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首都圏での家選び 「戸建ては無理だからマンション」の間違い

6/10(土) 10:50配信

ZUU online

結婚後には賃貸アパートに住んで、やがて分譲マンションを購入、ゆとりができれば最後に一戸建てでアガリ――かつては、そんな“住宅双六”がもてはやされた。

それだけ庶民にとって一戸建ては高嶺の花で、マンションのほうが手に入りやすかった。それでもいったんマンションを買っておけば、やがては価格が上がって、一戸建てへのステップアップが可能になる住宅市場が存在したのだ。

しかし、いまはそんなことはない。まだまだマンションより一戸建てのほうが高いと思い込んでいる人がいるかもしれないが、実はそうではない。たしかに、自分で土地を手配して、そこに高級な注文住宅を建てるとなるとマンションよりはるかに多額の予算が必要になるが、建売住宅でいいのなら、むしろマンションより安く手に入る。

■「一戸建ては無理だからマンション」は間違い!

半面、住宅を取得すれば、10年、20年後には高く売却できるという住宅市場も崩壊、いったん買ってしまうと、買換えは至難の技となっている。一部都心部などの高級マンションでは値上がりするケースがあるが、平均的な一戸建てやマンションだと、使った分だけ価値が下がり、値上がりどころか取得時の価格より安くしか売れないのが現実だ。

■いきなり一戸建てを買う人が増えている

実際に、住宅金融支援機構と民間提携のフラット35を利用して2015年度に住宅を取得した人の平均価格を住宅の形態別に比較すると次のようになっている。

・建売住宅    全国平均 3319.5万円 首都圏3569.1万円
・新築マンション 全国平均 4249.7万円 首都圏4827.1万円
・中古一戸建て  全国平均 2279.0万円 首都圏2773.2万円
・中古マンション 全国平均 2692.2万円 首都圏2975.6万円

全国平均でみても、新築マンションは建売住宅より930万円ほど高く、首都圏だけに限ればその差は1200万円以上に拡大する。中古住宅も同様で、全国平均ではマンションのほうが410万円ほど高く、首都圏では200万円ほど高いという結果だった。

このため、最近では住宅双六におけるマンションを飛ばして、いきなり一戸建てを買う人が増えている。この価格の違いを考えると、それも当然のことだろう。特に、首都圏ではその価格差が大きいだけに、返済負担に与える影響も大きい。

仮に1000万円の頭金があるとすれば、新築一戸建てなら借入額は2570万円ほどですむが、新築マンションだと3830万円ほどのローンが必要になる。金利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしで計算すると、一戸建てであれば毎月7万2547円ですむが、マンションだと10万8115円に増える。しかも、マンションの場合にはこれに管理費や修繕積立金、クルマがある場合には駐車場料金の負担も出てくる。

■マンションは管理費など維持費の負担も大きい

国土交通省の『平成25年度マンション総合調査』によると、東京圏の単棟型のマンションの管理費の平均は1万2125円で、修繕積立金が1万3084円で、合計2万5209円。東京カンテイによると東京都の駐車場料金は平均2万5506円だから、管理費・修繕積立金と合わせると5万0715円に達する。

住宅ローン返済は10万8115円でも、これらを加えると毎月の負担は15万8830円になり、年間では190万5960円と200万円近くになる。年収700万円だと年収に占める割合は27.2%で、かなり負担が重くなる。この負担に耐えるには1000万円近い年収が必要になるのではないだろうか。

一戸建ても自分で計画的な修繕計画を立てて、その準備金を積み立てていく必要があるが、それにしてもマンションに比べると負担は格段に小さくなる。負担面だけで考えれば、マンションより一戸建てのほうがかなりに有利になるといっていいだろう。

■住んでいる間の居住性や自由度を比較する

取得時の買いやすさを考えれば、一戸建てに軍配が上がるが、では入居してからの居住性や自由度などはどうだろうか。これは、その人の価値観などに大きく左右されるので、一概に決めつけることはできないものの、客観的な指標だけで確認する、次のようなことがいえるだろう。

○マンションのメリット(一戸建てのデメリット?)
・建物が頑丈で、断熱性・気密性が高い
・駅近くなど立地に恵まれている
・防犯面での安心感がある
・基本的にフラットでバリアフリー
・高層マンションは眺望が開け、開放的

○一戸建てのメリット(マンションのデメリット?)
・隣近所の音を気にしなくていい
・庭が付いている
・駐車場がある(駐車場料金がかからない)
・複数階を使い分けることができる
・建て替えやリフォームが可能

ここで挙げたマンションのメリットは、逆にいえば一戸建てのデメリットであり、一戸建てのメリットはマンションのデメリットということできる。

たとえば、鉄筋コンクリート造のマンションは頑丈で、断熱性や気密性が高いが、一戸建ては基本的に木造であり、強固さなどの面ではマンションに比べてやや劣る。逆に、一戸建ては隣接する住戸が離れているので、プライバシーや音の問題をさほど気になる必要はないが、マンションでは上下階や両隣の音が気になるもの。プライバシー面でも同様だろう。

それぞれのメリット・デメリットをどう考えるかは人それぞれだが、大切なことは簡単に買換えできる環境ではないので、買う以上は永住を前提に選択する必要があるということ。

5年後、10年後だけではなく20年後、30年後まで見据えた選択が重要だ。たとえば、いまは元気でもいずれは階段の昇り降りがつらくなるかもしれないし、庭の草むしりもたいへんになってくる。であれば、基本的にバリアフリーで、鍵ひとつで外出できるマンションのほうがいいかもしれない。

ただ、それも資産価値を考えると、比較的評価が安定している一戸建てのほうが高く売却できる可能性が高く、その資産価値を背景に老後は賃貸に回して自分たちは便利なマンションに移る、あるいは売却して有料老人ホームなどに老後の選択肢が増えるかもしれない。

■将来の資産価値は一部を除いて「一戸建て」が有利

その20年後、30年後の資産価値をみるとどちらが有利なのだろうか。これは、あくまでも平均的な物件の評価ということになるが、東日本不動産流通機構の『築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2016年)』から、一戸建てとマンションの築年数別の成約価格をみると、次のようになっている。

築年数      マンション     一戸建て
築0~5年     4875万円     3764万円
築6~10年     4243万円     3633万円
築11~15年    3931万円     3654万円
築16~20年    3159万円     3346万円
築21~25年    1899万円     2815万円
築26~30年    1670万円     2606万円
築31年~     1678万円     2150万円

新築時や築年数が浅いうちは、マンションの成約価格が高いものの、築16年を過ぎると関係は逆転、一戸建てのほうが高くなる。築31年以上をみると、マンションは築0~5年のほぼ3分の1まで下落する。

もちろん、一戸建ても下がるものの築0~5年価格の6割近い水準を維持している。一戸建ては、「築20年が経過すると建物の価値はゼロ、土地値での取引になる」といわれてきたが、最近は住宅の基本性能や耐久性能の向上などによって、一定期間が経過してもある程度の評価が得られるようになっている。

しかも、一戸建ては自分一人の判断で自由にできる土地が付いているが、マンションの場合には土地はあくまでも区分所有であり、自分一人の判断では自由にできない。その自由になる土地が付いている分、一戸建てへの評価が高くなっているとみていいだろう。しかも、最近はその土地価格が全国的に上昇傾向で、特に首都圏などの大都市部の人気エリアでは上昇率が高まっている。それだけに、今後は一戸建ての20年後、30年後の評価が一段と高まる可能性があり、資産価値の格差がさらに大きくなるかもしれない。

ただ、マンションでも大都市部の都心エリアの人気物件――必然的に高額物件になるが――それらのなかには、分譲から10年、20年が経過しても資産価値の落ちない物件が珍しくない。むしろ分譲価格より2割、3割と上がっている物件もある。それだけに、資産価値にこだわるのであれば、都心の人気エリアのマンションにターゲットを絞るのがいいのではないだろうか。もちろん、それを取得できるだけの資金や収入があるとしてのことだが。

住宅ジャーナリスト・山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『家を買う。その前に知っておきたいこと』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)などがある。『Business journal』、住宅展示場ハウジングステージ・最新住情報にて連載。

最終更新:6/10(土) 10:50
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