ここから本文です

巡礼路の出会い…感じた縁を形に 長瀞出身のカメラマン、写真集出版

6/11(日) 10:30配信

埼玉新聞

 巡礼路での出会いが人生を変えた―。スペインの巡礼路を約1カ月間かけて約900キロを歩き切った埼玉県長瀞町出身のカメラマン鈴木大喜さん(28)。フィルムカメラ1台を手に携え「直感で撮った」という約80点が収められた写真集「Camino de Santiago(カミーノ・デ・サンティアゴ=サンティアゴの道)」が出版される。

 鈴木さんは大学卒業後からカメラマン志望だったが、写真業を続けるかどうか悩んでいた。強烈な日差しが降り注ぐ巡礼路をひたすら歩いたのも「思い出に残すぐらいの感覚だった」。

 巡礼路で出会いが人生を変えた。あるオランダ人夫婦は事故で24歳の息子を亡くし、何も手に付かないまま巡礼路を歩き始めた。鈴木さんを「亡くなった息子のようだ」と優しく接してくれた。

 旅の最終日、その夫婦と偶然再会。スペインの海岸からバスへ乗り込む直前だった。「私たちはまた君に会えると思っていた。世界のどこにいてもまた会える」。夫婦に抱きしめられ鈴木さんの目にも光るものがあった。

 「世界中から集まった巡礼者たちの笑い声、人が人を呼び、温かくて永遠にこの時間が続けばと思えるほどの素敵な出会いと空間がそこにあった」

 帰国後、フィルムを現像すると美しいハレーションや独特のグラデーションが浮かび上がった。千年以上の歴史を持ち、世界中の巡礼者たちが集う欧州最大の巡礼路。「カミーノという道が撮らせてくれた」。写真を眺め「なんとか形にしたい」と表現者として原点に立ち返り、出版を決意した。

 現像した初日の写真にオランダ人夫婦がたまたま写っていたのには、ただならぬ縁を感じたという。「会う人には何度も会う。フィーリングを大切にして、その一瞬一瞬の直感を大事にしたい」

 「これまで自由に生きてきて周りには心配をかけた。世の中に一つ形として出せたことで感謝を示したい」と鈴木さん。「スペインの巡礼路で出会った人々の温かさ、美しい風景などを一人でも多くの方々に共感し、人生の幸せを感じてほしい」



 出版記念の写真展が13日から19日まで、セルバンテス文化センター東京(千代田区六番町2の9)で開かれる。詳細はホームページで。

■カミーノ・デ・サンティアゴ

 キリスト教聖地への巡礼路の一つ。フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーを起点にピレネー山脈を越え、スペイン北部を東から西に横断。12使徒の一人、サンティアゴ(聖ヤコブ)が祭られているサンティアゴ・デ・コンポステーラに至る。1993年、ユネスコの世界遺産に。

■すずき・だいき

 1988年長瀞町生まれ。松山高出。高3時代は野球部のエース。大学卒業後、バンタンデザイン研究所で写真を学び、マガジンハウスのスタジオ勤務を経て、単身渡米。帰国後、フリーカメラマンに。

最終更新:6/11(日) 10:30
埼玉新聞