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米WD、買収額2兆円に増 譲歩案再提示へ 東芝メモリ経営権が焦点

6/13(火) 8:15配信

SankeiBiz

 東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐり、提携先の米ウエスタン・デジタル(WD)が新たな買収の譲歩案を提示する方向で調整に入った。官民ファンドの産業革新機構などの「日米連合」に合流する際の買収額を2兆円規模に引き上げることなどを検討する。ただ、日米連合側はWDが将来の経営権取得を視野に入れることに難色を示しており、調整がまとまるかも含め、買収交渉の行方は流動的だ。

 「努力をしていると思うが、なかなか難しい」

 東芝関係者は9日にWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)と東芝の綱川智社長の会談で、WDから示された譲歩案についてこう述べた。

 関係者によると、WDの譲歩案は、革新機構と日本政策投資銀行、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が組む連合への合流を前提に、買収額を2兆円弱に引き上げ、WDは社債の形で資金を拠出するという内容だったという。従来の買収提示額は日米連合が1兆8000億円程度、WDはそれより少なかった。WDは売却先に選ばれれば、国際仲裁裁判所への東芝メモリの売却中止の請求を取り下げる意向だ。

 WDは当初、東芝メモリの株式の過半取得にこだわってきた。一方、東芝は、WDの半導体メモリー市場での影響力が強まるため、各国での独占禁止法の審査が長期化すると懸念。WDが従来の主張を取り下げて株式を取得せず、独禁法の審査が通りやすくなる案を示したのは、議論の前進ともみられる。

 ただ、東芝は会談後「買収成立の確実性への懸念は払拭されなかった」とコメントを出した。日米連合の関係者も「話にならない」と切って捨てる。一定の譲歩案が示されたにもかかわらず、関係者が難色を示すのはなぜか。

 背景には、WDが東芝メモリの経営権取得をあきらめていないことがある。買収時の株式取得は断念したが、将来的にWDと東芝メモリの合併を視野に入れているという。着地点がWD傘下の前提であれば、日本企業の技術革新を投資目的とする革新機構も出資に動きづらく、政府も認めにくい。

 WDは今週にも新たな譲歩案で、東芝が求める2兆円に沿った買収額を提示する意向だ。だが、他陣営に比べ見劣りする金額の上積みが決定打になるかは不透明だ。日米連合関係者は、WDとの共同買収について「WDが将来的にも少額出資か、ぎりぎり50%出資で譲る形であればあり得る」と強調。ぎりぎりの駆け引きが続きそうだ。

 東芝はWDの再提案を確認した上で、15日にも東芝メモリ売却の優先交渉先を決めたい考え。買収額2兆2000億円程度の好条件を示す米半導体大手のブロードコムが有力視されるほか、米ファンドのベインキャピタルと韓国SKハイニックスの連合、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業も巻き返しを狙う。政府内では革新機構や政投銀を他の陣営に乗り換えさせる案も取り沙汰されるなど、売却をめぐる動きはなお曲折がありそうだ。

最終更新:6/13(火) 8:15
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