレンジを部下にどれだけやらせるかが重要ではないでしょうか。それによって信頼関係を築き、どんどん大きなチャレンジをさせていくのがいいと思います。

●強い組織とは何か?

――お話を伺っていて、強い組織と言ってもそれが何かという定義が重要だということが分かりました。その上で、お2人が考える強い組織とはどういうものなのでしょうか?

曽山: 僕の場合は、成果が出続けること、これしかないです。成果が出続けていれば強い組織だと思うし、リーダーはこのことから逃げないのが重要です。

中竹: 成果やそれを達成するための手段を決めても、状況が変わればしなやかに変化対応できるかが強い組織だと思います。

曽山: 変化対応力ですよね。

中竹: これは勇気のいることですが、最終的には組織が変化し続けられるかが重要です。

 しばしばリーダーにとって朝令暮改は一貫性がなくて悪いことだと言われます。僕が一緒に仕事をしていた元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズという人は、朝令暮改どころか“朝令朝改”。それを自信持って貫いていました。考えてさっき言ったことよりも、今思い浮かんだことの方が良いと思えばすぐに変える。勇気が必要だし、リスクもあるのですが、自分の失敗を認めてすぐに変えられる力、こっちの方がいいのだと前に進む力を持ったリーダーと、それに対応できる組織が最も強いと思います。

曽山: 変化し続けるのはすごく大事ですね。サイバーエージェントの強さはまさに変化対応力です。ずっと変化しているので、他社には真似できません。たとえ真似しても、今日明日には決して追い付けません。

 ただ大切なのは、変化することではなく、変化の習慣を持つことです。いきなり大きく変化しようとすると拒否反応は強いし、組織が破たんします。それよりも、小さな変化をずっとやり続けていると、変化の習慣がついてきます。サイバーエージェントは社員が年に3回異動したり、月に1度は社内のどこかでレイアウト変更をしていたりします。そのことにクレームが来るけれども、業績は伸び続けているので、変化することを止めることはありません。

――本日はどうもありがとうございました。

(伏見学)

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