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熊 イノシシ “新世代”危険 人里に順応 続々と市街地出没 買い物袋狙い人襲うことも

6/13(火) 7:02配信

日本農業新聞

 各地で熊やイノシシによる人的被害が、後を絶たない。昨年、熊襲撃で4人の死者が出た秋田県では今年4月以降、熊が畑や民家に出没。イノシシも全国各地で市街地に現れ、けが人を出している。背景に、人里にある食べ物の味を覚えた“新世代”の野生獣が増えつつあることが指摘されている。

作物の味覚え畑に 14年誕生多くちょうど発情

 秋田県仙北市で5月下旬、山中でタケノコ採りをしていた60代女性が熊に襲われて死亡した。秋田市では8日、熊が蜂蜜を求めて民家付近まで出没し、家の外壁が壊された。9日には、鹿角市の山林で熊に腹部を食べられたとみられる、死んだ子牛が見つかった。

 県内では、熊の目撃情報が5月までに113件を数える。4、5月の捕獲頭数も23頭と昨年と同水準で、県は出没警報を発令。人里近くでの被害増加を警戒する。「人里と森との境界が曖昧になり、生息域が広がっている」(自然保護課)と話す。

 宮城県栗原市では5日、農作業中の70代の女性が襲われ頭部に切り傷を負い、転倒して腰の骨を折る事故も発生した。

 西日本でも遭遇が目立つ。和歌山県では4月から6月2日までで出没が6件あり、畑などでも目撃されている。

 専門家は、熊は学習能力が高く、農作物の味を覚えて畑に食べに来るなど人の生活圏に適応しているとみる。中には集落に居着く熊もおり、春はタケノコ、次に畑のソバや大豆を食べて、長期間畑付近から離れない場合もあるという。

 発情期を迎えた熊が多いことも、被害が相次ぐ要因と考えられる。日本ツキノワグマ研究所の米田一彦理事長は「2013、15年の秋にドングリが豊作で、14、16年に出産ラッシュだった」と言う。特に、14年生まれで3歳の“ベビーブーム熊”が発情期を迎え、緊張状態にあるという。「山中にいる人を熊と間違えて攻撃的になる。この状態は夏まで続く」(米田理事長)とみる。

 6月下旬までは冬眠明けの熊への注意が必要で、子熊が「ギャーギャー」と鳴く声が聞こえたら、その場から立ち去ることが大切だ。

 遭遇を防ぐには鈴が有効とされるが、材質の薄い鈴では効果が不明で、鐘状で厚い素材でできたよく響く鈴が有効だという。体に複数の鈴を着けるようにする。遭遇した場合は、熊が嫌がるトウガラシ成分が入った熊スプレーが有効という。

 イノシシも頻繁に出没している。京都市のホテルでは5月上旬、ロビーに侵入して暴れ、男性従業員が軽傷を負った。長野市では同下旬、JR長野駅近くの市街地で60代男性が襲われ牙で太ももを刺された。

 神戸市でも近年、イノシシが市街地に頻繁に出没し、人を襲っている。市によると、通行人が持った買い物袋の食べ物を狙う例が目立つ。ごみ出しで指定日時を守らない人がいるため、市街地に食べ物があると覚えたことが要因とみられる。捕獲や追い払いの強化、餌付け行為の禁止などで被害は減っているが、16年度の負傷者は14人に上る。

「餌なくす」先決 兵庫県森林動物研究センター業務部副部長の田口彰氏の話

 熊やイノシシによる被害が増えているのは、野生獣の生息域が人里近くに広がり、遭遇しやすくなったのが一因だ。「人食い熊」や「新世代獣」などと言われるが、積極的に人を襲うようになったのではなく、農作物や食品残さの味を覚えるようになったため。畑の農作物や街の生ごみなどは、高カロリーで魅力的なごちそう。人里は居心地良い場所だと思われてはいけない。防護柵の整備や住民ぐるみの捕獲対策を取り、餌をなくすことが重要だ。

日本農業新聞

最終更新:6/13(火) 7:02
日本農業新聞