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「また不在。もう3度目だよ」タブーの配達も 労働者に国境なし 外国人も売り手市場に

6/11(日) 6:20配信

西日本新聞

 常に駆け足。そうしないとノルマを果たせない。最高気温が25度を超えた5月の夏日、福岡市の住宅街に大手運送会社の制服を着た青年の姿があった。残業代未払い問題を機に、人手不足の厳しい実態が露呈した宅配業界。彼の額にも苦労の汗がにじむ。

 青年と擦れ違った住人が足を止めた。顔つきが日本人とちょっと違う。ベトナム人留学生、ホアンさん(28)=仮名。日本人運転手とペアで担当エリアへ出向き、荷物をトラックから台車に積み替え、2人で手分けして配達している。

 住所が読めない、住人に不審がられる…。宅配業界では、外国人に倉庫での仕分け作業はさせても、配達はタブーとされてきた。ホアンさんが所属する営業所の所長は「求人を出しても日本人は集まらない」と、人材会社から外国人約40人を派遣してもらっている。

 ホアンさんは日本語が得意な方で、たとえ読めない字があっても「何度も同じ場所に届けたので覚えた」という。営業所長からの評価も「日本人と能力差はない」。配達・集荷のノルマは2人で1日約400件。「また不在。もう3度目だよ」。愚痴も、ため息も、日本人と何ら変わらない。

 単純作業や補助的役割が主だった外国人労働者が、表舞台へ-。近未来、当たり前の光景なのかもしれない。

労働者に国境なし 外国人も売り手市場に

 常に重労働。もうやっていられない。福岡市郊外の大手運送会社で働くネパール人留学生のビカシュさん(23)=仮名=は仲間5人で日本人社員に詰め寄り、賃上げを要求した。

 昨年12月、西日本新聞のキャンペーン報道「新 移民時代」の第1部「出稼ぎ留学生」で取り上げた会社だ。従業員の8割を外国人が占め、主に荷物の仕分けを担っている。

 ビカシュさんも第1部に登場した。大型家電が入った箱ともなれば、重さは数十キロになる。1時間に2千個をさばき、腰に湿布を貼って作業を続けてきた。その対価が月に11万円。

 確かに母国だと大金に相当する。そうした感覚に経営者も便乗し、留学生や技能実習生を雇う職場の多くでは賃金が低く抑えられてきた。「俺たちがいないと現場は回らないのに」

 要求は拒否された。4月に職場を去り、自宅近くのコンビニでアルバイトを始めた。「エアコンが効いて通勤しやすい。月給も1万円しか違わない」。その後も運送会社では、ネパール人がより良い待遇を求めて続々と辞めているという。外国人労働者に売り手市場の時代が到来しつつある。

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最終更新:6/11(日) 6:20
西日本新聞