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【BARKS編集部レビュー】初心を刺激する小さな巨人、final F3100

6/10(土) 12:09配信

BARKS

イヤホン熱にうなされ続けて何年経過しただろうか…早々に金銭感覚もぶっ壊れ、当初は「は?イヤホンで5000円?そんな高っけーの、買えねぇわ」だったのに、気付くと「え?5万円ですか、それは安いですね」という会話が普通になっていく。オタク気質のある人がドハマりすると常軌を逸しマニア域まで猪突猛進してしまうのは、どんな趣味分野でもありがちな事だけれど、「知見」を得るに従ってトレードオフしてしまうものもある。いわゆる「初心」というものだ。

◆final F3100画像

一番最初に感動したのは何だったか。今思えば、「感動」は、弩高級モデルのサウンドや質感、それを手にした物的満足感などではなく、「これはすごい、周りの音が聞こえない」といった“高い遮音性”や、「全く付けている感じがしない!」という“極上のフィット感”など、洗練された造形工学への感動がハジメの一歩だった。

そう、「いいイヤホン」とは「いい音がするイヤホン」だが、「いい音がするイヤホン」とは「高い遮音性」や「心地よいフィット感」「安定した装着性」「ケーブルノイズや風切り音の低減」など様々なファクターの総合技によって作り出されるもので、ドライバーから発せられる音質だけを磨き込んでも、“いい音と感じられる”イヤホンにはならない。「いいイヤホン」になる不文律などは存在しないけれど、初心を以ってポイントを炙り出せば、確信めいたキーワードはいくつか浮かび上がってくる。そのうちのひとつにあるのが“イヤホンにとって小ささは正義”というもの。まさにfinal Fシリーズを語るに不可欠な要素である。

“小ささは正義である”ことを確信したのは、クリプシュ X10の革新的な造形美とその使用感の素晴らしさに触れた時だった。非常に小さく耳孔にすっぽりと挿入することで、高い遮音を保つと同時に、鼓膜へのダイレクトな送音がサウンドのクリアさを担保してくれる。外耳道閉鎖効果が未然に防がれるという効能もあり、小さいというだけでこれまでにない様々なメリットを創出してくれたのだ。耳孔の奥深くまでズボッと挿入する行為は、慣れるまでは恐怖心すら感じるのだけれど、慣れてしまえば違和感もゼロ、もう他のイヤホンには戻れなくなる快適さだけが残る。何しろハウジングが細く小さいので、耳孔/耳甲介腔の小さな女性でも難なく使用できるのも魅力だと思った。

ちなみにコンパクトで耳孔深くまで挿入するものとしては、古くはER-4というエティモティック・リサーチ製のハイエンドイヤホンがその魁となるものの、業務用と言うべきマニアックなスペックと装着の難しさに高価格というハイエンドならではの三重苦を抱え、一般市場で認知されるような市民権を得るアイテムではなかった。

あれから数年、その間にもイヤホンにまつわる技術革新は次々と登場し、ドライバーの性能も年を追うごとに向上していく。そして2016年、満を持してfinal Fシリーズの誕生と相成った。そもそもシングルドライバーのフルレンジ設計で、洗練さとやんちゃさを融合させた心憎いサウンドデザインを得意としてきたfinalだけに、Fシリーズこそ「Finalの基本思想に根ざしたベーシックな設計を礎に、世の中をあっと言わせてしまえ的なFinalらしさが大いに発揮されたモデル」に見える。誰もが「うわ、小さっ」と驚き、見た目に反した極上のサウンドで「凄い音!」と感動する。そんなイヤホンマニアのリアクションを見てニヤニヤするFinalの茶目っ気が、このキュートな筐体に宿っている気がする。

FシリーズにはF7200、F4100、F3100の3機種があり、上位2モデルはケーブルが着脱できるがF3100はリケーブル不可という違いこそあるものの、サウンドの方向性は3モデルとも同じであり、F7200:49,800円(税込)、F4100:29,800円(税込)、F3100:19,800円(税込)という価格差を考えると、私のイチオシは迷うことなくF3100だ。そのサウンドはクリアでタイト、その上で元気さや無邪気な暴れ感も感じられ、「節度あるお祭り感」とでも言うか「ウザくないパワフル感」とでも言うべきか、とにかく楽しんで音楽が聞ける懐の深さがある。

もちろん上位機種のほうがサウンドクオリティは高い。ことF7200と比べて足りないと感じるのは「奥行き感」と「芳醇さ」、F4100と比べれば「低域ディテールの描画力」に違いを感じることができる。…のだけれど、それは静かなリスニング環境で神経を集中して聴き比べてみた時の話だ。実際使用するであろうざわざわした街中や、まして電車やバスの中では、とても聞き取れるような違いではないという意味でも、コストパフォマンスはF3100の圧勝だと思う。

適度なワイルドさはあるけれど雑味はなく、とてもバランスの取れたサウンドだけどお行儀のいい優等生ではない。いつも明るく元気でちょっとちょけるような、クラスによくいる憎めないお天気野郎な気配が漂う。これがファイナルらしさというと語弊があるかもしれないけれど、無難にしっぽりと落ち着くようなサウンドにならないところが、小さな巨人F3100の魅力だと思う。

適正なイヤーチップで耳奥まで差し込むのもよし、大きめのチップで耳孔入り口を蓋するような装着感もまたよし。低域の響きと高域の煌びやかさのニュアンスが変わるので、好きな装着感で心地よく音楽を楽しんで欲しい。もちろん耳の小さな女性や成長過程の中高生にもオススメできる。ダイナミックでメリハリの効いた溌剌とした鳴りっぷりが、こんな極小のハウジングから生み出されているんだから、やっぱFinalって面白いメーカーです。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

最終更新:6/11(日) 2:39
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