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「nuroモバイル」の戦略を聞く 「5時間」プランの手応え、「0 SIM」の現状

6/12(月) 12:53配信

ITmedia Mobile

 2016年7月に、ソネットから社名を変えた、ソニーネットワークコミュニケーションズ。10月からはMVNOのブランド名も一新し、固定回線と名称を合わせ、「nuroモバイル」としてサービスを提供している。同時に、料金体形を1GB=200円とシンプル化し、2017年2月からは5時間プランも開始した。

【5時間プランの利用イメージ】

 5時間プランは、GB単位が一般的なMVNOの中では珍しいサービスだ。高速通信を使った時間をカウントし、合計5時間ぶん使えるというもの。それを超えると、200Kbpsに速度制限がかかる仕組みだ。また、通常の料金体系とは別に、nuroモバイルでは「0 SIM」と呼ばれるサービスも提供している。こちらは、500MBまで通信料が無料になるのが最大の特徴。2月には「5分かけ放題」オプションも登場し、これは0 SIMにも対応している。

 ブランド名を変更し、新プランを投入してきたnuroモバイルだが、その成果はどのような形で出てきているのか。ソニーネットワークコミュニケーションズでMVNO事業を担当する、モバイル事業部門 ビジネス開発部 部長の細井邦俊氏と、ビジネス開発課 チーフの松井健一氏に手応えをうかがった。

●「5時間」使い放題プランを提供した狙い

―― 昨年(2016年)にさかのぼりますが、まずは、nuroモバイルにブランドを変更した意図を、あらためて教えてください。

細井氏 われわれはSo-netとして、ずっとモバイルサービスをやり続けてきました。本格的に始めたのが2013年で、当時は「PLAY SIM」という名称でした。これは、nuroと同じ時期で、このときにモバイル事業部門も発足しています。

 その中で、ニーズに合わせたいろいろなものができ、名前もその都度の意見に合わせていました。一方で、他社を見ると、会社名やブランド名に“モバイル”をつけるのが一般的です。その方が、お客さまに訴求しやすい。新しくするにあたり、バラバラだったサービスを統合すべきではないかと考え、シンプルに、中身も名前も見直して、1つにしました。

 ただ、それが「ソニーモバイル」になってしまうと、会社名ですし、ソニーの冠の下に製品名をつけることは、基本的にはやっていません。お客さまに訴求ができ、なおかつ認知度の高いブランドで、同じ通信の事業部門にNURO光があったため、同じ形でNUROを使うことになりました。

―― プランをシンプルにしたうえで、5時間プランのような新しい料金プランも出されています。これは、なぜ時間で区切ることにしたのでしょうか。

細井氏 5時間プランは、企画のメンバーと技術のメンバーが自らユーザーとなり、新しい取り組みをしようという中で生まれたサービスです。(nuroモバイルは)他社と比べて遅れて出てきた形になります。ですが、何かしらの新しいものや、他社がやっていないにもかかわらず市場のニーズがあるサービスは、まだあるのではないか。そういうところに取り組んできた結果、あれが出てきました。

 そもそも、ちまたでは、2GB、3GBというようなプランがあり、余った場合は繰り越しますという形になっています。そういった使われ方も1つありますが、本当に2GB、3GBという容量で提供するのが、全てのお客さまのメリットになるのかというところに、疑問を持ちました。他のサービスの仕方はないのか。データ容量ではなく、1日の使う時間で区切るのがいいのではないか。そういうところに着目しました。その1つの結果として生まれたのが、トータルで5時間まで高速通信をご利用いただける、5時間プランです。

―― 5時間というのは、何を根拠に算出された時間なのでしょう。

細井氏 今のメンバーと話し合いながら、1日の間にどのくらいの時間通信を使うのかを検討しました。仕事中は使わないだろうし、高速移動中もなかなかうまく使えないかもしれない。トラフィックの時間帯を分析すると、やはり朝と昼、それに仕事が終わった夕方、夜のくつろぎの時間に使われていることが多く、あとはバラバラです。それを考えると、朝に1時間、昼に1時間、夕方に1時間、家に帰ったあと、余暇を楽しむのに2時間という使い方を想定し、それを足し算すると5時間になるのではないか。1つのメニューに統一するとなると、5時間がいいのではないかとなりました。

 あのサービスは好評で、いろいろなお客さまから喜びの声や、もっとこうしたらいいのではという声が聞こえてきます。もっと長いもの、逆に短いものを作らなければいけないかもしれませんが、5時間は1つの目安です。メニューを多くして、選択肢が増えるのがいいかというと、そうでもないですからね。ほどほどにお選びいただくことができる形で、シンプルに分かりやすい方がいい。ですから、時間プランを増やすべきかどうかは、検討をしているところです。

●5時間を超えると速度制限を解除できない

―― 契約者はどのような使い方をしているのでしょうか。

細井氏 いっぱい使う方もいるし、さほど使わない代わりにデータ量が多い方もいます。夜中に一気に使う方もいれば、のんびりゆっくり使う方もいます。

―― 人によってかなり違いがあるということですね。5時間のカウントを自動にしたのはなぜでしょうか。

細井氏 5時間という枠があって、いつでもお使いいただけるようにしていて、あの時間はハイスピードで使える時間が5時間ということです。(高速通信の)オン、オフを意識しなくてもいい。発表時にお話した通り、テキストのような軽いデータだと、高速通信の時間を消費しません。これは、あえてカウントしていないだけですが、気にせず通信していただければと考えています。高速通信とカウントするしきい値がいくつかはお話できませんが、バックグラウンドでちょこちょこ通信しているぶんに関しては、カウントしていません。

―― テキストなどのデータを送受信する際に、速度を絞ることもできたと思いますが、それをしなかったのはなぜですか。

細井氏 たとえ幅が広くても、(テキストのようなデータなら)1Mbpsを超える通信速度が実際には出ないからです。

―― なるほど。ちなみに、容量とはカウントの仕方が異なることで、トラフィックの傾向に変化は出ていますか。

細井氏 全体的な傾向はそれほど変わらず、朝、昼、夕方、夜にそれぞれピークがあります。山の形は、そんなに変わっていないですね。ただ、時間プランと容量プランの使われ方は、それなりに違っていると思います。5時間プランは目的意識を持った方が申し込んでいて、ライフスタイルに合わせて使われている。そのため、使い方はバラけていると思います。

―― 5時間を超えてしまうと、現状では速度制限を解除できません。例えば、容量のように、1時間単位で時間を購入できるようにはしないのでしょうか。

細井氏 現状はありませんが、検討はしたいと思っています。

松井氏 ただし、使ってみるとうまいこと、5時間に収まることも多い。チャージも1つの方法ですが、まずはユーザーが使いやすくすることを考え、初速バーストも入れています。ここは、ユーザーの感触をうかがいながらですね。

●大容量プランよりも5時間プランの方が人気

―― 他のプランと比べたとき、人気のほどはいかがでしょうか。

細井氏 細かな数値は公表していませんが、もともとはほとんどが2GBプランだったところが、認知度が高まり、5時間プランを選ばれる方が増えています。8GB、9GB、10GBという大容量よりも、5時間プランの方が割合は多いですね。

―― 現状での主力といえるほどでしょうか。

細井氏 まだ主力とまではいきませんが、選ばれる方は目的を持って選んでいます。逆に、月にせいぜい2~3GBしか使わないという方もいて、定番の2GB、3GBにもユーザーが集中しています。そういう意味では、二極化しているといえるのかもしれません。

 5時間プランは2500円という価格で、われわれの10GBは2300円です。戦略としては分かりやすく、サービスは700円からスタートし、200円単位で上がっていきます。5時間プランもあまり値段がとっぴだと受け入れられなかったのかもしれませんが、10GBよりいただきますという(目安としてどのくらいの容量に相当するのかが分かりやすい)形にしています。

●0 SIMは速度が落ちてきているが……

―― 容量別プランと5時間プランは、同じ帯域を共有しているのでしょうか。

細井氏 時間プランと容量プランは分けた形でコントロールしています。ただ、細かくコントロールしてはいますが、結果として同じ形にはなっています。当然2GBプランだから遅くてもいいというわけではなく、全てのお客さまに、同じ品質でお使いいただけることが基本です。

―― といっても、さすがに0 SIMは違いますよね。

細井氏 そうですね。

―― 0 SIMは開始当初と比べると、速度も落ちてきている印象があります。

細井氏 以前はお客さまが少なく、スピードもある程度出ていましたが、今はたくさんの方に使っていただいていて、正直なところ混んでいます。ただ、0 SIMは初期費用を除くと、500MBまでは無料でお金をいただいていません。そこはさすがに、お金をいただいているお客さまと同等の品質をご提供することができません。他のプランと同じような意識で申し込まれて、スピードが出ないとお叱りをいただくこともありますが、0 SIMは、バックグラウンド通信だけに使ったり、2台目、3台目、4台目や、スマホではないものに挿すかもしれないというニーズを踏まえて作ったものです。

―― 利用動向に変化はありましたか。

細井氏 先日、音声定額も使えるようになりました。そういう意味では、データをほとんど使わず、電話を使うという方も申し込むようになっています。田舎に住むおじいちゃん、おばあちゃんに渡すようなときでも、2GBプランだと2200円になりますが、0 SIMだとそこまではかかりません。

松井氏 0円でデータを500MBまで使うという方が中心でしたが、2月から変わりました。LINEのテキスト程度しか使わないという方にもお申し込みいただけるようになり、音声の比率がグッと上がりました。音声プランにして、5分のかけ放題を付けても、1500円ですからね。

細井氏 スマホにSIMを挿すと、絶対に通信してしまいます。他社ならそのために従量制のプランに入らなければならないのですが、0 SIMはその必要がありません。もし500MBを超えてしまっても、従量でお金がかかるだけです。ほとんどデータを使わないような方にも、いいのではないでしょうか。

―― 回線数でいうと0 SIMが多いと思いますが、これはカウントを分けているのでしょうか。

細井氏 0 SIMの数は多いですね。ただ、直接の獲得はやっていませんし、解約抑止もしていません。使わなければ、自動的に3カ月で解約になります。その意味では、月額課金しているお客さまと同じようにカウントするのは、よくないと思い、別々に発表しています。

―― 速度が落ちてきているというお話がありましたが、帯域の増強はしているのでしょうか。

細井氏 地道にやってはいますが、目に見えるほどにはなっていないかもしれません。正直、お昼の時間帯や皆さんが遅くなると思われている時間帯は苦しいですね……。

―― 500MBに収まってしまうと料金はかかりませんが、これで大赤字ということはないですよね。

細井氏 詳しいことはお話できませんが、苦しいことは確かです。ただ、まずはモバイルサービスの入り口として、0 SIMを使っていただければと考えています。0 SIMは単体で見ているわけではなく、nuroモバイル全体でお客さまにどうお使いいただき、力を発揮できるか。ちょっと苦しい状態ではありますが、ニーズもあります。そのニーズにお応えしながらも、通常の月額課金のプランをお使いいただければと思います。

松井氏 ただ、いわゆる1GB刻みのプランから得られる収益で、0 SIMの赤字を埋めているというようなことはありません。そういったところは、帯域の太さに影響が出ています。(サポートに)お電話いただいたときは、その辺もきちんとお話しています。

●ソニーモバイルとの連携は?

―― 同じブランドで展開しているということで、NURO光とのセット販売のようなことは考えているのでしょうか。

細井氏 一部販路では一緒にやってはいますが、直接的にはやっていません。NURO光が一都六県の関東のみで、モバイルサービスはドコモエリアで全国に提供しているからです。大々的にはできないので、時期を見ながらですね。

―― 販路はネットが中心になっていますが、リアル店舗を強化するなどのお考えはありますか。

細井氏 今は直販のWebからのお申し込みと、家電量販店さんにご協力いただいている状況です。販路が大きくこの2つというのは、変わりありません。他社が店舗展開をしているのは見ていて、研究はしていますが、今のところ、お客さまへのリーチはこの2つですね。

―― あまり派手な展開はしないということだと思いますが、現状、シェアはどの程度でしょうか。

松井氏 調査会社によってまちまちですが、弊社は10本の指の前後に入っていることが多いですね。

細井氏 ギリギリですが(笑)。さすがに某社のように、年がら年中広告を打つことはできません。そこと真正面からぶつかって本当に訴求できるのかと考え、違った戦略でやっています。目立ってはいないかもしれませんが、直販や量販店の流れでサービスに加入していただこうとやっています。

松井氏 店舗展開や広告には、費用がかかります。私たちは適切な価格で、シンプルなサービスを展開したい。規模を追うことも大事ですが、それよりも違いを大事にしたい。5時間プランもそうですが、違いを追って、事業を良質なものにしていきたいと考えています。

細井氏 今、自分たちができることをやりながら、お客さまに選んでいただける最適解は何かを常にウォッチしていこうと思います。やみくもに価格競争に追従したり、複雑にしたりするのはやめる。So-netブランドのときのユーザーと、ソニーの製品をお使いいただけるユーザーにご理解いただける形で、サービスを訴求していきたいですね。

―― 「違いを追う」というのは、先日ソニーの平井CEOもおっしゃっていましたね。グループという意味では、現状、御社はソニーモバイルの傘下で、社長も同じ十時氏ですが、あまりシナジー効果が出ているようには見えません。ソニーモバイルとの連携は、どのようにお考えでしょうか。

細井氏 今回のサービスは、もともとSo-netにあったサービスを統合し、シンプルに分かりやすくしたものです。そのお客さまの(端末に対する)ニーズは、ミドルレンジにあります。今、お客さまのお声を聞いているところで、ニーズがあれば、そういった検討もさせていただきます。ここについては、あらためて方向性が決まったらお知らせします。

●取材を終えて:ソニーグループを生かした取り組みにも期待

 ブランドを一本化し、料金プランもシンプルになったnuroモバイル。MVNOの料金が横並びになりつつある中、5時間プランのような目新しいサービスで差別化も図れている。用途は限られるが、0 SIMも音声通話中心のユーザーニーズに合致しているといえそうだ。

 一方で、話を聞く限り、販売戦略が少々弱いようにも感じた。ブランドを刷新してからまだ1年もたっていないため、判断をくだすのは時期尚早かもしれないが、ソニーモバイルの製品や、NURO光との連携など、ソニーグループであることを生かした取り組みにも期待したいところだ。

最終更新:6/12(月) 12:53
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