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「応仁の乱」30万部ベストセラー!なぜウケるのか

6/11(日) 12:06配信

日刊スポーツ

<社会班厳選:キャッチアップ!トレンド>

 中公新書「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」(著者呉座勇一)が売れている。昨年10月に出版されて以来、約30万部を突破するベストセラー。新刊の歴史解説書としては異例の勢いだ。中学の歴史の教科書で必ず出てくる内乱だが、詳しく解説できる人は少ないはず。1467年から約11年続き、戦国時代へと流れる歴史的転換点が、550年後の今になってなぜ受けているのか?

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 想定外の売れ行きに、著者の呉座(ござ)勇一氏(36)ですら驚いている。「2万~3万部売れればいいと思っていました。応仁の乱は現代と同じで、先行き不透明で混迷な世相が受けたのかも知れません」と分析する。

 「人の世、むなし」などと、語呂合わせで応仁の乱の発生年を暗記した人も多いだろう。屋台骨の傾いた室町幕府8代将軍・足利義政の弟義視(よしみ)と、義政と正室日野富子との間に生まれた義尚(よしひさ)の後継者問題、双方を後押しする有力守護大名の対立、守護大名畠山(はたけやま)家の跡目争いなどが絡んで、京都の東西に分かれて戦乱は始まる。

 東軍総大将の細川勝元も、西軍山名宗全も乱世には不向きだったため、11年間も争うことになる。都は荒れ果てる。戦乱は地方に拡大し、有力な守護大名の家すら危うくなり始める。家来の裏切りや内紛は当たり前。庶民の土地争いや食糧の略奪まで起こり、何でもありになる。

 呉座氏の研究によると、山名宗全は当初、畠山家の猛将、畠山義就(よしひろ)を味方に付けて短期決戦で東軍を倒すと思っていたらしい。読みは浅く、東軍の思わぬ抵抗に遭う。どちらも決定打に欠ける。スッキリした結末もなく、勝者不在のまま混乱が混乱を呼び、戦国時代に至る。

 このグダグダ感、どこかの国と似ている。「埋蔵金はある」とか「行財政改革は火だるまになってもやる」とか、有言不実行の首相がいて、現在の安倍内閣になる前は、1年ごとに政権が交代した。70年前は太平洋戦争でも数々の失敗を繰り返した。

 「応仁の乱の当事者もプランがずさん。ゴールに向かって脚本が描けていない。ダメならどうするか考えず、読み違えた後の軌道修正もなし。長期的な視野もない。人のふり見てわがふり直せの反面教師が、この本です」(呉座氏)。

 源平合戦、関ケ原、戊辰戦争など、日本の歴史上の主な戦乱は、決着がついている。勝ち組には必ず源義経、徳川家康、坂本龍馬らのヒーローが出現し、新たな時代を切り開いた。

 「世の中、偶然かもしれない英雄の華々しい成功例を参考にして、勝利の方程式を編み出そうとする。そうではなく、原因が明確な失敗にこそ学ぶべき」(呉座氏)。元プロ野球監督の野村克也氏の「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」という言葉も、引き合いに出した。

 最後にあえて勝者を探すとすれば?

 呉座氏は、「守護大名の家来で下克上を果たした織田、朝倉などの戦国大名。その勝ち抜き戦の頂点に立ったのが、家康」と言う。スポーツの世界なら、ピークが過ぎたベテランから若手が主力の座を奪い取ったようなもの。さらに付け加えた。「真の勝者は、(発生から)550年後に出現した呉座勇一ですよ」。いたずらっぽく笑った。

 ◆呉座勇一(ござ・ゆういち)1980年(昭55)8月26日、東京都練馬区生まれ。東大文学部卒。同大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。文学博士。専攻は日本中世史。昨年10月から京都市西京区にある「国際日本文化研究センター」助教。著書は「一揆の原理」「戦争の日本中世史」など。

最終更新:6/11(日) 13:02
日刊スポーツ