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<登山届>義務化でも3割が未提出 長野県

6/11(日) 18:20配信

毎日新聞

 長野県は昨年7月、登山安全条例で登山計画書(登山届)の提出を義務化し、山岳遭難防止に力を入れている。しかし、義務化されてから今年3月までの221件の山岳遭難で亡くなった35人のうち、20人で登山届提出が確認できなかった。山岳救助関係者からは「義務化はしたが届け出の管理や指導の体制が整っていない」という声もある。

 山岳遭難では早急に登山届を確認することが捜索活動に必要となることがある。2016年5月4日、行方の分からなくなった北九州市の武居弘樹さん(22)。「今日はいい天気」と携帯電話からのメッセージが友人に届いた後、連絡が途絶えた。「長野の山に登ってくる」と残したのみで詳しい行き先はわからず、16日に大町市のタクシー会社からの通報で「高瀬ダム入り口」に向かったと判明。同入り口のポストから登山届が見つかり、烏帽子岳などを登る「裏銀座コース」を県警や山岳遭難対策協議会(遭対協)が捜索したが見つからなかった。武居さんの母は「登山届の管理や行方不明者の捜索方法に疑問を抱く」と話す。

 県山岳高原観光課によると、昨年7月から今年3月までに提出された登山届は約13万4000件で、前年同期間から約67%増加した。昨年夏に実施したアンケートによると、約70%が登山届を提出したと推測される。提出方法は県ホームページなどからのインターネット申請が約15%、登山口にあるポストへの紙での投函(とうかん)が約85%だった。山岳救助に20年以上携わる県警山岳安全対策課の宮崎茂男次長は「登山者が無理のない計画を立てて遭難を防ぐことにも意味がある」と届作成の有効性を語る。

 遭難時、ネット申請がされていれば名前を検索することで届の確認ができる一方、紙での提出はポストから回収する必要がある。県内122カ所のポストからの定期的な回収は1週間から1カ月に一度。県警は、遭難した本人から携帯電話で通報があれば登山届を使わずに捜索することができるが、電話がないときは届を確認する必要があり、紙での提出だと初動が遅れることもある。

 岐阜県では14年、北アルプスや活火山周辺などで登山届を義務化。未提出者には過料が科せられることもある。岐阜県防災課によると、18カ所の登山口ポストへの提出が約9割。長野と同じく紙での提出が大部分だが、管理を徹底して遭対協が毎日、回収するため、紙での提出でも捜索の初動が早い。人気の登山口では県職員が立ち、登山届提出を確認する。遭対協もルートや日数、装備に無理がないかの指導を行うなど、積極的に遭難防止に取り組む。

 岐阜の7倍近い122カ所で登山届提出義務がある長野で同様の体制の整備は難しいのが現状だ。そのため、県山岳高原観光課の担当者は「ネット申請だと一元で管理でき、捜す際に時間が短縮できる。回収の労力も削減できるため、紙からネットへの移行を進めていきたい」。安全な登山のため、インターネットでの登山届提出を呼びかけている。【島袋太輔】

最終更新:6/11(日) 18:20
毎日新聞