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京都・池坊に聞く、映画「花戦さ」の時代考証 品種改良も考慮 /京都

6/12(月) 21:36配信

みんなの経済新聞ネットワーク

 「華道家元池坊」が監修を行った、映画「花戦さ」に出てくる花について、池坊華道会事業部(以上中京区)の徳持拓也さんに話を聞いた。(烏丸経済新聞)

芝居を見て変更したという「夏跳ねる」

 映画「花戦さ」は、生け花の名手と言われた室町末期から江戸初期まで活躍した初代池坊専好を主人公に描いた作品。専好役は狂言師の野村萬斎さん、千利休役は佐藤浩市さん、豊臣秀吉役は歌舞伎役者の市川猿之助さんがそれぞれ演じている。

 映画では室町~戦国時代を舞台に約200もの生け花作品が登場。中でも専好の作品は、池坊に伝わる「花伝書(かでんしょ)」や絵図に残る作品を元に「池坊中央研修学院」で古典立花を研究する教授陣が担当した。当時の花伝書は少ないが、後の時代に当時を想像して描かれたものや、近い時代の文献を参考にしたという。

 徳持さんは「現代では品種改良も進んだものも多く、当時の花を生ける上で難しい部分があった」と話す。例えばシャクヤクといえば、現代では大輪で花弁も多く色も華やかな洋シャクヤクが一般的だが、映画では小さく地味でまさに野生の花といった種類を選んだという。

 高橋克実さん演じる吉右衛門に「けったいな花を」と頼まれて専好が生けた「砂物(すなもの)」には、花ショウブの原種「ノハナショウブ」を使った。「花ショウブよりも非常に丈が長いのが分かると思う。中村福宏教授がこの種類で、とこだわった作品」と徳持さん。同作品はストーリー上で重要な役目を果たす。

 使う道具についても当時のものを再現したという。剣山を使わずワラを束ねた「込藁(こみわら)」を花器に入れて花を立てたほか、金属製のワイヤは極力使わないようにしたという。

 花伝書通りではなく、萬斎さんや佐藤浩市さんの芝居を見て、作品を変更した作品もある。専好が利休に心の内を打ち明けた後に生けた「夏跳ねる」はもともと、カキツバタの花が数本入っていたが、西田永教授が急きょ1本だけに生け直したという。

 クライマックスに登場する、前田利家邸の「大砂物」は、「池坊一代之出来物」と評される傑作。再現には「利家亭御成書院床飾其外之記」、「文禄三年前田亭御成記」などから推察して制作。7メートル以上ある作品の大きさをどう出すかも苦労したという。水生(すいせい)の蓮の花は本来、大自然を感じさせる大砂物にあまり使われない花材だが、ストーリーに合わせて生けているという。

 徳持さんは「映画の中で信長が『武人であれば茶と花を、人の心を大切にせえ』と武将らに一喝するシーンがある。華道は技術の向上だけでなく、自らの心を磨き、高めるものだと思う。生けられた花は相手への心遣いであり、受け手もそれに気づき、受け止めることが求められる文化は今も変わらない」と話す。「現代に生きるごく一般の人が室町時代の花を生けられる。これが文化であり豊かさだと思う。映画を見るときには、現代にも息づく生け花にも注目してもらえるとうれしい」とも。

 映画は「ムービックス京都」(中京区)などで上映する。

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