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小澤さん、水戸で10月「第9」

6/12(月) 4:00配信

茨城新聞クロスアイ

世界的指揮者の小澤征爾さん(81)が率いる水戸室内管弦楽団(MCO)が、10月の第100回定期演奏会(定演)で、ベートーベンの「交響曲第9番」(第9)に挑むことになった。「第9」と言えば、70人を超すオーケストラと4人の独唱、4部合唱で構成する大編成が一般的。少人数の魅力を打ち出してきたMCOにとって、節目の定演は画期的な試みとなる。「人類の連帯」を歌い、クラシックの最高傑作とも称される「第9」。室内楽が紡ぐ壮大な世界に期待が高まる。 (報道部・沢畑浩二)

■回重ね、自信に

5月中旬に開かれた水戸芸術館(同市五軒町)の事業説明会。同館長でMCO総監督の小澤さんは、第100回記念定演(10月13、15日)に「第9」を選んだ思いを語った。

「近年、このオケ(MCO)でベートーベン交響曲に取り組んでいるが、当初、『第9』は別物と考え、演奏する気はなかった。ただ、回を重ね、団員たちとともに、水戸芸術館の小さなホールでもできるという自信が湧いていった。ステージの広さに合ったコーラスの規模や楽器編成を研究し、結論に至った」

大型音楽ホールでの演奏会が一般的な「第9」だが、小澤さんはかつて、同館コンサートホールATM(最大680席)よりも小さなホールで指揮したことがある。長野県山ノ内町の奥志賀高原「森の音楽堂」(300席)が1991年1月に開館した際、こけら落としで演奏した。

「あの時は、水戸(MCO)のような小さいオケをわざわざ結成した。合唱は30~40人、日本でも指折りのソリストを招いたと記憶している。皆が乗りに乗って演奏したよ」。小澤さんは感慨深げに振り返った。

■2人の指揮者 

実際、どのような編成で「第9」に挑むのか。

同館の構想では、ソリスト4人、4部合唱は32人。弦楽器は通常の定演とほぼ同じで、バイオリン13人、ビオラ4人、チェロ4人、コントラバス2人。管楽器と打楽器は通常より増え、オケ全体では指揮者を含め50人弱になる。

指揮は、小澤さんと、ホルンの名手でもあるラデク・バボラークさん(チェコ出身)の2人が務める。第1・2楽章はバボラークさんが、第3・4楽章は小澤さんが担う。「本当は1人で全部やりたいが、体力的に自信がない。そこでバボラークさんに半分お願いすることにした。世界的にもまれなケース。苦肉の策だった」(小澤さん)

だが、同館音楽部門の中村晃芸術監督は「バボラークさんは指揮者としてもMCO内で実績があり、小澤さん自身がそこを認めている」と指摘。「前半で指揮をした後、後半ではホルン奏者として再びステージに立つことになる。二つの才能をぜひ味わってほしい」と力を込める。

■平和と友好  

「第9」は、第4楽章(合唱)の主題部分が「欧州連合(EU)の歌」に定められるなど、「人類の連帯」の象徴にもなっている。先の仏大統領選では、親EUの中道系マクロン氏の勝利を祝い、「EUの歌」として流れた。定演は、水戸から世界に発信する平和と友好のメッセージと捉えることができる。

中村監督は「MCOが紡ぐ素晴らしい音楽を水戸芸術館の観客だけでなく、多くの人と共有できる取り組みをしていきたい」と強調する。

小澤さんが指揮を務めるMCOのチケットは、毎回、入手が困難だ。生で聴けないファンのためにも、演奏会と併せて、機運を高める催しをぜひ企画してほしい。

★交響曲第9番(ベートーベン)

初演は1824年、ウィーンで行われた。第1~4楽章で構成され、第4楽章に4人の独唱と混声合唱を取り入れている。合唱の歌詞は、人間愛や平和を主題としたシラーの詩「歓喜に寄す」が用いられている。演奏時間は通常70分前後。日本では演奏会が師走の風物詩となっているが、欧米では歳末を意識して演奏されることはない。

茨城新聞社