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「ガールフレンド」以上、父の大切なパートナーへ

6/9(金) 19:10配信

朝日新聞デジタル

【花のない花屋】

〈依頼人プロフィール〉

クロウ里美さん 39歳 女性
カナダ在住
主婦
    ◇
 母は私が6歳のときにガンで亡くなりました。それからというもの、まだ若かった父は祖父母とともに自営業の時計屋を営みながら、私たち姉妹を育ててくれました。

【写真】角度をかえて楽しめる花束を

 そんな父にも、いつの間にかそばに寄りそうパートナーができました。私が高校生くらいの頃だったでしょうか。最初は父のお店でときどき顔を合わせるくらいでしたが、だんだん一緒に夕ご飯を食べたり、家に泊まっていったりするようになり、気づけば私の生活の一部に彼女がいました。

 看護師として働く彼女も離婚を経験していて、3人のお子さんを育てています。いつも「ガハハ!」と笑っているような、たくましくて豪快なイメージでしたが、趣味はクラフトで、手作りのアクセサリーやぬいぐるみ、お花のトールペイントなどをよくプレゼントしてくれました。さらに私の結婚式では、手作りのショールを贈ってくれたこともあり、いつも繊細な気遣いをしてくれました。

 ただ、私は長い間「父のガールフレンド」というだけの認識で、二人は友達の延長線上で一緒にいるのだろうと思っていました。その考え方が一変したのが、父が病気になったときです。

 父は、私の結婚式の直後に重い病気を患い、しばらく生死をさまよっていました。人工透析が必要になるかも……となったとき、誰よりも先に「私の臓器をあげるよ」と言ってくれたのは彼女でした。ふつう、家族でもためらう決断です。そのとき、「ああ、そういう関係なんだ……、彼女は本気なんだ」と初めて理解しました。

 二人は今も別々に暮らし、籍は入れていません。でも、気づけば父と彼女との付き合いは、母と過ごした時間よりも長いものになっています。

 父は今、人工透析の通院をしながら、認知症が進む90歳の祖母と暮らしています。そんな中、明るい彼女の存在が、どれほど父の助けになっていることか。彼女は父の家に来て、祖母の介護までしてくれているそうです。それを聞いて、私はショックでした。本来なら、私がやらなくてはいけないことです。

 私はカナダ人の夫と結婚し、カナダで暮らしています。彼女の存在がなかったら、私はこんなところにいられなかったでしょう。私はいつも彼女の優しさに甘え、もらうことが当たり前になりすぎていました。

 いま、改めて父の大切なパートナーへ、これまでの感謝を伝える特別な花束を贈りたいです。明るくておおらかで、同時に繊細な彼女に似合う、華やかな花束を作ってもらえないでしょうか。スイートピーが大好きで、色はピンクや紫が好みだそうです。

〈花束を作った東信さんのコメント〉

 とてもステキな関係ですね! 今回はお父様のパートナーの女性が好きだというピンクと紫の花を使ってアレンジしました。エピソードを読んで、明るく大らかな女性のような印象を受けたので、大ぶりなダリアをメインにしつつ、色は大人っぽくまとめました。

 トップに挿したダリアの横には、ナデシコ、ネリネ、バラ、スカビオサ、ニゲラの花とつぼみを挿しました。周りは彼女が好きだというピンクのスイートピーでぐるりと囲んでいます。このスイートピーは一見スイートピーには見えないかもしれませんが、“宿根スイートピー”というもの。通常のスイートピーより花弁が肉厚で小振りです。

 今回のアレンジは花の種類をかためて挿しているので、見る角度によってまったく違います。その日の気分でぐるぐるまわしながら楽しんでくださいね。

(文 ライター 宇佐美里圭 /朝日新聞デジタル「&w」)

朝日新聞社