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UQ mobile、J:COM MOBILE、mineo――au系MVNOの最新動向 “サブブランド規制論”も

6/10(土) 6:25配信

ITmedia Mobile

 「au+MVNOで、モバイルIDベースの成長を目指す」――KDDIの田中孝司社長が語ったこの戦略に呼応するように、UQ mobileやJ:COM MOBILEなど、KDDI傘下のMVNOが、動きを活発化させている。UQコミュニケーションズは、6月1日に夏商戦に向けた新製品や新サービスを発表。ジュピターテレコムも、6月7日に今期の戦略を語った。

【J:COM MOBILEで取り扱う「iPhone 6s」】

 MVNO、サブブランドではドコモやY!mobileに押されがちだったKDDIだが、反転攻勢をかけつつある。一方で、サブブランドに対し、MVNO、特にauのネットワークを借りる会社からは、けん制の声もあがっている。そんなau系MVNOの最新動向を掘り下げていこう。

●春商戦でユーザー数が急増したUQ mobile、夏からは家族の獲得を強化

 au VoLTEに対応させたSIMロックフリースマートフォンをそろえ、2016年の秋冬商戦では大幅に端末を拡充させたUQ mobile。テレビCMも大々的に展開した結果、無名に等しかった知名度は急速に上昇した。UQコミュニケーションズの野坂章雄社長によると、24%程度だったUQ mobileの認知度は、テレビCMを契機に「一気に90%ぐらいまで持ってくることができた」という。

 同時に、UQスポットや家電量販店などの顧客接点を強化したことも相まって、契約者数は急増。実数は明かされなかったが、3月の新規契約者数は2016年6月と比べ、数倍の規模で伸びている。KDDIによると、同社傘下のMVNO契約者数は3月末時点で87.4万。J:COM MOBILEが14万(決算での公表値)、BIGLOBEが40万強(MM総研の調査から推計)だと考えると、UQ mobileも30万契約は突破した可能性が高い。

 そのUQ mobileは、夏商戦で、家族向けの料金割引「UQ家族割」を導入した。割引内容はシンプルで、2人目以降、料金が500円引きになるというもの。Y!mobileも同様の割引を行っており、これに対抗した格好だ。家族契約で割引を提供するメリットは、新規契約の獲得と、解約率の低下の両面にある。先に家族割を導入しているY!mobileでは、「5人に1人、家族を連れてくる」(ソフトバンク Y!mobile事業推進本部 執行役員本部長 寺尾洋幸氏)という効果が出ているそうだ。

 家族で契約するユーザーに向け、サービスも拡充した。「家族みまもりパック」がそれで、「みまもりサービス by Family Locator」と「filii」をセットにしたもの。家族の位置を検索できたり、子ども用のスマートフォンにフィルタリングをかけたりといったことが可能になる。サービスでは、同時に「UQあんしんサポート」と「クラウドバックアップby AOS Cloud」「UQ SNSセキュリティ by MyPermissions」がセットになった、「UQあんしんパック」の提供も開始した。

 さらに、新端末も3機種導入した。シャープの「AQUOS L」、京セラの「DIGNO V」は、ライトユーザーを狙うモデル。販売が好調な「P9 lite PREMIUM」の後継機にあたる、ファーウェイの「P10 lite」もラインアップに加えた。野坂氏は「iPhoneも売れているが、シャープと京セラ、それからファーウェイはやはり人気がある」と言い、好調なメーカーを軸に端末バリエーションを増やした形になる。若年層に強いiPhone SEを導入したうえで、その家族を獲得できるAndroidのラインアップを手厚くした格好だ。

 勢いに乗るUQ mobileは、年度内に90万の契約者を獲得することを目標に据える。ただし、これはMVNO市場全体を300万と見積もり、そこに30%をかけた数値。野坂氏も「MVNO市場が300万どころか、400万、450万になれば、そこに0.3をかけるともっと違ったことになる。90万で満足してはいけない。大台(100万)に達したいところはある」と本音をのぞかせる。

 ショップの数や、本腰を入れ始めた時期に違いがあるため、直接的な競合となるY!mobileとはまだまだ大きな差はあるが、「絶壁だが背中は少し見えたところ」(野坂氏)だといい、ショップなどの販売面を強化していく構えだ。UQ mobileのショップである「UQスポット」は、「年度内に120店舗に持っていきたい」(同)という方針を取る。

●地域密着型ビジネスの強みを生かし、ユーザーを増やすJ:COM MOBILE

 全国展開のテレビCMを放映し、端末バリエーションも一気に広げ、幅広い層にリーチするUQ mobileに対し、ジュピターテレコムの運営するJ:COM MOBILEは、地域密着型で手厚いサポートを売りにするMVNOサービスだ。主に、J:COMユーザーを対象に絞っているため、サービス開始後も大きな話題になってはいないが、契約者数は着々と増え、3月末には14万を突破している。

 MVNO事業に参入後、J:COM MOBILEは、徐々に料金プラン、サービスを拡充してきた。2016年12月には、新たに5GB、7GB、10GBのプランを新設。もともと3GBだけだったプランと合わせて、4つのデータ容量から料金を選べるようになった。また、2月から、5分間の通話が850円で定額になる「かけ放題5分」も導入している。かけ放題5分は通常の音声通話で適用され、プレフィックス番号や専用アプリが不要なのが他のMVNOとの違いだ。3月には、「安心端末保証」も導入した。

 こうした「多面的なサービス強化」(ジュピターテレコム 井村公彦社長)によって、「認知の拡大と加入者獲得につながる成果を出すことができた」(同)。この勢いを維持しつつ、「他社とは一線を画したMVNOサービスを提供していく」(同)というのが、J:COM MOBILEの方針だ。

 J:COMにとって、MVNOサービスは「重要商品と位置付けており、利益面よりもお客さまのリテンション(顧客関係の維持)に効果がある」(牧俊夫会長)という。モバイルサービスがないと、「お客さんがソフトバンクショップやドコモショップに行って、テレビだけを残して(ネット回線を)ドコモ光やSoftBank光に変えてしまう」(同)恐れがある。ケーブルテレビ網でインターネットサービスを提供しているJ:COMにとって、これは大きな痛手だ。ドコモやソフトバンクとは発想が逆だが、モバイルサービスを持つことで、ここに歯止めをかけられるというわけだ。

 他のMNOに移る動機の1つになるiPhoneも、J:COM MOBILEとして正式に導入した。販売するのはiPhone 6sの「認定整備済製品」で、広義には中古品だが、「中国の工場でリファービッシュを行っている」(牧氏)ため、見た目は新品そのもの。「アップルストアでサポートを受けることができる」(同)ため、単なる中古とは異なり、メーカーのお墨付きを得たものだ。iPhone 6sを正式に取り扱うのは、MVNOとして「唯一」(同)の存在。「普通のMVNOとは一線を画す、MNOに近い形の強化をしてリテンションの武器にしていきたい」(同)という意気込みで導入した。

 一方で、牧氏によると、売りとしていたカウントフリーは、まだあまり効果が出ていないという。当初導入したのが、LGエレクトロニクスの折りたたみ型スマートフォン「Wine Smart」で、フィーチャーフォンとして使うユーザーが多かったためだ。こうした状況に対し、J:COM MOBILEでは、同じLGエレクトロニクスの「X screen」を導入。iPhone 6sに加え、シャープの「AQOUS L2」も取り扱うようになり、いわゆるスマートフォン然とした機種を増やしている状況だ。

 このように見ていくと、J:COM MOBILEは、UQ mobileとうまくユーザー層のすみ分けができていることが分かる。この2ブランドに加え、プロバイダーとしての規模が大きく、ネット販売に強いBIGLOBEの3本柱で、他のMVNOやサブブランドに対抗していくというのがKDDIの方針になる。規模の上ではまだY!mobileや上位のMVNOには及んでいないが、春商戦ではその勢いを加速させている。

 ただし、auのサービスとは現状、まったく連携していない。田中氏が述べていたようなモバイルIDベースでの成長が達成できても、「au経済圏」の拡大には寄与しないため、今後は改善が必要になってくるだろう。そのときに向け、auのサービスを徐々にオープン化していく必要もあるはずだ。

●サブブランドの勢力拡大をけん制する動きも

 サブブランドという位置付けの危うさも、傘下のMVNOを拡大するうえで、もう1つの課題といえるかもしれない。現状の枠組みでは、大手キャリアが料金の安いサブブランドを持つことに対する規制は、特に存在しない。そもそも、総務省がMVNOを推進するのは、競争を通じて、大手キャリアの料金値下げを促すため。この政策の目的を考えると、安易な規制を設けるわけにはいかないはずだ。

 とはいえ、大手キャリアとは資本力の異なるMVNOにとって、サブブランドの台頭は脅威になることも事実で、不満がくすぶっている。特に、同じauからネットワークを借りるmineoは、auのサブブランドが勢いを増すと、死活問題になりかねない。ケイ・オプティコムでmineoの事業を統括する、モバイル事業戦略グループの上田晃穂氏は、MMD研究所が主催した勉強会で、「サブブランドについては、きっちり監督官庁に監視していただきたい」としながら、次のように語っている。

 「キャリア(MNO)と同じような速度を出しつつ、あれぐらいのテレビCMを打つと、MVNO事業が成り立たない。では、われわれとして何を磨いていくか。mineoにしかない特徴をきっちり出していきたい。お店(UQ mobileやY!mobileの強い家電量販店)に来ても、いろんな誘惑に負けず、mineoを買っていただくようにしなければいけない」

 こうした“サブブランド規制論”は、総務省の「電気通信市場検証会議」でも議題に上がっている。競争条件が公平でない点を、MVNO側が懸念するというものだ。

 ただし、これに対する総務省の対応方針は、「電気通信事業者の料金等が、不当な競争を引き起こすものとならないか等、引き続き注視していく」と述べるにとどまっている。サブブランドに課される接続料の単価は、他のMVNOと同じで、差別的な取り扱いにはなっていないため、行政にとっても介入しづらい側面はありそうだ。

 とはいえ、仮に議論が思わぬ方向に転び、規制が実現すると、サブブランドを中心に据えた戦略が大きく狂うことになる。リスクヘッジの意味でも、KDDIには、サブブランド以外のMVNOを“味方”につけるための施策が求められそうだ。

最終更新:6/10(土) 6:25
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