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【ラグリパWest!】 神戸製鋼でさらなる成長を 新人ユーティリティ・バックス 重一生(しげ・いっせい)

6/11(日) 17:35配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

 重一生は社会人になった。
 関東から関西に戻ってきた。

 衝撃を呼んだのは大阪・常翔学園時代。
 抜きんでたパワーでタックラーを跳ね飛ばし、2年連続で高校日本代表に選ばれた。第92回全国大会では優勝も経験する。
 帝京大では8連覇の中にいた。
 卒業後の進路は神戸製鋼に定める。
 大阪・吹田(すいた)ラグビースクール時代からヒーローはCTB元木由記雄であり、WTB大畑大介だった。

勝利の理由。圧倒しきれなかったワケ。ジャパン、ルーマニア戦後の言葉。

 2017年度チーム初戦、6月11日の宗像サニックスとの招待試合(神戸ユニバー、14時30分キックオフ)では、CTBの控えとしてベンチメンバーに入る。
 入社2か月での初陣に笑みがこぼれる。
「楽しみです。自分としては初めてのトップリーグの試合。現時点でどのレベルにいるのか、どこまでできるのかが分かります」
 笑うと目がなくなるほど細くなる。

 社内の肩書は社員である。プロではない。
「選手を引退したあとのセカンドキャリアとして、例えば教員なんかのライセンスを持っていたとしても、社会の仕組みやお金の回り方を知らないと失敗すると思うのです」
 流行りに飛びつかない意思がある。
 ラグビー部広報担当の中山光行は話す。
「自分の考えを表現できます。しっかりしている。性格もいいしね」
 すでにチーム内の評価も高い。

 4月1日の入社式から5月31日までの2か月間は約140人の院卒、大卒の同期とともに新人研修を受けた。
「ビジネス文書の作り方、マナー、電話の対応、来客への接し方、会社訪問の仕方、ロジカル・シンキング(論理構築)などを学びました。印象的だったのはコミュニケーションは発信するだけではなく、受信するのも大切だということでした。目を見て聞く、うなずく、相づちを打つ、などです」
 新入社員としてはもちろん、ラグビー選手としても必要な学びを吸収する。
 配属はもの作りの最前線、「しんてつ」と呼ばれる神戸製鉄所の経理室になった。灘浜のグラウンドへは歩いて15分ほどで着く。

 本格的なチーム合流は6月1日。それまでは、研修の合間に走ったりしていた。
 トレーニングに参加して思う。
「1つ1つの練習の質が高いし、先輩方の集中力がすごいです。きびきびしています。人数が少ないのでテンポも早いし、選手の中でもラグビーに対する温度差がありません」
 レベルの高さを肌で感じている。

 171センチ、87キロの重はユーティリティ・バックスだ。高校時代はSHをこなし、大学ではCTBやFBとして2年から公式戦を戦った。
「自分の中ではCTBとFBの2本立てでいきたいです。コンタクトが好きで、それが長所だと思っているので、その部分が一番生かせるポジションではないかなと思います」

 ベンチプレスのMAXは175キロ。フルスクワットは200キロを上げる。
「今日は『胸を鍛える』と決めたら、1時間半くらいずっと胸に絡んだトレーニングをします。最初の重さでできなくなったら、徐々に落としてやり続けます」
 常翔入学時、ベンチプレスは40キロしか上がらなかった。奮闘は数字に証明される。

 重の体は各関節をひもでしばったようだ。筋肉は盛り上がる。ふくらはぎ、太もも、二の腕、前腕ははちきれそう。
 両親は鹿児島の奄美大島出身。
「お母さんは学校でバタフライの県の記録を作ったと聞いています」
 サモア、トンガ、フィジー、ハワイなどに生きるポリネシア人の起源は台湾とされる。そこから北上すればすぐに奄美、沖縄など南西の島々。重自身は大阪で生まれ、長期に渡る島暮らしはない。しかし、小柄の部類ながら驚嘆する力強さは、島人の良血をその肉体にとどめ置いているように見える。

 先天的な素材と後天的な努力を掛け合わせる中で、重は深紅のチームでの抱負を語る。
「日本一に貢献したいです。そのためには、上の人たちと同じくらい熱い気持ちで取り組みたいです。個人的には、スタートメンバーに定着するようにしたい。その上でサンウルブズに呼ばれるようになればいいですね。2年後にはワールドカップがありますから」

 ただし、正選手への道は険しい。
 CTBには日本代表キャップ39を持つ今村雄太がいる。サニックス戦のスタメンはパスなど巧さが光る南橋直哉とパワフルな走りが魅力のトニシオ・バイフだ。
 FBには34歳のベテラン、正面健司がSOから回ることが考えられるし、スピードとキレのある井口剛志もいる。同期の森田慎也(京都産業大出身)はキャップこそ獲得できなかったが、4、5月のアジアラグビーチャンピオンシップで日本代表に選ばれた。
 重にとってはこれから起用される試合、そして練習すべてが栄光へのトライアルになる。

(文:鎮 勝也)