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東京23区の隅っこに住むならどっち? 成増VS. 千歳烏山

6/12(月) 7:20配信

ITmedia ビジネスオンライン

 東京23区は、行政区域では市町村ではなく「特別区」というものである。市に準ずる基礎的自治体であり、行政サービスなどはそれぞれの区が行っている。サービス内容については各区でばらつきがあり、待機児童が多い区などもあるものの、基本的には横並びである。

【対決! ライバル駅】

 だから、特例を除き、どこの区に住んでいてもだいたい同じようなサービスが受けられる。例えば、ごみ収集袋。23区以外では有料のところも多く、かつ市町村によって値段が違うのだが、23区にはそういったものはない。そのほかに新聞も、23区ではすべて東京本社版の最終版を読むことができる。『朝日新聞』や『読売新聞』は、23区以外でも最終版を読める地域もあるが、『産経新聞』にいたっては23区でないと最終版を読むことはできない。最終版の締切時刻は、午前1時15分だと言われている。

 特別区は、市町村に比べて権限が小さい一方、そのぶん各区で均等なサービスが受けられるだけではなく、地方の市町村に比べても行政サービスがよい場合が多い。鉄道も23区が、とは一概に言えないが、都心に近い地域のほうが終電は遅い傾向にある。

 また、23区に暮らしていることで、仕事を見つけやすい、という場合もある。住所に「市町村」が付いていると、「ちょっと遠いな」と23区にある企業の採用担当者からは思われる可能性があるからだ。やはり、23区のメリットは多い。しかし、家賃は高い。

 そこで、23区の隅っこに暮らそう、と考える人もいるだろう。23区の隅っこで、ちょうどよさそうな街で探すと、板橋区にある東武東上線の成増駅と、世田谷区にある京王線の千歳烏山駅がある。

●2路線が使える成増、2大ターミナルへ行ける千歳烏山

 成増駅も千歳烏山駅も交通の便のいい街である。成増駅は快速、急行、準急が停車し(東武では快速のほうが急行よりも停車駅が少ない)、普通列車の始発駅でもある。成増駅から快速、急行、準急に乗ると、次は終点、池袋駅。また、普通列車の始発駅なので、座席に座って池袋方面へ行ける。池袋駅には東武百貨店やルミネなどの大規模商業施設があり、買い物にも便利である。私鉄地下鉄など、5線乗り入れており、各主要駅にも容易に行くことができる。

 また、成増駅にほど近い、東京メトロの地下鉄成増駅からは、副都心線方面や有楽町線方面へ向かうことができる。

 これには意外なメリットがある。東京メトロは都心に広く路線網を有しているため、比較的割安なメトロの運賃で都内のさまざまなところへ向かうことができる。それゆえにお財布にも優しければ、人を雇う企業にとっても交通費が少なくてすむ。雇用の形態で交通費が支給されない場合にもメリットは大きい。

 23区の隅っこであっても、東京メトロにダイレクトにアクセスできるというだけで、これだけいいところがあるのだ。2つの路線を使い分けることにより、成増の利便性は増すであろう。そんな成増駅の乗降人員は、5.8万人(2015年度)。地下鉄成増駅は、4.9万人(2015年度)。成増駅は2面4線の駅であり、普通列車の発着と、快速などの停車とうまく使い分けられている。地下鉄成増駅は1面2線である。

 では、ライバルの千歳烏山駅は、どんな駅なのだろうか。ホームは2面2線であるものの、準特急以下のすべての列車が停車する。なお特急は停車しない。それゆえに、乗降できる列車は多い。乗降人員は7.8万人である。

 千歳烏山駅は、成増のように2つの路線を使えるわけではない。しかし京王線で新宿に行くこともできるし、明大前で井の頭線に乗り換え渋谷に向かうこともできる。乗降客数1位の新宿は乗り換え路線の多さもさることながら、2016年にはバスタ新宿も開業し、とても交通の便がよくなった。また、渋谷駅では駅ビルや百貨店のみならず、駅周辺には路面店も数多くあり、他のターミナル駅にない魅力がある。

 また、新線新宿駅では都営大江戸線に乗り換えられるだけではなく、新宿三丁目駅で東京メトロ丸ノ内線、市ケ谷駅で東京メトロ南北線、有楽町線、JR中央・総武緩行線。九段下駅で東京メトロ東西線、半蔵門線。神保町駅で都営三田線など、数多くの乗り換え路線を持っている。平日昼間ならおおよそ10分に1本程度、都営新宿線に乗り入れる列車がやってくる。たいていの場合は区間急行か快速で、急行の場合もある。

 2つの路線が利用できる成増駅と、2つの巨大ターミナル駅にアクセスできる千歳烏山駅。どちらの駅も利点があり、決して不便なところではない。

●お手頃家賃の成増、世田谷ブランドの千歳烏山

 成増駅周辺の家賃相場は、住宅情報サイト「ホームズ」によると、1人暮らし用の1Kで6.3万円程度。家族用の3DKで11.2万円程度。一方、千歳烏山駅周辺の家賃相場は、1Kで7.3万円程度、3DKで12.9万円程度。千歳烏山は、世田谷ブランドがあるぶん、ちょっと高い。

 それでも、どちらも23区では住環境がよく、お得なエリアなのだ。

 成増駅周辺には駅前スーパーは多い。西友、ダイエー、マルエツと3店舗もそろっている。駅の中には高級スーパー、成城石井もある。

 一方、千歳烏山には大手では西友とライフがあり、他にオオゼキやシミズヤもある。また、商店街も充実している。どちらも、暮らすのには悪くないところだ。

 ただ、大規模な商業施設という点では、どちらもそれほど恵まれていない。ファッションビルなどがあるわけでもなく、そういったものを求めるならば電車に乗って都心へと向かわなくてはならない。

 平日の終電は、成増駅は池袋午前0時45分発。地下鉄成増駅は池袋午前0時24分発。一方千歳烏山駅は、新宿午前0時34分発。いずれも都心に遅くまでいることのできる街ではあるが、成増駅のほうがやや遅い。

 生活に不便はなく、交通の便もそれぞれよい成増と千歳烏山。23 区の隅っこは、落ち着いて暮らすにはとてもいい場所だ。隅っこでも23区内に住みたい、それでいて交通の便もいいところという人は、終電が遅くまであり、家賃も安いほうがよければ成増駅、世田谷ブランドにこだわるなら千歳烏山駅、ということになるだろう。


(本記事は、書籍『駅格差 首都圏鉄道駅の知られざる通信簿』(著・首都圏鉄道路線研究会、SBクリエイティブ)の中から一部抜粋し、転載したものです)