ここから本文です

THE NOVEMBERS、敬愛するblgtzと共に完成させた「美しい日」

6/9(金) 18:00配信

Billboard Japan

 日常において、美しい、と断言できることは意外に少ないのではないだろうか。ときに本心から思えたとしても、陳腐だ、気障だなどと笑われることを恐れ、口にするにも勇気がいる。あるいは言葉の持つ意味を真剣に考えた結果、躊躇してしまうことだってあるかもしれない。

THE NOVEMBERS【美しい日】写真(全9枚)

 THE NOVEMBERSの結成11周年記念となる映像作品と、その販売に伴う今回のツアーは「美しい日」と名づけられた。ラスト2日間は東京・渋谷 WWW Xで行われ、5月26日のDAY1では、小林祐介(vo,g)含めメンバーが敬愛する田村昭太のプロジェクト、blgtzをゲストとして召還。00年代からカルト的な人気を博してきたblgtzにとっては4年半ぶりの復活ライブとなった。一体、どんな日だったのか――こればかりは多くの人が「本当に“美しい日”でした」と胸を張って答えるだろう。

【blgtz】衝撃の復活を遂げたバンドの心音

 期待と不安が入り乱れる中、エルヴィス・プレスリー「If I Can Dream」のSEで、ギター、ベース、ドラムのサポートメンバーに遅れて登場した田村。相変わらずのきれいなマッシュルーム・カット、シンプルなシャツとズボンというスタイルで、まずは白熱電球のような色合いの光を浴びながら、“静”から“動”への展開が特徴の代表曲「stella」を、KORGのシンセサイザーを用いた“静”を押し出すアレンジで披露した。久しぶりにblgtzを目の当たりにした人の気持ちを昂ぶらせ、初めて彼らを観る人にとっては衝撃を与える幕開けである。

 そのヒステリックなまでの緊張感、崖にぶら下がっているようなギリギリの精神性、圧倒的なサウンドスケープが魅力のblgtz。2001年にバンドとして結成され、何度もメンバーチェンジを繰り返すなど、安定しているとは言えないながらも地道な活動を行ってきた。そんな中でTHE NOVEMBERSとも出会うことになるのだが、2012年に3rdアルバム『同時に消える一日』のリリース・ツアーを開催したあと、様々な要因からライブ活動を休止。作品も宅録音源に留まった。当時、田村は自身のブログに「なんとか立ち直って[どんな形でもいい]/また会場でみんなと歌と空間を共有したい。」と書いている。

 復活ライブに相応しく、セットリストは名曲揃い。“静”から始まったステージは少しずつ熱を帯び、疾走感あふれる「イデオロギー」辺りから轟音の占める割合が高くなる。決意を持っているかのように鳴るべきところで鳴るドラム、ルート音を追い続けるベース、ひたすらにコードをかき鳴らすギターという、極限まで無駄をそぎ落としたサウンド。体が押し潰されそうになるほどの音圧。田村はときに囁くように、ときに叫びながら、その悲痛な想いをメロディに乗せていく。ただこの日、彼の顔がほころぶ瞬間もあった。楽しそうに笑っていたのである。

 「ありがとう。最後まで楽しんでいってください」という無骨な言葉に続き、サポートメンバーは撤退。田村はステージ向かって左側を向き、鍵盤のフレーズと歌声だけで成るスローテンポの新曲「エコー」を演奏し始める。下からの白いスポット・ライトであぶり出されるのは、よろめきつつ、暴力的な足踏みでリズムを取る男の姿。悪魔的なほどの神々しさである。のちに小林は「人がステージに立ってギターを持って歌ってるってことがこんなに美しいなんて、と思ったのは昭太さんが初めてだったんです」とも発言するが、その瞬間がいま現在まで続いていることを証明するかのごとく、田村は自らの胸にマイクを宛がった。ゆっくりと暗闇が還り、心臓の音が鳴る。

1/3ページ

最終更新:6/9(金) 18:00
Billboard Japan