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牛乳1瓶千円! それでも売れる理由「そもそも牛乳はぜいたく品」 牧場主の「這い上がり人生」

6/17(土) 7:00配信

withnews

 1本1188円(税込み)の牛乳があります。岩手県の山中で自然放牧を営む「なかほら牧場」の牛乳です。経済合理性を無視し、業界の常識に逆らって、30年以上。7年前からはIT企業と連携し、東京に店を出して、売り上げを伸ばしています。こだわりの味と、どうしてこんな値段になるのか、秘密に迫りました。(朝日新聞記者・岩井建樹)

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あれ? 思ったより濃くない

 さっそく東京・銀座にある専門ショップで、1本(720ミリリトル)を購入し、飲んでみました。あれ? 思ったより濃くない。飲んだ瞬間は、さらりとしていますが、あとで甘みが口に広がりました。牛乳が苦手だという同僚にも飲んでもらうと、「嫌なしつこさを感じない」と言います。

 なかほら牧場は、アニメ「アルプスの少女ハイジ」のような世界が広がる牧場です。岩手県盛岡市から車で2時間。岩泉町の標高700~850メートルの山中にあります。24時間365日、約100頭の牛が山を自由に歩き回り、気ままに暮らしています。

 牧場長は、酪農界のアウトサイダーと呼ばれる中洞(なかほら)正さん(64)。話を伺いました。

「ジュースと同じ価格のほうがおかしい」

――なぜこんなに高いんですか
 
 金額だけを見たら確かに高く思えるけど、食品の本質を考えたら、私は高いと思ってないよ。逆に問いかけたいのは、『生き物である牛がつくった乳が、ジュースと同じような価格で売られているほうがおかしいと思わない?』とういうことなんだ。

 一般の牛乳より高いのは、なかほら牧場では効率を求めず、自然放牧を営んでいるからだ。エサは山に自生する草や木の葉で、農薬や化学肥料は使っていない。受精や分娩(ぶんべん)も牛まかせ。糞(ふん)は、草や木の肥やしとなり、循環していくんだ。

「牛乳は工業製品じゃない」

――牧歌的な世界ですね

 同業者からは、「遅れている」「非効率だ」と、批判されてきた。でも、牛乳は工業製品じゃない。家畜であっても幸せになる権利がある。なにより、動物から乳や肉、卵というイノチをいただく以上、その家畜は健康でないといけない。人にとっておいしくて健康にいい牛乳は、幸せな牛から搾れるというのが私の信念だ。

 かつては、いまのようにスタッフがおらず夫婦で牧場を営んでいた。私の妻の陣痛が始まったときには「もう少し待っていろ」と言って搾乳が終わってから、1時間かけ車で病院へ向かった。病院に着いたら30分で無事に生まれたよ。

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最終更新:6/17(土) 7:00
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