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木俣冬氏 決定版「みんなの朝ドラ」上梓 毎日レビューも 1日3回は視聴

6/13(火) 8:00配信

スポニチアネックス

 NHK連続テレビ小説(朝ドラ)のレビューを毎日、執筆しているフリーライターでドラマ評論の木俣冬氏が著書「みんなの朝ドラ」(講談社現代新書)を上梓した。

 1961年(昭36)に始まった朝ドラは2000年代半ばあたりから低迷期に。しかし、2010年代に入り、復活を遂げた。序章で、その理由を分析。第1章「マッサン」(14年後期)、第2章「ごちそうさん」(13年後期)、第3章「あさが来た」(15年後期)、第4章「花子とアン」(14年前期)、第5章「とと姉ちゃん」(16年前期)、第7章「べっぴんさん」(16年後期)、第9章「まれ」(15年前期)、第11章「あまちゃん」(13年前期)と近年の作品を考察。第8章は期間平均視聴率52・6%、番組最高視聴率62・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した朝ドラの絶対王者「おしん」(83年)を取り上げた。

 構想・執筆2年。従来、あらすじなどをまとめた総括的な朝ドラ本はあったものの、木俣氏は「1作1作のテーマ性を、じっくりと論考してみたいと。それは今までにないんじゃないかと思いました」と執筆意図を説明。さらに、日本の社会情勢や、日本女性の生き方、その変化とドラマを重ねることに挑んだ。第6章「私の青空」(00年前期)はシングルマザー、第10章「カーネーション」(11年後期)は性や老いを超える観点から読み解いた。

 第12章で「ちゅらさん」(01年前期)「おひさま」(11年前期)「ひよっこ」(17年前期)の脚本家・岡田惠和氏、第13章で「てるてる家族」(03年後期)の脚本家・大森寿美男氏にインタビュー。304ページにわたる画期的な朝ドラ本に仕上げた。

 資料集めも一苦労。明治・大正・昭和を駆け抜けたヒロイン(樫山文枝)を描き、朝ドラの基本を作ったと言われる第6作「おはなはん」(66~67年)。絶版になっていた総集編VHSを見つけ、購入。それを見るために壊れていたビデオデッキを新たに買い直した。細部のエピソードも漏らしたくなかったため、執筆した作品は全話、見直し。「毎日の15分と違い、後から全部、一気に見るのはかなり大変でした」と振り返った。

 もともと演劇ライター。メジャーになる前の宮藤官九郎(46)らを取材しており、宮藤が脚本を手掛け、多くの演劇人が出演した「あまちゃん」から「これは押さえないといけない」と毎朝、欠かさず見始めた。「朝は得意じゃなかったんですが、『あまちゃん』のおかげで朝型になりました」

 「あまちゃん」からレビューサイト「エキレビ!」に朝ドラ評を執筆。「まれ」からは毎日レビューを連載している。

 前日放送分を翌日午前8時半に配信。執筆に当たり、BSプレミアム(前7・30)、本放送(前8・00)、再放送(後0・45)と少なくとも3回は見る。「1回目は普通に、2回目はメモを取りながら、3回目はそのメモを確認しながら」。さらに録画やオンデマンドで4回目を見る日もある。「ほかの仕事もありますから、最初の頃は大変で、毎日もう書きたくないという時もありました。それが2年経つと、何となく体に馴染んできました。毎日走るのがつらくても、ある日、慣れてくるのと同じ気がします。毎日レビューしなくなったら、生き甲斐がなくなって死んじゃうかもしれません(笑)」と今やライフワークになった。

 最近は木俣氏が“女の大河ドラマ化”と呼ぶ、実在の人物をモデルにした作品が目立つ。「花子とアン」は「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子、「マッサン」はニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝と妻リタ、「あさが来た」は実業家・広岡浅子、「とと姉ちゃん」は雑誌「暮しの手帖」の創刊者・大橋鎭子、「べっぴんさん」はアパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人・坂野惇子。今秋スタートの「わろてんか」も吉本興業の創業者・吉本せい。

 今後の朝ドラについて、木俣氏は「実在路線も好評ですが、朝ドラはそもそも、ごく平凡な日本女性の人生を描いてきました。市井の人間の喜怒哀楽を描くドラマとして残ってほしいと思います。著名人シリーズとオリジナル作品、交互になれば、おもしろい。戦中・戦後以外の時代を描いてヒットした作品があまりないので、『ひよっこ』は高度成長期を描いた成功作になってほしいですね」と期待。朝ドラ本第2弾についても「いろいろな切り口があるので、書けることはいっぱいあります」と意欲を示した。

 ◆木俣 冬(きまた・ふゆ)東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンターテインメント作品のルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。「マルモのおきて」「デート~恋とはどんなものかしら~」「IQ246~華麗なる事件簿~」などドラマのノベライズも手掛けている。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」「SPEC全記録集」「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」など。