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ファッション広告もデジタル移行、進む紙離れ

6/12(月) 14:07配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

【パリ】高級ブランド会社が高級雑誌に背を向けつつある。長年、裕福な消費者に対する宣伝に格好の場所とされてきた雑誌媒体から離れようとしているのだ。

 ルイ・ヴィトンやグッチなどの各ブランドが代わりに資金をつぎ込んでいるのは、ソーシャルメディアやオンライン広告をベースにしたデジタルキャンペーンだ。

 広告会社ゼニス・メディアによると、2016年の高級品業界のデジタル広告支出は、世界全体で10億1000万ドル(約1100億円)と、2013年に比べて63%増えた。一方、雑誌広告への支出は、同期間で8%減り26億ドルになっている。

 他の多くの業界が何年も前から広告支出をデジタルメディアに移し始めていたがファッション雑誌はこうした傾向から受ける打撃が比較的少なかった。扱っているブランドと持ちつ持たれつの共生関係にあったからだ。

 雑誌は各ブランドにとって重要なファッションショーやその他の宣伝イベントを全面的に取り上げ、ブランドは高級雑誌のビジネスモデルを下支えする広告ページを大量に購入していた。そうした中で、雑誌の編集者はこれまで、ブランドやデザイナー、小売店と手を携え、新たなトレンドを生み出すこともあれば、ときにファッションショーに何を登場させるかを決めることもあった。

 しかし今、ファッションブランド業界も印刷物ではなくインターネットで裕福な顧客に直接リーチすることの優位性を感じ始めている。

 高級ブランドの幹部はデジタル広告が極めて有効であり、比較的低コストで顧客にリーチできると述べている。また、広告支出がいかに売り上げ増に結びついているかに関する大量のデータを得られるとも指摘している。

 グッチやサン・ローランなどの高級ブランドを傘下に持つ仏ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー最高経営責任者(CEO)は「印刷物に費やしていた資金をインターネットに本格的に再配分している」と語る。同社は広報や広告などの予算の35~40%をデジタル分野に投じるという。1年半ほど前、この比率は15~20%だった。

 同氏は「もし今日ブランドを立ち上げるとしたら、全てのコミュニケーションはインターネット上で始まることになろう」と語っている。

 高級ブランド業界には、「ヴォーグ」や「マリ・クレール」、「グラマー」といった雑誌以外にも、消費者とのコミュニケーションを図る多数の選択肢がある。ブランド各社はインスタグラムやフェイスブック、ツイッターやスナップチャットのほか、新興のファッションサイトを通じても顧客とつながることが可能だ。

 高級ブランドの世界最大手LVMHルイヴィトン・モエヘネシーの最高デジタル責任者を務めるイアン・ロジャース氏は、「当社にはわれわれ自身のオーディエンスがいる」と述べる。同社はルイ・ヴィトンやフェンディ、クリスチャン・ディオールなどのブランドを抱える。

 LVMHはサンフランシスコの企業トライブ・ダイナミクスと契約し、「インフルエンサー(ネットを通じて人々の消費行動に大きな影響を与える人)」の特定および彼らとのやりとりを依頼している。

 ヴォーグやグラマーなどを出版するコンデナストの最高マーケティング責任者、パメラ・ドラッカーマン氏によると、同社は印刷広告の収入減を補おうと、ファッション業界のデジタル広報支出を取り込んでいる。同社の雑誌はまた、ビジネスモデルを調整することで収入を増やし、影響力を維持しているという。例えば、一部の雑誌はファッションブランドと組んでデジタル動画などのコンテンツを作成している。

 ドラッカーマン氏は、「彼らブランドはヴォーグに対し、広告キャンペーンや顧客向けコンテンツの製作を手伝ってほしいと言ってくる。われわれはいわば、『クリエーティブ・エージェンシー』になりつつある」と話す。

 同氏は、ファッション界の大物として知られるヴォーグ編集長アナ・ウィンター氏の影響力がこれまで以上に強まっていると指摘する。ヴォーグのウェブサイトやその他のコンデナストのサイトが、ネット上で新たな読者をつかんでいるからだ。コンデナストの雑誌には月間1億人に達するオンライン読者がいるほか、ソーシャルメディアのフォロワー数は1億7400万人に及ぶ。

 ドラッカーマン氏は、「彼女(ウィンター氏)はファッションアイコンから、誰もが知る人になった」と述べる。

 ウィンター氏はこの記事に対するコメントを差し控えた。

By Matthew Dalton