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太陽電池の効率向上へ、量子ドットの発光を自在に制御

6/13(火) 7:10配信

スマートジャパン

■光エネルギーを直接電気に変換できる可能性

 東北大学 多元物質科学研究所の蟹江澄志氏らによる研究グループは2017年6月、自己集積した硫化カドミウム(CdS)量子ドット*)のナノ組織構造制御により、蛍光発光強度を自在で可逆的に制御できることを「初めて見いだした」と発表した。

【デンドロン修飾CdS量子ドットが形成するP213構造】

*)CdS量子ドット:硫黄とカドミウムからなる半導体無機材料で、ナノサイズの半導体ナノ粒子は特に「量子ドット」と呼ばれている。化学的に安定であり、外部からの紫外線照射により発光する特性を有している。量子サイズ効果と呼ばれる、量子ドットのサイズに応じて、発光波長が異なる性質を示すという。

 このようなエネルギー遷移機構は、光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換できる可能性があり、太陽電池の効率向上やLEDの高輝度化につながることが期待される。

 ナノサイズ微粒子からの三次元的な規則配列の形成は、個々のナノ粒子の特性だけでなく、ナノ粒子間の相互作用によって規則配列構造に由来した新しい機能が発現する可能性があることから、活発な研究開発が行われている。

 蛍光性半導体ナノ粒子は、電子を微小な空間に閉じ込めることから、量子ドットとも呼ばれている。量子ドットは外部からの紫外線照射により、量子ドット内部の電子が光エネルギーを受け取り、エネルギー準位の高い状態に励起され、励起した電子が元の状態に戻る際に発光(フォトルミネッセンス)する。フォトルミネッセンスする量子ドットを三次元規則配列させることができれば、その発光強度を強めたり、発光エネルギーを他のエネルギーに変換したりすることが可能と考えられているという。

 蟹江氏らの研究グループはCdS量子ドット表面に、温度変化で液晶状態となるデンドロンを密に修飾することで、CdS量子ドットにデンドロン由来の液晶性を付与。これにより、CdS量子ドットを自己集積的に三次元規則配列させることに成功した(図1)。

■熱履歴センサーなどの開発につながる可能性

 蟹江氏らの研究グループは、イギリス シェフィールド大学のGoran Ungar氏らとの連携により、小角X線散乱測定と呼ぶ手法により詳細に微細構造を解析した。

 その結果、デンドロン修飾CdS量子ドットは最も非対称性の高い液晶性立方晶構造(P213構造)を形成していることが明らかになったという(図2)。P213構造は中心対称のない特殊な構造で、その構造に由来したさまざまな機能発現が期待されている。

 またCdS量子ドットがP213構造を形成すると、外部からの紫外光照射によってCdS量子ドットの内部に生じた光励起エネルギーがほぼ全てCdS量子ドットの外側に存在するデンドリマーにエネルギー遷移することで、CdS量子ドットのフォトルミネッセンスの発光強度を自在に制御できることを「初めて見いだした」とする。

 このように外部の光エネルギーを電子のエネルギーとして変換することは、太陽電池やLEDの高性能化につながる可能性があるだけでなく、外部の温度変化により発光強度が変化することから熱履歴センサーなどの開発につながることが期待できるとした。

 なお今回の研究成果は蟹江氏とGoran Ungar氏の他、東北大学 多元物質科学研究所の松原正樹氏(博士)、村松淳司氏(同研究所所長)、秩父重英氏(教授)および九州大学 先導物質科学研究所の玉田薫氏(教授)らによるものである。