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高効率な個別大量生産に対応する日立大みかのノウハウ、IoTプラットフォームから提供

6/9(金) 11:50配信

MONOist

 日立製作所(日立)は2017年5月31日、同社のIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を製品コアとした生産現場作業における支援システムの提供を開始した。同システムは、多品種少量生産でのIoT実践において、「制御機器の主力製品の生産リードタイムを50%短縮」という成功事例を持つ、日立 大みか事業所での事例の一部を汎用化し、Lumadaの産業分野向けサービスの1つとして外販するものである。

 日立グループでは、「人・モノ・設備」(3M)をデジタルでつないで、かつ収集したデータを人工知能に分析させ、さらにその結果を現場へフィードバックするといったシステムを実際に活用し、経営面で成果も出してきた。また、その業務領域も、電力やエネルギー、産業、流通、都市、金融、公共、ヘルスケアと多岐に及ぶ。そのような同グループでの経験や顧客における事例を汎用化し、「ソリューションコア」というテンプレートにまとめて、外部の企業に提供しようというのがLumadaの趣旨である。

 Lumadaの特長として日立は、オープンアーキテクチャであること、多様な既存システムとの接続に対して柔軟に対応できること、既に社会で実績があるシステムとしての高信頼性の3つを挙げる。IoTプラットフォームにおいては、センシングや通信(M2Mなど)、クラウドコンピューティング(インターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)など、ハードからソフトまで幅広い技術の連携が要求されるが、日立は制御技術(OT:Operational Technology)とデータの分析・活用技術(IT)の両面から技術を幅広くカバーしており、その知識と経験に基づいて提供可能なサービスが優位点であるとしている。

 大みか事業所では、日立グループの構造改革「Hitachi Smart Transformation Project(スマトラプロジェクト)」の下、高効率で柔軟かつ持続性の高い多品種少量生産に向けた取り組みを実施してきた。過去には現場に約8万個のRFIDタグを設置して、工程の見える化を実施する「RFID生産監視システム」や、個別設計を減らして設計から調達までを効率化する「モジュラー設計システム」を導入した。

 その後、同事業所ではマスカスタマイゼーション(個別大量生産)のニーズに対応すべく、2015年からデジタル(IoT)を取り入れて、「製造3要素」といわれる「人・モノ・設備」の現有リソースを最適化して生産性を高め、品質向上を図ろうという取り組みを開始。中でも「人」(作業者の要因)の最適化を重視して取り組んだ。

 同事業所では、RFIDで取得したデータから各工程の進捗を把握し、遅延が発生した工程の対策を検討する「進捗・稼働監視システム」、作業時間が通常よりも長くかかっている生産工程を検出し、画像分析などにより問題点を可視化する「作業改善支援システム」、改善結果を製品設計にも反映して役立てる「モジュラー設計システム」、最適な生産計画に基づき、人員や部品などのリソースを最適配分する「工場シミュレーター」の4システムを連携し、運用する。

 今回はその中から、Lumadaを利用した進捗・稼働監視システムと、ボトルネック作業の分析・対策を実施する作業改善支援システムの2つを提供する。

 「多品種少量生産においても大量生産並みの生産性実現が求められている。ユーザーニーズの多様化、グローバル競争の激化、急速なデジタル化の進展(IoTやAIといった技術革新など)といった要因から、今後のモノづくりはマスカスタマイゼーションの対応が必要となる」と、日立 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部 大橋章宏氏は今回のシステム提供の背景について説明する。

 進捗・稼働監視システムは、生産計画と作業実績のデータをデータベースに収集して一元化、時間と作業工程を軸にした棒グラフで可視化する。それにより、工程の遅延やボトルネックになっている作業、作業能力(人員)の過不足など、現場リーダーが一目で把握できるようになる。生産リソースの最適配置や、実績に基づいた生産計画立案が実現できるとしている。

 作業改善支援システムでは、上の進捗・稼働監視システムのデータ、工程や作業別の作業実績、作業映像から、目標と実績の差分からボトルネック作業を検出し、そこに関連する実際の作業映像と作業指示図も表示する。改善効果が高く、優先的に対策すべきボトルネック作業を自動抽出でき、かつ改善に必要な情報も併せて表示されるため、効率のよい改善検討が可能だ。

 2017年中に、モジュラー設計システムと工場シミュレーターもLumadaを通じて提供化していく計画だ。将来は、生産スケジューリングの最適化を図る仕組みとして、現場から取得したビッグデータの解析やAI活用、シミュレーション技術による自動学習への対応を検討中ということだ。

 大みか事業所ではRFIDを活用して現場データ収集を実施していたが、今回のシステムの導入においてはデータ収集の手段は問わずに使えるとしている。また、これらのシステムは、同事業所と同様に多品種少量生産で課題を持つ企業に向けたものだが、実際には大量生産での現場からの問い合わせもよくあるという。同社は多品種少量生産の現場に限定せず適用できると考えるとのことだった。

 システムの導入形態については基本的にはクラウドサービス経由を考えているが、企業の所有するサーバで扱いたい(オンプレミス)というニーズが想定できるため、そちらも検討しているということだ。

 「現場のファクト(事実)をどう捉えるかが大事。そこに対して、デジタルデータを活用した改善の取り組みを実施した」(大橋氏)。同氏は発表会の中で、改善活動において事実を捉えることの重要性や効果について何度か強調した。

 同事業所の従来の改善活動では、人の頭の中にある記憶を基に問題を探るしかなかった。問題が発覚した際に、担当者に聞き取りするしか手段がなく、「○○だったかも……」「○○だったと思います」と担当者の記憶があやふやな場合も結構あったという。それに、事実を正確に伝えようにも、言葉で伝える過程においては、本人の主観的解釈や感覚、感情の影響が多少入ってしまうものだ。そのような要因により、事実の的確な把握が困難だったことから、効率的な改善ができずにいたという。

 そこで大みか事業所では、作業者の作業状況をカメラで監視して記録しておき、問題が発生した際にはボトルネックとなっている作業を自動抽出し、該当する実作業の映像と指示書を表示できるようにした。うやむやになった記憶をたどるのではなく、実際に起こったこと(事実)を作業に従事した担当者と一緒に映像と指示書で確認しながら、的確に問題抽出でき、それに基づいた改善を適切に行っていけるようになったという。

 なお同社は、今回のサービスと併せ、大みか事業所で培ったIoT活用ノウハウを伝授する研修も提供する。同事業所の現場でIoT導入に従事した担当者らが講師となる。こちらは、大みか事業所内で月2回ほど開催する。参加費用は1人当たり5万4000円。研修には工場見学も含まれている。

最終更新:6/9(金) 11:50
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