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水田で県開発無花粉スギ量産 国助成受け普及推進

6/11(日) 4:55配信

北日本新聞

 優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の苗木を水田で大量生産する方法を、県森林研究所(立山町吉峰)が考案し、国の支援を受けて全国への普及を目指すことになった。畑やハウスで育てる従来の手法より手間がかからない上、苗の成長が早く、休耕田の有効活用や農業者の所得アップも期待できる。第68回全国植樹祭で天皇陛下がお手植えされた“花粉症の救世主”の増産に弾みがつきそうだ。 (政治部・浜田泰輔)

 「森の輝き」は県が全国で初めて開発した花粉を全く飛ばさないスギで、現在は立山町と魚津市で年間4万本の苗木を生産している。種をまいてから出荷まで3年かかり、生育段階に応じた苗の植え替えや、頻繁な水やり、草むしりなど栽培には大きな労力を要する。今の態勢では大幅な増産は難しく、作業の効率化と新たな生産者の確保が課題になっていた。

 森林研究所の斎藤真己主任研究員は昨年5月、立山町の休耕田を使って苗を水耕栽培する試験に乗り出した。シートで覆った150平方メートルの田んぼに水を張り、底の開いた筒状の容器に入れた約4千本の苗を浸した。10月まで農業用水を掛け流し、その間、水の管理は特にしなかった。

 20センチだった苗は、半年で70センチ前後に伸びた。ハウスで栽培する場合に比べて、成長スピードは1・5倍に上った。ハウスでは途中で1割ほどが枯れてしまうのに対し、水田では98%が健全に育った。試験に協力した稲作農家の岡本敏光さん(70)=立山町東中野新=は「コメを作るより簡単だった。これなら誰でも栽培できる」と話す。

 今年は富山市の沿岸部にも試験ほ場を設けた。2カ所で水温や肥料の量などを変えることで、苗の生育に最も適した条件を探る。従来より栽培期間を1年短縮する技術の確立を目指す。

 無花粉スギの生産効率を飛躍的に高め、休耕田の有効活用にもつながる点が評価され、研究は農林水産省の補助事業に採択された。本年度から3年間、新たな無花粉スギの開発や生産の省力化に取り組む国内八つの研究機関などと共に、年間2千万円の助成が受けられる。

 森の輝きの苗木は現在、1本330円で販売されている。水耕栽培の技術が確立されれば、10アール当たり年間3万本の生産が可能になり、農業者にとって大きな収入源になることが期待される。

 県は、森の輝きの出荷量を20年に10万本、26年に20万本に増やす目標を掲げている。斎藤研究員は「あと数年で挿し木でも増やせるようになる。水耕栽培と組み合わせて苗木を効率的に量産できる態勢を整えたい」と話している。

北日本新聞社

最終更新:6/11(日) 4:55
北日本新聞