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母を見舞ったその足で、歌舞伎町へ走り出す。夜の世界で生きる娘と母の「消えない」言葉

6/9(金) 8:15配信

BuzzFeed Japan

著書『「AV女優」の社会学』が、自身の経歴とともに注目された、鈴木涼美さん(33)。新作エッセイに書きとめたのは、華やかな「夜のオネエサン」からこぼれ出た、母娘関係のかけらだった。【BuzzFeed Japan / 小林明子】

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2013年、東京大学大学院の修士論文などをもとに書いた『「AV女優」の社会学』(青土社)で、性の商品化の現場にある「きらきらした魅力」を突きつけた。新聞記者を経て、作家に転じた。

自身がAV女優だったことが週刊誌によって白日の元に晒されたのが、新聞社をやめた直後の2014年秋。その後、母親にがんが見つかった。家族の祈りもむなしく、病は母親の身体を蝕んでいく。

母親の死から1年を迎えようとしている今年5月、エッセイとしては2冊目の単行本『愛と子宮に花束を』(幻冬舎)を出版した。自身を含め、「夜のオネエサン」たちの日常に垣間見えた、母娘のエピソードの「かけら」を集め、記録したものだ。

BuzzFeed Newsは5月末、鈴木さんにインタビューをした。晴れていた空が急にどしゃ降りに変わる、気分屋の天気の日だった。

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母親は私の顔をみるとしゃべる人でした。2年ほど私が実家に帰らない時期もありましたが、それ以外は月一度でも、会うたびに持ち前の「会話力」を発揮していました。

自分の死を意識してからは、急いであれこれ話そうとするし、私も「このままこの人を手放しちゃっていいのかな」という焦りがありました。

存在している間にわからなければいけないことがもうちょっとあるんじゃないか。このまま終わっちゃいけない気がするけど、それが何かわからないから、お互いに聞けないし、話せない。

最後の1年は、会話というより関係性が、すごく濃かったですね。母親は「化けて出る」とまで言ってましたけど(笑)

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最後まで娘を許さなかった母親

AVに出演していることが母親にバレたのは、週刊誌報道の4年前、2010年だった。

母親は、娘のふるまいを嘆き悲しみ、否定した。そして、こう言った。

「あなたが詐欺や暴行で世間からバッシングされたとしても守るけど、AV女優になったら守るすべを失った」と。


<緩和ケアに入ってもまだ痛み止めの影響があまり出ていない頃、母はあまり顔を動かさず、あまり息を吸い込まずによくこんな話をした。

「身体やオンナを売るっていうことはさ、お金はもらうけど、それで何かを売り渡してはいるけど、それでも身体もオンナも売る前と変わらずあなたの手元に残るからね、だから一生消えないと思うのよ」>

愛する娘の身体や心を傷つける娘を、一度も許さなかった母親。その態度は、週刊誌報道後、AV女優という経歴を安易に肯定し、過剰に擁護してきた人たちとは対照的だった。

鈴木さんは病室で、母親の話を聞きながら、テレビ出演の衣装を考えたり、化粧をしたりして過ごしていた。

<母は日に日に弱る身体で、日に日に日当たりが悪くなっていく病室で、モルヒネのせいで日に日に意識も滑舌も朦朧としていく中で、怖いと言い続けた。(中略)私は、消灯時間になったら5分おきに帰ろうとして、止められる度に少しイライラして、やっと寝た母のパジャマに転落防止の安全ピンをつけて、小走りで明るい夜の街に逃げ込んだ。>

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最終更新:6/9(金) 8:15
BuzzFeed Japan