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緑色植物の光合成を再現、資源制約のない光触媒

6/12(月) 12:25配信

スマートジャパン

■CO2還元の選択率は最大で99%

 緑色植物の光合成を人工系で実現――。東京工業大学の前田和彦氏らは2017年6月、窒化炭素(C3N4)とルテニウム(Ru)複核錯体からなる融合光触媒が、可視光照射下でのCO2のギ酸への変換反応に対して特異的に高い活性を示すことを発見したと発表した。

【NEDOにおける人工光合成の研究開発スケジュールと目標】

 資源的制約とは無縁な炭素と窒素からなる材料を使い、太陽光をエネルギー源として、CO2を常温常圧化で有用な化学物質に変換できる可能性がみえてきたという。

 金属錯体や半導体を光触媒としたCO2還元は、ギ酸や一酸化炭素といった有用物質を常温常圧化で製造できる反応として注目され、30年以上前から国内外で研究が進められている。前田氏らはこれまで、有機高分子半導体のC3N4とRu錯体を融合したハイブリッド材料を光触媒とすることで、太陽光の主成分である可視光照射下、常温常圧化でCO2を還元することに成功していた。しかし、耐久性と選択率の向上が課題だった。

 特に複合光触媒の高効率化には、C3N4からRu錯体への電子移動の促進が必要とする。

 今回尿素を熱分解して得られるシート状C3N4が、ホスフォン酸基を吸着部位としてもつRu錯体を強固に吸着できることを発見。これにより、C3N4からRu錯体への効率的な電子移動が実現し、その結果としてCO2光還元反応の高効率化に成功した。

 光触媒の合成条件とCO2光還元の反応条件を詳しく検討した結果、CO2溶解度の低い水中でも高い光触媒活性が得られることが分かった。CO2を還元してギ酸を生成する同反応のターンオーバー数は、従来の660から2090に向上した。75%にとどまっていたCO2還元の選択率は最大で99%に達している*)。いずれも「世界最高値」という。

*)ターンオーバー数:触媒反応の活性点の数に対する生成物分子の数の割合。活性点が10個、生成物分子が100個生じた場合、ターンオーバー数は10となる。*)選択率:化学反応における全ての生成物量に対する目的生成物量の割合。

 今回の成果は、化学結合形成に利用可能な表面官能基をほとんど持たないC3N4の表面が、特別な化学処理を経ることなく有用な化学反応系構築に利用できることを示している。反応で得られるギ酸は水素を貯蔵・輸送するエネルギーキャリアとして有用だが、組み合わせる錯体を変えることで、一酸化炭素を高い選択率で得ることも可能だ。

 また炭素や窒素以外の元素を取り込むことで、よりエネルギーの小さい可視光の有効利用も可能となり、太陽光エネルギーの有効利用につながることも期待できるとした

■日本が優位性を持つ人工光合成

 人工光合成の実現に向けた光触媒の開発は世界的に感心は高いが、日本が技術的な優位性を持つ分野として知られている。1970~1980年代には酸化チタンに紫外光を照射することで水分解が可能であることを世界で初めて発見(本多・藤嶋効果)。その後、2000年代に入り可視光吸収型光触媒が発見され、多くの研究開発が進んだ。

 人工光合成としては、2011年に豊田中央研究所が、二酸化炭素と水からギ酸を合成することに成功した他、2012~2013年にはパナソニックがギ酸やメタンを生成するシステムを公開している。東芝は2014年12月に人工光合成で、太陽エネルギー変換効率1.5%を実現したとしている。また2015年3月には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)が、人工光合成技術で世界最高レベルとなる太陽エネルギー変換効率である2%を達成したことを発表した。

 NEDOでは2021年度までに人工光合成技術で、太陽エネルギー変換効率10%を目指すとともに、最終的には基幹化学品製造基盤技術の確立を目指す。パナソニックなども2020年以降に光触媒水素生成デバイスの実用化に向けた研究開発が本格化するとしている。2020年代には実用化に向けた取り組みが本格化してくるとみられている。