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タワマン続出で小学校の教室不足深刻、大阪市中心部

6/13(火) 6:20配信

ZUU online

大阪市の中心部でタワーマンションの建設が相次ぎ、子育て世代の都心回帰が続いている。繁華街の梅田や難波に近い北、西、中央の3区では、小学校に通う児童が急増し、5年後の2022年度に約140の教室が不足する見込み。市教委は校舎増築や特別教室の転用などで対応してきたが、手狭な学校が多く、従来通りの方法ではとても不足分を確保できそうもない。

市は市教委任せの方針を転換、吉村洋文市長をトップとする組織横断型のプロジェクトチームを立ち上げ、高層ビルの校舎建築や民間ビル借り入れなどの検討に入った。

■陰りが見えないタワーマンションの建設ラッシュ


市企画振興部によると、1965年に315万人を数えた市の人口は、ドーナツ化現象で1990年代に250万人台に減少した。しかし、2000年代に都心回帰の動きが加速すると増加に転じ、2016年には270万人を上回った。関西全体が人口減少に転じる中、市中心部だけが人口を増やしている。

人口集中を引き起こしたのは、北、西、中央の3区を中心に建設が相次ぐタワーマンションだ。住人の多くが職住近接を好み、郊外から移り住んできた子育て世代になる。

タワーマンションの建設ラッシュに陰りは見えない。不動産経済研究所によると、2017年以降に完成予定のタワーマンションは市内で24棟、8325戸に上る。関西全体の41棟、1万3249戸のざっと6割が大阪市内で、その多くが市中心部に集中している。

中央区の43階建て311戸のマンションは、2016年12月売り出しの119戸が即月完売した。このあとも10月に北区中之島で55階建て894戸のマンションが完成する予定。さらに北区中津では、400~650戸の計3棟が建築中だ。

不動産経済研究所大阪事務所は「緩やかな景気回復や子育て世代の都心回帰で市中心部のマンション需要が伸びている」とみている。資材価格や人件費の高騰で郊外型マンションの価格が上がったことも、都心回帰の動きを後押ししているようだ。

市中心部への人口集中にさらに拍車をかけそうな要因もある。2031年春に開業予定の「なにわ筋線」だ。府、市、JR西日本、南海電気鉄道などが連携して北区に新設されるJR北梅田駅から浪速区のJR難波駅、新設予定の南海新難波駅を結ぶ新動脈で、JR西日本と南海が共同運行する。

中間駅は北区と西区に設置される方向。多くの不動産業者が沿線に熱い視線を注いでおり、タワーマンション建設ラッシュがさらに活気づきそうな状況だ。

■増築や特別教室転用での対応は限界

市中心部の小学校には、タワーマンションの入居が始まるたびに、大量の児童が転校している。ビルの谷間に設けられ、手狭なところが大半で、市中心部からの転出が続いた時代に統廃合した跡地はほとんどが売却されている。このため、増築や特別教室の転用で確保できる教室には限界がある。

西区の西船場小学校は学校の敷地が5500平方メートルで、うち2600平方メートルを運動場が占める。2016年度の児童数は485人。児童1人当たりの運動場面積は5.6平方メートルしかなく、文部科学省が基準とする1人当たり10平方メートルの半分ほどだ。休憩時間には低学年と高学年が交代で校庭を使っている。

市教委の推計では、2022年度には児童数が952人とほぼ倍増するとみられている。既に校舎増築を終えており、再度増築する余地がない。このため、苦肉の策で敷地内にある西船場幼稚園を廃園とし、そこに校舎を増築する案を住民の反対を押し切って決めた。

北区の扇町小学校は2016年度の398人が2022年度に824人、中央区の中央小学校は812人が1255人、西区の堀江小学校は943人が1640人と大幅に増える見通し。北、西、中央の3区では、8割の小学校が5年後に教室不足になると推計されている。

近くの公園を校庭代わりに使用している小学校もあり、児童急増の影響は深刻さを増すばかり。市全体の児童数は緩やかな減少に入る中、タワーマンションの急増が思わぬ波紋を投げかけているわけだ。

■市は組織横断型のプロジェクトチームで対応協議

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大阪市北区中之島に建設されたタワーマンション。市中心部はタワーマンションの急増で児童数の急増が見込まれている(写真=筆者)

市はこれまで担当の市教委で対応を進めていたが、緊急事態と受け止め、組織横断型のプロジェクトチームを設立した。トップは吉村市長が務める。初会合で吉村市長は「中長期的な目標を立てスピーディーに対処する」と決意を述べた。

児童急増による教室不足に悩む兵庫県西宮市は、2017年度から条例で入居戸数の多いマンション建築を一部の地域で制限しているが、大阪市はマンションの総量規制に踏み切らない方針。

現在、校舎の高層化や他施設との複合化、一定期間の用地借り上げなどさまざまな方策を模索している。西区では市立3高校の統合計画が進行中で、廃校の跡地に中学校を移転、中学跡に小学校を新設することも検討されている。

市教委学事課は「年内に計3回程度の会議を開き、必要な個所から対応策を決めたい」としている。しかし、悠長に構えていたのでは教育環境が悪くなる一方だ。市にはよりいっそうスピードアップした対応が求められている。


高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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最終更新:6/13(火) 6:20
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