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ヤマトの27年ぶり宅配便値上げ-浮き彫りになる構造問題と課題

6/13(火) 0:00配信

Bloomberg

江戸川区を中心に貨物配送業を手掛けるアート・プラは昨年末、ヤマト運輸からの配送業務の受託を打ち切った。同社の横田浩崇社長は「うちはドライバーが個人事業主。最終的にはドライバーの判断になるが、相談しながらもっと割の良い仕事があると紹介するのは私の仕事」と語る。

以前はヤマトや佐川急便など大手からの仕事を数多く受けていたが、その業務の平均的な労働時間は1日14、15時間と長く、「長期間続けるのは可能なのか常々疑問を感じていた」という。軽トラックに100個程度の荷物を積み配送するが、問題は再配達。「報道では2割程度とされているがもっと多い、感覚的には約半分程度だ」と話した。

ネット通販の盛り上がりで運送業界では人材不足が深刻しているため、適正な運賃を払ってくれる荷主を優先的に選べるほど仕事は十分にあると語る。横田氏の会社が受け取る手数料はヤマトの場合で荷物1個当たり160ー180円。このうち85%がドライバーの取り分となる。佐川や日本郵便の場合には150円程度とヤマトを下回るという。

ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスは4月、健全な労働環境を守ることを理由に27年ぶりの運賃値上げ方針を表明。首都圏から大阪まで最小サイズの荷物を送る場合、現在700円の運賃が10月1日以降は840円となるなど、最大2割引き上げる。また、過去2年間で計190億円のドライバーらへの未払い残業代があることが社内調査で発覚し、速やかに支払うことも発表した。

ヤマトの運賃改定は、所得の拡大で経済成長の推進を目指すアベノミクスの進展と解釈することもできる。完全失業率は2.8%と1994年以来の低水準まで下がり、有効求人倍率も1.48倍と1974年以来の高水準で労働需給がひっ迫している状況。値上げが賃金上昇へとつながり、その結果個人消費を拡大させるという「経済の好循環」が動き始めているという見方だ。

一方で、2%の物価上昇という目標実現の難しさも浮き彫りにした。ヤマトの場合は物流需要の急増でドライバーが不足したことを背景に値上げに踏み切れたが、他の業界ではそこまで環境が深刻化しておらず、値上げの動きが広がるかは不透明なためだ。

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最終更新:6/13(火) 15:14
Bloomberg