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淵上泰史、挫折と下積みを経て“怒りと感謝”がバネに 遅咲きの役者道を力強く邁進

6/11(日) 16:20配信

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 淵上泰史が『ダブルミンツ』で映画初主演を務めた。ドラマ『恋がヘタでも生きてます』でも、色気あふれる魅力で注目を集めている彼。俳優デビューは27歳、現在33歳で映画初主演を果たしたとあって遅咲きとも言えるが、長い下積み時代にも「諦めようとは一度も思ったことがなかった」のだとか。その原動力となったのは何だったのか。静かな佇まいからは想像もつかない、熱い言葉が飛び出す。

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 本作は中村明日美子の同名コミックを原作に、高校時代に主従関係となっていた光夫(淵上)と光央(田中俊介)が、犯罪の世界へと堕ちていく姿を描く衝撃の愛の物語。二人のミツオの深い愛を描き、ボーイズラブの傑作と言われる原作に挑むこととなったが、「僕はあまりBLとは思わなかった。ただ惹かれ合った者が男同士だっただけ」と躊躇なく受け止めた。それは、相手役の田中と紡いだラブシーンも同じ。「『にがくてあまい』という映画でも林遣都くんとキスしています。相手が男性だと思い切りやれる部分もありますが、女優さんだと気を遣うものなので…」。

 闇を抱えた光央に、従順に尽くす光夫。「コインの裏表のよう」と表現する関係性の、“白ミツオ”と呼ばれる光夫役。「淡々としていつつ、心は揺れ動いている。抑えて、押し殺した表現の中でいかに光夫として現場に立つか。難しい役でした」と難役となったが、「田中くんは一生懸命でとても真面目。必死に役を掴もうとしていた。僕も同じように必死。撮影もハードで、内田(英治)監督も休憩時間にはソファーで寝てしまっている時もあって(笑)。いい現場だなと感じた」と誰もが本気を注いだ現場に、充実感もたっぷりだ。

 映画初主演にも「特に浮き足立つこともなかった」と告白する。「人気原作で難しい役ということも、もちろん緊張やプレッシャーはありましたが、バタバタしてもしょうがない。気合を入れて臨んで、堂々と思い切りやろうと思いました」とあらゆることを受け入れる懐の深さを感じさせる。

 もともとはプロサッカー選手を目指し、ガンバ大阪のユースチームに所属していた淵上。「プロになりたいという目標があったので、一人残って自主練習したり。僕は天才肌ではないから、人と同じことをしていてはいけない。努力して足りない部分を補おうとしていました。そういうやり方が身に染み付いているかもしれません。それは役者になってからも同じ。作品をよくしたい、いい役者だと思ってもらいたいという目標があるから、必死になれる」。


 スポーツで培った粘り強さとともに、彼を突き動かすのが「見返してやりたい」との反骨精神だ。「サッカーでプロになれなかった挫折もあるし、役者を目指してデビューできるまでにも7年かかっています」とデビューまでには裏方やバイトをしてきた苦労人。「地元に帰った方がよいとか、実家の家業を継がないのかなど、自分の人生を決めつけるような言葉をかけられることもあって。ものすごく怒りがありました」と辛いことだらけだった。

 「そういう人たちを見返すためには、いい役者になるしかない。役者を目指しても何も出ていないわけですから、陰で親も色々と言われていたと思います。それでもじっと堪えて応援してくれた。そういう7年間の思いが積み重なると、絶対に諦めるわけにはいかないと思った」と悔しさをバネに走り続けた。

 そんな彼にとって大きな出会いとなったのが、デビュー作となった映画『軽蔑』の廣木隆一監督だ。「『軽蔑』には方言指導として入って、“舎弟B”という役をいただいて。廣木監督は僕をゼロから見てくれている方。2年前、“ヤス、焦るな。大丈夫だ”と声をかけていただいたんです。どこか前のめりになっているのが見えたんでしょうね。そういう人がいるのは本当にうれしいこと。『ダブルミンツ』の撮影中に実は、母が亡くなったんです。母にも僕の主演映画を見せたかったし、見てくれている人のためにもひとつひとつ、まだまだ結果を残していかなければいけないと思っています」。

 優しい微笑みの一方、役者への思いを語る目はギラギラと熱い。辛い経験を乗り越えてきた男は色っぽい。「生き様が顔を作る」と実感させてくれる彼のこれからが、ますます楽しみだ。(取材・文・写真:成田おり枝)

 『ダブルミンツ』は全国公開中。

最終更新:6/11(日) 16:20
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