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JR西の歴代3社長、無罪確定へ 宝塚線脱線事故

6/13(火) 13:30配信

朝日新聞デジタル

 107人が死亡し、562人が負傷した2005年のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷の罪で強制起訴されたJR西日本の元会長井手正敬(いでまさたか)被告(82)ら歴代社長3人を無罪とした一、二審判決が確定する。最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)は「被告らは事故現場の危険性を認識できなかった」と判断し、検察官役の指定弁護士の上告を棄却した。

【写真】JR西日本の歴代社長3人が無罪になったことを受け、報道陣の取材に応じる大森重美さん(右端)と藤崎光子さん(中央)=13日午後4時12分、兵庫県尼崎市、細川卓撮影

 12日付の決定で、4人の裁判官全員一致の意見。JR発足後、最多の死者を出した事故は、発生後12年で全ての刑事裁判が終結する。運転士は事故で死亡しており、刑事責任を負った人はいない。検察審査会の議決で強制起訴された業務上過失致死傷事件で無罪が確定するのは初めて。

 強制起訴されていたのは他に、元会長の南谷昌二郎(なんやしょうじろう)被告(75)、元社長の垣内剛(かきうちたけし)被告(73)。起訴状では、事故現場のカーブを急な曲線に付け替えた1996年の工事や、現場を走る快速が急増した97年のダイヤ改定で事故が起きる危険性を認識できたのに、自動列車停止装置(ATS)の整備を怠ったとされた。

 裁判では3人が事故を予見できたかが争点となったが、第二小法廷は「JR西でATS整備は鉄道本部長に委ねられ、社長が個別のカーブの情報に接する機会は乏しかった」と指摘。「事故以前の法令ではカーブへのATS整備は義務づけられておらず、大半の鉄道事業者は整備していなかった」と述べ、3人が「管内に2千カ所以上もある同種カーブの中で、特に現場カーブの危険性を認識できたとは認められない」として、過失責任はなかったと結論づけた。

 事故をめぐっては、神戸地検が09年7月、現場が急カーブになった96年当時に鉄道本部長だった山崎正夫・元社長(74)のみを在宅起訴したが、12年1月に一審で無罪が確定している。

 嫌疑不十分で不起訴となった井手元会長ら3人は、市民から選ばれた検察審査会の2度の議決を経て強制起訴されたが、13年9月の一審・神戸地裁、15年3月の二審・大阪高裁はともに「事故を予見できなかった」として無罪とした。(千葉雄高)


■最高裁決定の理由のポイント

・事故前には、カーブへの自動列車停止装置(ATS)整備は法令で義務づけられていなかった。

・ATS整備は安全対策の責任者の判断に委ねられており、歴代3社長は2千カ所以上あるカーブのうち、今回の事故現場が特に危険だと認識していたとは認められない。

・歴代3社長は安全対策の責任者に対し、現場にATSを整備するよう指示すべき義務があったとは言えず、無罪の判断は相当だ。


     ◇

 〈JR宝塚線(福知山線)脱線事故〉 2005年4月25日午前9時18分ごろ、兵庫県尼崎市の宝塚線塚口―尼崎間で快速電車(7両編成)が、制限時速70キロの急カーブに約115キロで進入して脱線。線路脇のマンションに突っ込み、運転士と乗客計107人が死亡、562人が負傷した。ミスをした運転士に課していた懲罰的な「日勤教育」や過密ダイヤなど、JR西日本の企業体質が問題視された。神戸地検が起訴した山崎正夫・元社長や、検察審査会の議決を経て強制起訴された井手正敬・元会長ら歴代社長3人の刑事裁判では事故を予見できたかが争点になった。

朝日新聞社