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ヒト「アフリカ起源説」覆る?人類最古の化石、ヨーロッパで発見

6/14(水) 11:40配信

THE PAGE

 わたしたちホモ・サピエンスの種が初めて現れたのは、およそ20万年前、そしてそうした人類の祖先はアフリカ大陸が起源と考えられています。しかし、ヨーロッパで発見された化石が、今まで知られていた中で最も古い717万年前の人類化石であるという最新の研究論文が発表されました。

完全な姿とどめたミイラ化恐竜化石を発見 ── カナダ・アルバータ州

 古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、報告します。

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最古の人類化石の発見?

 1859年にダーウィンがその主著「種の起源」第一版を発表した頃、人類の進化に関する化石記録はほとんど知られていなかった。例えばジャワ原人は1891年にインドネシアにおいて初めて発見された。しかし北京原人の発見とともに、ホモ・エレクトスとして正確な認識や判定がなされたのは20世紀に入ってからだ。アウストラロピテクスという属は1920年代になって、いくつか断片化石を元に名付けられている。しかしより完璧な骨格を備えた「ルーシー」という標本が、エチオピアで発見されたのは1970年代のことだ(注:この骨格化石の発見によって、「二足歩行を行っていた」可能性を示す解剖学的証拠が提出された)。

 こうした一連の化石記録の存在を19世紀の進化学者はほとんど知ることはなかった。ドイツ人の優れた生物学者ヘッケルは、人類の祖先に当たる化石が「東南アジア一帯から発見されるはずだ」と予見していたそうが、あくまで直接の証拠にもとづいていないアイデアだった。そのためほとんど注目を集めることはなかった。

 「我々ヒトは何所からやってきたのか?」「ヒトとは何者なのか?」 こうした人類のアイデンティティーに直接関わる問いかけには、やはり化石記録におけるデータから直接学べることが多々あるはずだ。人類進化に関する研究分野は一般に「人類学(Anthropology)」呼ばれ、地質年代を通した他の生物グループの進化などを研究の対象とする「古生物学(Paleontology))とは区分される。ハリソン・フォード演じる映画「インディアナ・ジョーンズ」の主人公は、考古学者であって古生物研究者ではない。(私の母親はいまだにこの区別がつかないようだが、他にもかなり混同している方が多くいるかもしれない。)

 さて5月末の学術雑誌PLOS ONEに、二つの人類の進化史(=人類学)に関する重要で興味深い化石の(再)発見と、その研究結果が発表された。このニュースはすでに耳にされただろうか?

Jochen Fuss, Nikolai Spassov, David R. Begun, Madelaine Bohme. Potential hominin affinities of Graecopithecus from the Late Miocene of Europe. PLOS ONE, 2017; 12 (5): e0177127 DOI:10.1371/journal.pone.0177127

Madelaine Bohme, Nikolai Spassov, Martin Ebner, et al. Messinian age and savannah environment of the possible hominin Graecopithecus from Europe. PLOS ONE, 2017; 12 (5): e0177347 DOI: 10.1371/journal.pone.0177347

 ちなみにこの学術雑誌「PLOS ONE」はオンラインだけで論文を発表している。(紙に印刷して本という形で配布する方法は採用されていない)。全てオープンアクセスになっているので、上記のリンクをクリックすると、わざわざ名前など登録しなくても、専門の学術論文をただで閲覧することができる。一度こうした論文に目を通してみるのもいいかもしれない。(英語で書かれているがタイトルや図、表などから、こうした研究における雰囲気を直接肌で感じてみてはいかがだろうか。貴重な情報など素早くつかみとることもできる。今回の研究対象となった化石標本の多数の写真は一見の価値がある。)

 二つの研究論文は同一の研究チームによってまとめられた。研究はほぼ完全に保存されている下アゴの骨と単独の奥歯一つを含む二つの化石標本にもとづく。二つの化石はギリシャとブルガリアでそれぞれ発見された。ちなみに下顎はかなり以前(1944年)にギリシャにて発見されていた。しかし今回の研究チームはこの博物館の標本をCTスキャンなど用いて再研究し、その成果を論文のなかでまとめている。(具体的にはアゴの内側に隠れていた部分の歯 ── 特に歯根 ── の形態や特徴を細かく調べた。)

 二つの標本はGraecopithecus freybergi(注:「グレィコオピテクス」&「フラィバーグアィ」の音に近い)のものだと考えられている。これは原始的なヒト科(注:チンパンジーやヒト、ゴリラの仲間を全て含むがオランウータンの仲間は含まない進化上の系統)に属すると考えられているグループだ。

 どうしてこの発見が興味深いかというと、まずその地質年代だ。717.5万年前という数字が算出されている。この数字は中新世という時代の後期にあたる。今まで知られている限り「最古の人類(及びヒト)の化石記録」と欧米のニュースメディアは伝えている。

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最終更新:6/19(月) 6:07
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