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その案件はどんな価値を生むのか 日立がIoT事業で大事にしていること

6/12(月) 13:08配信

ITmedia エンタープライズ

 「日立はIoT(Internet of things)時代のイノベーションパートナーを目指す」――。日立製作所の東原敏昭社長は、同社が6月8日に開いた投資家向け戦略説明会でこう強調した。これは、同社の「2018中期経営計画」のスローガンでもある。

【画像】Lumadaを活用したビジネスモデル(出典:日立製作所の発表資料)

 日立は、ここにきてIoT事業に非常に注力している。そのキーワードが「Lumada(ルマーダ)」である。

 Lumadaとは、同社の幅広い事業領域で蓄積してきた制御・運用技術(OT:オペレーショナルテクノロジー)と、AI(人工知能)やビッグデータ収集・分析などの情報技術(IT)を組み合わせ、顧客にとって最適なソリューションを提供する製品・サービス群のことだ。日立はLumadaを「IoTプラットフォーム」と位置付けている。

 では、Lumadaを活用したビジネスモデルはどのようなものか。もっとストレートに言えば、日立はIoT事業でどう稼ごうとしているのか。この疑問に対しては、Lumadaの活用と進化を全社横断組織として推進するサービス&プラットフォームビジネスユニットCEOの小島啓二執行役専務が、次のように説明した。

 まず、日立の全事業におけるLumadaの位置付けを示したのが図1である。ポイントは見ての通り、日立の全事業をLumada上に展開して顧客との“協創”(コー・クリエーション)を図っていくという考え方である。日立はこれを「顧客協創による新たな価値創出を、データを核としたIoTプラットフォームLumadaで支える」と説明した。

 その上で、小島氏はLumadaを活用したビジネスモデルとして、「Lumada SI事業」と「Lumadaコア事業」があると語った。前者は産業・社会インフラ系を中心としたIoT分野のSI事業、後者は幅広く適用できるサービスをグローバルに展開する事業である。

 中期経営計画では、2018年度の売上高としてLumada SI事業で7600億円(2016年度実績は7800億円)、Lumadaコア事業で2900億円(2016年度実績は1200億円)を見込んでおり、2016年度実績の9000億円を2018年度に1兆500億円まで伸ばしたい考えだ。

●マネタイズを図るLumada事業の成長モデル

 小島氏はまた、Lumada事業の成長モデルとして図3を示した。図の見方としては、Lumada SI事業でのユースケースの拡大をLumadaコア事業に生かし、コア事業で生み出したサービスをグループ内でも活用して「経営指標改善」を図り、グループ内のユースケースをまたSI事業に生かしていくというものである。

 日立としてはこの成長モデルによって、各事業部門に配置されているCLO(Chief Lumada Officer)のリーダーシップの下、ユースケースを蓄積し、3つのマネタイズモデルが連動して事業の成長を加速する方向に持っていきたい考えだ。小島氏がこの図の説明で「マネタイズ」という言葉を幾度も使っていたのが印象的だった。すなわち、この成長モデルが日立のIoT事業における稼ぎ方である。

 さらに、この成長モデルで重要なキーワードとなるのが、「ユースケース」である。小島氏によると、「2016年度は産業分野を中心に200件を超えるユースケースを公開し、顧客との協創を促進してきた」という。

 同社では、そのユースケースを「生み出した価値」で分類しているのがポイントだ。代表的なユースケースについて生み出した価値を数値で示すとともに、それらを分類して「コスト見える化」「コスト最適化」「売上向上」「リスク低減」における割合を示している。これが、つまりは現時点でのLumadaにおける導入効果の実態である。

 小島氏は、「今のIoT事業では、まずコストを見える化することが入り口になっている。その上で、例えばコストの上昇に対して素早くアラートするような仕組みが、結構マネタイズのとっかかりになっていると実感している」と語った。

 図4のように、IoTにおけるユースケースを、生み出した価値で分類したグラフを見たのは、筆者の知る限りでは初めてだ。なかなか公開されないデータである。せっかくなので、もう一押し要望を申し上げておくと、それぞれのユースケースで価値を生み出すためにどれくらいの費用がかかったのか。つまりROI(投資対効果)の目安が分かれば、ユーザーにとってはありがたいところだろう。IoTの活用はどれくらい費用がかかるか、見当がつかないと考えているユーザーが少なくないのも実態である。

 最後に、日立のIoT事業に対する筆者の印象を述べておくと、従来のIT事業がIoT事業にごっそりと移行した感じだ。それはおそらく的外れではないだろう。さらにITベンダーの観点から言うと、競合他社はIoTよりAIを前面に押し出しているイメージがあるのに対し、日立はIoTを前面に押し出しているのが興味深い。これはITベンダーというより製造業者(メーカー)としてのこだわりの表れなのだろう。

 果たして日立のIoT事業は、例えば10年後、グローバル企業としてLumadaに社名変更するくらい大きく育つのだろうか。注目しておきたい。