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社説[退位特例法成立]「象徴」像さらに議論を

6/10(土) 9:05配信

沖縄タイムス

 天皇陛下の退位を実現する特例法が9日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。自由党は採決を退席した。

 明治の旧皇室典範で確立された天皇の終身在位制は、戦後憲法の下でも引き継がれてきた。「逝去によらない代替わり」が実現するということは、近代天皇制に新たな歴史が刻まれることになる。

 天皇は戦後憲法の下で「国民統合の象徴」と位置づけられ、その地位は主権者である「国民の総意に基づく」とうたわれている。

 「総意」とは何か。「象徴」とは何か。「逝去によらない代替わり」をどのような方法で実現するのか。議論すべき論点は多かった。

 象徴天皇制について主権者が議論を深めるまたとない機会でもあった。

 だが、国会審議は衆参両院で各1日。事前に衆参両院の正副議長が調整に乗りだし、与野党が歩み寄ったこともあって法案審議はとんとん拍子に進み、あっという間に特例法が成立した。

 皇室典範そのものを改正すべきだという国民の多くの意見は、対立を顕在化させる、などの理由から採用されなかった。

 「一代限りの適用」という与党の主張を盛り込みつつ、皇室典範そのものの改正を求めていた野党に配慮し、政府は「先例になり得る」との見解を明らかにした。

 終身在位をうたった皇室典範の本則はそのままにして、特例法で一代限りの例外措置を認め、それは将来の先例になる、というのである。なんともわかりにくい。

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 昨年8月8日、国民向けに流れたビデオメッセージで天皇陛下が最も強調していたのは「象徴としての行為」だった。

 憲法は天皇の権能について、「国事行為のみ」を行い、国政に関与することはできない、と定めている。憲法学者の中には、天皇の行為を国事行為に限定すべき、だとの意見もある。

 有識者会議のヒアリングで、一部の専門家からは「お祈りくださるだけで十分」「いてくださるだけありがたい」との意見まで飛び出した。

 ビデオメッセージであきらかになった「象徴としての行為」は、いずれとも異なる。

 慰霊の旅や被災地訪問など国民に寄り添った公的行為は、多くの国民から高く評価されており、今上天皇は、こうした活動を通して自ら「象徴天皇像」をつくり出してきた、と言える。

 「象徴としての行為」とは何か。政治家も国民もそのような議論をしてこなかった。政治の動きは特に鈍かった。

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 政府は、2018年末の天皇退位、新天皇即位、19年元日の元号改正を想定しているといわれる。天皇と主権者の「双方向の関係」を望むのであれば、このような議論を避けて通るべきではない。

 衆参両院の委員会は、「女性宮家」の創設などを検討するよう政府に求める付帯決議を採択した。国会審議で置き去りにされた皇族の減少対策などについて、女性・女系天皇の可能性も含め、真剣な議論を始めるときがきている。

最終更新:6/10(土) 9:05
沖縄タイムス

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