ここから本文です

29歳ミャンマーで事業失敗、お金がなくなりました【マクロエコノミストの失敗談】

6/13(火) 11:10配信

ZUU online

各方面で輝く女性に「投資の失敗談」をお聞きするインタビューシリーズ。インタビューに答えて頂いたのは、日経CNBC経済解説委員、エイボン・プロダクツの社外取締役など多方面で活躍されているマクロエコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんです。

前回( https://daily-ands.jp/posts/58f36e7473f3210af0b07f7a )は、株をやりたくて留年し、ライブドアショックで大損した学生時代のユニークなエピソードが飛び出しました。2回目となる今回は、新卒で入社した証券会社時代、独立後ミャンマーでの事業失敗~帰国後のお話をお伺いします!

■「失敗は想定内」を学んだ証券会社時代

――就職先には、証券会社を選んだんですよね。

大学は経済学部だったんですけど、ライブドアショックで失敗した後も「将来、金融系の会社に行ったら大儲けできるかな?」「いやいやいや……(大儲けとか考えちゃだめじゃん)」と、またひとりでノリツッコミをしていて(笑)。でも、株の失敗を通じて、投資のプロはどれだけ強いのか、そんなに儲けているのか、自分の目で見てみたくなったんです。

同級生からは「お前は絶対就職なんてできない」と言われていたんですけれど、新卒で投資銀行に入ることができました。当時の大和証券SMBCですね。入社後は、社員は個別株の取引は仕事上できないので、投資信託とかETFをやっていました。

――入社後、投資のプロと接してみてどう思われましたか?

実際に投資の専門家の人と仕事をするようになって知ったのが、みなさん、勝とうとするより、いかに損失を少なくするか、いかに損切りして次にいくかを考えているんですね。つまり、「負ける」ことを前提にやっているんです。だから、人生成功したいと考えたら、失敗することは想定内。失敗した時にどうするかということが大切だと知り、投資・人生のポートフォリオを考えるうえで参考になりましたね。

――入社から数年後、会社を辞められるんですよね。その理由は?

2つの疑問があって、会社をやめました。

ひとつは、今の仕事のやり方が、本当にお客さんの利益につながっているのかな?とモヤモヤしたためです。

もうひとつは、「会社員はハイリスク・ハイリターンではないか」と感じたためです。

もともと、親戚にサラリーマンがいない環境で。「人事異動って何!?」「本社がそんなに偉いのか」とか、驚くことが多くて(笑)。あとは、私が女性であることを理由に、海外転勤は絶対にダメと上司から言われたり。そういうことがあって、「私の人生の大部分は上司が握っとるんやな」と思うようになりました。起業したいという想いもあったので、4年で退職しました。

――会社員として働くうえで違和感を持ちながらも、3年以上は続けたんですね。

親は、「仕事はどんなに大変でも3年は続けろ」と言っていました。今、目上の人や企業の社長さんなどと話していて、「前職は何年やっていたの?」と聞かれて、「4年です」というと、まともだと安心してもらえることが多いので、イヤなこともあったけれど4年間続けて、よかったですね。

■ミャンマーに渡り仕事をするも、失敗

――独立された時はおいくつだったんですか?

2012年の春に会社を辞めたので、29歳ですね。

――会社を辞めた後は、どのように過ごしていたんでしょうか?

当時は金融に対する「こうあるべき」という想いがあって。自分の理想とする金融機関を立ち上げられないかな、と思って調べたりもしたのですが、資本金が5億円とかかかることを知って。「日本じゃ無理じゃん!」と思いました。

――その後、ミャンマーに渡られたそうですが、きっかけは?

ちょうどその頃ミャンマーに民主化の流れが来ていて、大和グループで、ミャンマーに証券取引所を作る話が出ていました。日本で一緒にビジネスをやる人を見つけて、ミャンマーに渡ることになりました。

――実際に行ってみてどうでしたか?

行ってみてわかったのですが、ミャンマーの人は、たとえ地元のお金持ちでも、投資について全然知らなかったんです。「証券会社って何?」とか、そういうレベル。当時、地元に住む人を誘って4人でビジネスをやっていたのですが、結果から言うといいカモにされてしまって、お金が他の所へ流れてしまい、全部回収できませんでした。

――それはショックですね。

「ミャンマーの夢は尽きた……」と思いましたね。で、半年間で日本に帰国することになりました。

――その後の生活はどんな感じでしたか?

とにかくお金がなくなって。もう、本当にお金がなくなっちゃった(笑)。会社員時代からボーナスも貯めていたし数百万円は貯金があったのに、口座を見たら本当にお金が残ってない。また会社員に戻るか、このまま頑張るか考えたんですけど、「ここで就職したら負けや」と思って。当時は、こんな姿は同期とか同級生には絶対見せられない!と思っていました(笑)。

でも、悪いことって続くんですよ……。

■スリに事故とアンラッキーなどん底の日々

――え!何があったんですか?

今後日本で何ができるかを考えて、築地のスタバで事業計画書を書いていたんです。お金はなかったんですけど、リフレッシュも必要だと思って、スタバに行って(笑)。そしたら、財布をすられてしまったんです。

あと、当時は都心に出ていってどんどん人と会って情報交換しなきゃ、と思って行動していたのですが、交通費がかかるから、節約のために自転車で移動していたんです。そしたらある日、家に帰ろうとした瞬間に、自転車が停まっていたベンツとぶつかってしまって、ベンツのミラーが壊れて……。修理に30万かかると言われて。

結局、格安で交渉してくれる弁護士の人にお願いしたのですが、もうそこで本当にお金がなくなって、どん底でしたね。

――それは、なかなか立ち直れないかもですね……。

「もう、死にたい」と思いました。しかも、誰にも相談できなくて。当時は荻窪で、友達とシェアハウスをしていたんですが、当時の友達から、あとになって「あの時すごい暗かったよね」と言われました。

■参加者2人の経済セミナーからスタート

――そこから、どうやって立ち直っていったんですか?

でも、「ここまできたらもうやるしかない!食べていくためのお金を稼ごう!」と、まずは家庭教師のバイトを始めました。その頃、ひさびさに知り合い経営者の人と再会して、「最近何しとるんや」と言われて、あまりにつらすぎて、これまでの経緯を全部話したんです。てっきり同情されるかなと思いきや、めちゃめちゃ怒られました(笑)。

そこでその人に、「ピボット」(回転軸。企業の方向転換、軌道修正などと言う意味でも用いられる)という言葉を教えられて。「日銭になる仕事に軸足を置きながらシフトしていく必要がある、だから、今すぐお金になることをやりなさい」と言われました。

――なるほど!その後は、どんな仕事をしたんですか?

その人の会社の会議室を間借りさせてもらって、経済セミナーを開くことにしました。当時の私の名前では人が集まらないと思ったので、有名な経済関係者の人の書籍を紹介する、ブックセミナーという形にしました。一番最初のセミナーの参加者は、2人でしたね。

で、その後、たまたまメディア関係者の方がセミナーに来たことをきっかけに、雑誌などで取りあげてもらう機会が出てきました。その後は、大学院に進学したり社外取締役に就任したりして、今に至ります。

セミナーも、最初は2人だったのが、去年、名古屋証券取引所でピンで講演をさせて頂いた時は、300人の方が集まって下さいました。その後、東京で田原総一郎さんやパックンマックンさんなどと一緒にトークイベントをやらせて頂いた時は、1000人の方に来て頂きました。その時はさすがに「誰も褒めてくれないけど、自分がんばったなー」と思いました(笑)。

■失敗をプラスに変えた崔さんの考え方は?

株の損失を経て証券会社へ入社、ミャンマーでの事業の失敗と、かなり「濃い」20代を送られていた崔さん。

すごいなと感じたのが、度重なる失敗や不運をプラスに変えて、現在に活かしているところ。

それには、崔さんの考え方やモットーが背景にあるようです。

最終回となる次回は、崔さんの失敗に対する考え方、今興味があること・今後挑戦したいことなどをお聞きします!(マクロエコノミストの失敗談③に続く)

■今回、取材に協力してくれたのは…

崔 真淑(さい・ますみ)さん
マクロエコノミスト。2008年に神戸大を卒業し、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。当時最年少の女性アナリストとして、NHKなどの主要メディアで経済解説者に抜擢される。12年に独立、経済学を軸に、経済ニュース解説、マクロ経済・資本市場分析を得意とするマクロエコノミスト・コンサルタントとして活動。若年層の経済・金融リテラシー向上のため、東京証券取引所のPRコンサルティングなども手がける。13年からは日経CNBCで最年少の経済解説委員として出演中。16年一橋大学大学院(MBA in Finance)修了。17年4月からは一橋大学大学院イノベーション研究センターに所属し、組織のインセンティブ設計と資本市場の関連性についての研究を行う。

Y子
大学卒業後、出版社勤務等を経てフリーライターに。インタビューや取材、記事制作などを行う。20代の終わりが近づき、ただ漠然と貯金をすることに疑問を感じ「投資」に関心が出てきた。

(提供:DAILY ANDS)

最終更新:6/13(火) 11:10
ZUU online