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ネットで話題の「注文をまちがえる料理店」に行ってみた

6/10(土) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」

 ガラスの開き戸に書かれた文言。宮沢賢治の寓話「注文の多い料理店」の一節だ。

 そのネーミングを意識したのか、都内某所で「注文をまちがえる料理店」なるレストランが先週末にプレオープンし、話題になっている。他の料理店とどこが違うのかというと、ウエートレスが認知症のおばあちゃんだということ。したがって、頼んだメニューと違う食事が運ばれてくる可能性もあり、実際プレオープン時には「ハンバーグ」を注文したのに、「餃子」が来たという場面もあったようだ。

 この模様がツイッターなどで紹介されると、友人から友人へ「注文をまちがえる料理店」という文言が拡散。ヤフーの急上昇ワードにも登場し、「僕も行ってみたい」「店はどこにあるの?」と盛り上がっているのだ。

 そこで店の場所とされる豊洲へ行ってみた。目指した先は、進退が揺れている豊洲新市場の真向かい。ところが、目に飛び込んできたのは「マギーズ東京」という看板のオシャレな外観の建物。レストランは別の場所で営業されていた。

 ここは約20年前にイギリスで誕生したがん患者と家族、その友人の支援団体で、料金は一切受け取らず、善意の寄付で運営されている。実は、その共同代表を務める女性が、今回の「注文を――」の発起人の一人になっているようだ。

 関係者に認知症患者のレストランをつくった経緯を聞いてみると、「がん患者と認知症の違いはあっても、自立支援という面では一緒。周囲のちょっとしたサポートで助かる人たちは意外に多い」と説明する。レストランはその実験店であり、福祉関連の団体や老人ホームとは無関係。趣旨に賛同した大手飲食店や料理人が協力の手を差し伸べ、厨房での調理はプロが担っている。本格的オープンはまだ先で、場所も未定だという。

 認知症患者は現在、予備群を含め860万人。2025年には、高齢者の3人に1人が認知症になると予測されている。その一方、認知症=厄介者の偏見は根強い。そう考えると、「注文をまちがえる料理店」の存在を聞くと、不思議とやさしい気持ちになってくる。

「日本は今、皆が競争でギスギスした雰囲気になっています。コンビニのレジで少し待たされただけで気分を害したり、他人の失敗を許さない風潮もあるかもしれない。もっと寛容な社会になってほしいという願いも、『注文をまちがえる料理店』には込められているようです」(前出の関係者)