ここから本文です

ドイツ、トルコ空軍基地 からドイツ軍を撤退

6/13(火) 15:00配信

ニュースソクラ

NATO揺るがす可能性も、トランプはどう出る?

 ドイツ連邦政府のガブリエリ外相は6月5日、ドイツ軍のトルコ・インジルリク空軍基地から引き上げを早急に行う意向を発表した。連邦政府は7日に閣議決定した。連邦議会とNATO(北大西洋条約機構)本部の承認が得られ次第、国防省が撤退日程を公表する見通しだ。

 トルコはNATOに加盟しており、同基地にはNATO戦略の一環としてドイツ軍のジェット戦闘機トルネードが配備されている。その運用のために260名のドイツ人兵士が駐留しているが、同機の今後2か月の通常運用の停止なども決まっている。撤退が正式決定されれば、トルネードはヨルダンに移転する見通しだ。

 今回の決定の直接的なきっかけとなったのは、国内外に配置されているドイツ兵士たちの状況視察が行われる慣習があるなか、ドイツ連邦議会議員による同基地訪問をトルコ政府が拒否したためだ。

 昨年もトルコ政府がいったんは拒否したものの最終的には訪問を認めていた。今回は申請拒否から3週間を経てもトルコ側の対応が変わらなかったため、基地撤退を決めた。

 トルコのエルドアン大統領は、独裁権を強めるための憲法改正国民投票を行った。その際、今年1月から3月にかけ同選挙キャンペーンをトルコ移民(投票権あり)が多く住むドイツ国内で行おうとしたが、ドイツ連邦政府がストップをかけた。
 
 そのため、ドイツ、トルコ関係は冷え切っており、今回の訪問阻止も報復措置の一環とみられる。

 トルコは、2百万人にのぼるシリア人をはじめとする難民収容を条件に、EU(欧州連合)への加盟を求めているが、人権抑圧の実態があるため、EUが拒否している。欧州との軍事同盟であるNATOでの関係も緊張感が高まっていた。

 エルドアン大統領は、昨年7月のクーデター未遂を機に、ブリュッセルのNATO本部と同じベルギーのモンス(Mons)にいた総数約300名のトルコ軍人たちのうち150名に同クーデター引き起こしの疑惑をかけ除名した。

 これらの軍人の多くが欧州にとどまり、反エルドアン運動を展開している。

 また、トルコ国内の270名の軍務高官たちも解雇している。NATO軍事機密に触れて仕事をしているトルコ人スタッフが多数いる中、エルドアン大統領の恣意的な軍の人事により、機密保持体制は揺らいでいる。それもNATOにとって大きな問題となっていた。

 トルコとの関係悪化と並行して、欧米関係も溝は深まっている。先日のNATO首脳会議とG7首脳会議では、トランプ大統領と欧州首脳との溝があらわになった。

 一連の会議の後に帰国したメルケル首相は、5月28日、バイエルンでの今秋の総選挙に備えてのキャンペーンのなかで、「米国との関係は、以前のように信頼関係に立って議論交渉してゆけるものではなくなった。欧州が、独自の安全保障体制を考えてゆく時期に来ていることを今回のNATOサミットとG7で感じた。」と演説していた。

 それに追い打ちをかけるように、トランプ政権は欧州諸国がG7で繰り返しとどまるよう求めていたパリ協定(温暖化防止条約)から脱退を表明し、さらに溝は深まっている。トランプ大統領はすでにワシントンでエルドアン大統領と会談し、支持を打ち出していた。  

 米国、トルコとの関係悪化が進むなかでのドイツのトルコの基地からの撤退は、NATOの在り方を揺るがしかねない。ノルウェー出身のNATO事務総長、イェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)が率いるNATOは、ドイツが主導する今回のインジルリク空軍基地からの引き上げを認める方向。

 NATOは、イスラム国の動きに対する警戒・威嚇を目的としてトルコのコンヤ(Konya)に駐留している早期警戒管制機(AWACS)を引き上げさせる可能性も十分に出てきている。

 さらに全天候型多用途ジェット戦闘機トルネードIDS(Tornado IDS)をヨルダンばかりか、キプロス、レバノンへ配備するなどトルコ離れの動きも見え始めている。

ただ、欧州は難民問題ではトルコに依存せざるえない関係にあり、基地問題での全面対決も一定の歯止めがかかるのではないか、との見方もある。

実際、独外相を支持しているはずのメルケル首相が基地撤退問題には発言を控えているのは、決定的な亀裂をさけ、エルドアン大統領に問題の再考を促すためとの観測も流れている。

■シュヴァルツアー節子(在ミュンヘン・ジャーナリスト)
慶応大経済卒、外務省専門職として在英国大使館勤務、オックスフォード大学留学。ドイツでの日系企業勤務を経て、大手新聞の助手など務める

最終更新:6/13(火) 15:00
ニュースソクラ