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<認知症>茶の摘み手に 人不足補う…夏も近づく宇治で試み

6/13(火) 14:30配信

毎日新聞

 「宇治茶」で知られる全国有数の茶どころ・京都府宇治市で、認知症の人が茶葉の摘み手として働く試みが進められている。新茶の季節の人手不足を補うとともに、認知症の人の就労につなげるのが目的。ボランティアと当事者が交流するなど、認知症への理解を広げる場にもなっている。【野口由紀】

 「がっぽり稼ぐぞ! エイエイオー!」。今年5月、宇治市内の茶園でアルツハイマー型認知症の伊藤俊彦さん(73)=同市=が音頭を取り、認知症の当事者10人と家族、ボランティア計56人が声を上げた。

 抹茶の原料となる高級茶葉を栽培する茶園では、機械でなく人の手で新芽を摘む。だが、少子高齢化で担い手が減少。一方、認知症の人にとっては働き場所の確保が大きな課題。そこで市は2015年から、当事者や家族と茶園の間を仲介し、新茶の季節に認知症の人がボランティアとともに摘み手として働く取り組みを始めた。

 以前は電器会社で精密機器を作っていた当事者の中西美幸さん(64)=同市=は参加して3年目。「柔らかいところだけ取るのよ」と言い、手つきも細やかだ。参加者の中には集中力が途切れ、いったん作業から離れて気持ちを落ち着かせる人もいる。約1時間半で計15キロを収穫し、茶園の青山信次さん(58)は「きれいに摘み取ってくれた」と褒めた。

 ボランティアとして参加した京都文教大3年、蔵本美空さん(20)は、幼い頃から茶摘みの経験がある当事者の久保田孝子さん(81)=同市=に手ほどきを受けて作業。「認知症の人との交流は初めてで会話ができるか心配だったが、久保田さんが優しく教えてくれた」と笑顔を見せた。

 今年は市内の2茶園で3回にわたって茶を摘み、計62キロを収穫。作業1回あたり1000~2000円前後の報酬が当事者に渡される。市は本格的な就労支援に向けて協力農家を増やし、通年の仕事も探す方針だ。現在は参加者の多くが65歳以上だが、若年性認知症のために離職せざるを得なくなった人たちの受け入れも目指す。

 取り組みを主催する市認知症アクションアライアンス事務局の川北雄一郎さんは「事業を拡大し、適切な支援があれば認知症になってもいきいきと働けることを示したい」と話している。

最終更新:6/13(火) 15:03
毎日新聞