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ジーンズ業界に復調の兆し、長続きするか

6/13(火) 10:47配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 ロサンゼルスでフリーのコピーライターとして働くオーロラ・レイシーさん(32)は、少なくとも1年に1本は150ドル前後(約1万6500円)のジーンズを買っていた時期がある。数年前、その習慣にピリオドを打った。

 当時、レイシーさんはカジュアルな雰囲気のオフィスで働いており、職場でレギンスをはくことも許されていた。一方でジーンズメーカーから売り出される商品には魅力を感じなくなっていたという。

 レギンスや「アスレジャー(アスレチックとレジャーを組み合わせた造語)」商品の人気の高まりを背景に、カジュアルウェアの象徴としてのジーンズは存在感を失った。市場調査会社ユーロモニターによると、ジーンズの売り上げは2014年に前年比4.5%減となり、翌15年も同3.4%減となっていた。業界専門家は、ジーンズメーカーはデザインや機能面でのイノベーションをおろそかにしていたと指摘する。

 しかし、足元でジーンズは再び勢いを取り戻しつつある。ユーロモニターによれば、ジーンズの売り上げは16年に1.7%増とプラスに転じ、今年も2.2%増が見込まれている。その背景にはビンテージジーンズの流行のほか、生地の柔らかさや着心地の良さが改善したことがある。

 レイシーさんは今、ジーンズを9本持っているが、そのほとんどが過去1年間に購入したものだ。再びジーンズ熱が高まったのは、フィット性やデザインが変わったからだという。レイシーさんのお気に入りはハイライズで裾が広がったセーラーパンツ型だが、1980年代や90年代からアイデアを得た新しいシルエットのジーンズにも手を伸ばしている。「本当に新鮮な感じがする。全部欲しい」と語るほどだ。

 これは、市場規模180億ドルの米ジーンズ産業にとっては朗報だ。

 米調査会社NPDグループのアナリスト、マーシャル・コーエン氏は、ローライズのスキニージーンズが商品棚を占拠する時代が長く続き過ぎたと語る。その一方で消費者は、より着心地のよいカジュアルなスタイルを以前より多くの場面で好むようになった。

 リーバイスのブランド責任者ジェームズ・カーリー氏は「こうした思い切ったカジュアル化の要素が進んだことで、スポーツ衣料品を本来の用途であるスポーツ以外に着ることも受け入れられた」と語る。「女性達はヨガパンツをはいてディナーにも行く」

レギンスも同じ轍を踏むか

 2015年にはファッション雑誌「GQ」で、米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)のスター選手トム・ブレイディが375ドルのスポーツジャケットに50ドルのアンダーアーマー製スウェットパンツを合わせて登場した。同じ年、リーバイスは問題を抱えていることを認めた。当時、同社のチャールズ・バーグCEOはアナリストらに対し「市場(のトレンド)は伸縮性があって特別に柔らかい素材の方に動いたが、われわれは固い生地のままだ」と語った。

 リーバイスは2014年に男性向けアスレチックフィット商品を発売して方向転換を始め、15年に女性向け商品ラインを一新した。昨年には同社を代表する「501」にもストレッチモデルを採り入れた。

 アスレチックウェアの売り上げは依然としてジーンズの4倍のペースで伸びているが、その成長は鈍化し始めている。2016年のレギンスの売上高伸び率は6.8%と、前年の7.6%から鈍化した。その理由の一端は、ジーンズが経験したのと同じ供給過剰とイノベーションの欠如にあるかもしれない。

 一方、NPDグループのコーエン氏は、ジーンズの復調がずっと続くことには懐疑的だ。ジーンズメーカーの復活の多くはイノベーションではなく、ビンテージモデルの復刻が背景というのがその理由だ。

 そして、競争もまた続いている。ナイキは最近、「architecturally reinforced denim(構造強化デニム)」の特許を得た。この生地はスケートボーダーなど衣服にとって過酷な条件の下でスポーツを楽しみつつ、ファッション性も重視する層を意識して開発したものだという。

By Anne Steele