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復活を遂げた新日本プロレス 今後の成長戦略は?

6/14(水) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 国内のプロレス市場をけん引してきたプロレス団体、新日本プロレスリング(以下、新日本プロレス)。1997年をピークにその後業績が低迷し、年間40億円近くあった売り上げは11年には11億円にまで減少した。しかし、カードゲーム会社ブシロードが親会社となった12年から業績はV字回復。今期は37億円を見込んでおり、来期は過去最高の50億円を目指すとしている。

【『G1 Special in USA』のチケットが2時間で完売した(出典:新日本プロレス)】

 米国への進出も表明し、挑戦の場を世界にも広げた新日本プロレス。今後、どのような成長戦略でプロレス界を盛り上げていくのか。大のプロレスファン、作家の常見陽平氏が新日本プロレスの原田克彦社長と対談した。

●投資に成功したブシロード

常見: 新日本プロレスにブシロードが資本参加し、5年が経ちました。この期間に業績はV字回復。主力レスラーの認知度も高まりました。そして、映像配信サービスの新日本プロレスワールドも始まりました。この5年間の手応えはいかがですか?

原田: V字回復は、2012年からブシロード社長の木谷高明オーナーのもと、選手、スタッフ全員が一丸となって取り組んできた成果であり、そのバトンを受け継いだような感じですね。私は金融機関から2年前にブシロードに転じて、1年前に新日本プロレスの社長に就任しましたので。

常見: 木谷オーナーも、もともとは金融機関ご出身ですよね。いま、ピンときたのですけど、金融機関出身者の“目利き”のようなものを感じました。新日本プロレスを買ったことは素晴らしい投資だな、と。投資の基本として、もともとの価値や実力以上に評価の下がっているものに注目し、その価値を上げていくというものがあります。

原田: そういう視点はあるかもしれません。

常見: 今振り返ると「低迷期」と言われた08年くらいに、大学のプロレス研究会の友人と一緒に、両国大会を見に行ったことがあります。その頃は僕らも会場に行かなくなっていて。「もうこれが最後かもしれないね」くらいの気持ちで行ったのですが、会場は片面をステージにしてつぶしていたものの熱気ムンムン。何より、試合が面白かったのです。

 それをブシロードの傘下になって広告宣伝費も投じ、大ブームになったなあ、と。これはナイスな目利きだなと。

原田: そのあたりの目利きはあったと思います。

常見: 団体内の新陳代謝も進んだというか、いや、正確には若手からベテランまで層が厚いというか。変化を感じます。選手のグッズを身に着けている人を街で見かける機会も増えました。決してスターとは言えなかった内藤哲也選手のファンも増え、盛り上がっているのを見ると、選手にも良い投資をしたなあと感じます。

 以前、インディーズと呼ばれていたような団体の規模が大きくなったり、老舗団体が分裂したりと、何かと変化の多い日本マット界ですが、今やメジャーと呼ばれる団体は新日本プロレスだけなのではないですか?

原田: 何をもってメジャーと呼ぶかは分かりませんが、業界トップであることは間違いありません。新日本プロレスが栄えると、プロレス業界全体が潤うという構造はあるかと思います。実際、他団体の動員も上向いているという話は聞きます。

 もっとも、それは国内の話です。グローバルで見ると、WWE(米国のプロレス団体)の売り上げは弊社の約25倍。WWEには、まだ対抗するどころか、学ばせていただくというステージかと思っています。エンターテインメントカンパニーとしては良いお手本といいますか。

●米国市場を開拓

常見: とはいえ、WWEには新日本プロレスの選手も移籍しましたし、他団体からも日本人レスラーが採用されています。日本のプロレスはWWEに比べて、空中からの豪快な技はもちろん、寝技、コンビ技のようなテクニカルな技までバリエーションが豊富です。こうした日本のスタイルをどんどん取り入れているようにも思います。

原田: WWEのファンの間では、もっと違ったプロレスを見たいというニーズもあると思っています。そこで私たちは2017年の7月に、米国での大会『G1 Special in USA』を開催することを決めました。

 チケットを販売すると、なんと2時間で完売。会場は約4500席くらいのキャパですね。追加販売もしたのですが、こちらも一瞬で完売でした。現地でのプロレス熱を感じますね。米国はプロレスの本場ですが、またそれとは一味違うものを見たいというニーズがあるようです。今後も、米国市場を開拓していきたいと考えています。

●大河にも出演 メディア露出強化でファンを増やす

常見: 改めてブシロード体制になって5年、原田社長に交代して1年が経ったわけですけど、今後の展開について教えていただけますか?

原田: 先ほどもお伝えした通り、新日本プロレスは業界ではトップかもしれませんが、世間的にはメジャーというわけではありません。国内においてもまだまだ一般の人たちには認知されていないと思います。逆にそれだけ成長余地が大きいと捉え、老若男女あらゆるファン層を増やしていきたいですね。

 そのためには、やはり選手のメディア露出の強化が必要です。その取り組みの1つが、真壁刀義選手のNHK大河ドラマ『直虎』や、バラエティ番組への出演などです。真壁選手だけでなく、今後も所属選手達がドラマやバラエティを中心とするテレビ番組に出演するようになるかと思います。街頭広告、紙媒体、ネットでの広告宣伝も引き続き注力していきます。

常見: メディア展開と言えば、80年代のように、ゴールデンタイムで生中継などはどうでしょう。

原田: それを求めるファンがいることはありがたいです。もっとも、録画で見る方も増えていて、時間帯が大きく関係するわけでもないんですよね。また、現代においてプロレスがゴールデンタイムに合ったコンテンツなのかという論点もあるとは思います。最近では、深夜枠の中でも視聴率の高い午前0~2時の時間帯を確保できていますし、テレビ局内でのステータスは高まってきています。

 映像でいうと、主要大会の全試合を視聴できる会員制動画配信サービス「新日本プロレスワールド」を強化します。現在、会員数は5万人。これを、10万人にまで伸ばそうと考えています。実は17年に入ってから1万人伸びています。しかも、海外からの契約が増えていて、現在は約2割強が外国人ですね。

●2020年に東京ドームを超満員にする

常見: 1月4日の東京ドーム大会では、ここ数年、著名な外国人レスラーが多数参戦しています。やはり、世界で新日本プロレスワールドの契約者を増やそうという意図があるからですか?

原田: それはたまたまです。海外展開については2017年7月にロサンゼルス大会で全米進出しますが、他にも映像コンテンツで勝負していきたいと思います。今後も、海外からの新日本プロレスワールド契約者を増やしていきたいですね。他にもアジア各国での大会も強化していきたいですし、インバウンド観光客を取り込む仕掛け考えています。

常見: 団体のM&Aはあり得ますか?

原田: 成長戦略の1つとして、ありですね。ただ、具体的にどの団体がなどと検討しているわけではありません。

常見: あと、これは触れざるを得ません。最近、柴田勝頼選手、本間朋晃選手を始め、ケガ人が続出していますよね。しかも、選手生命に関わるような大きなケガで……。安全面は大丈夫ですか?

原田: ご心配をおかけしております。新日本プロレスは年間150程度の大会があるので、選手のコンディションに注意を払っていかなければいけません。健康管理をしっかりすること、選手の出場ローテーションを考えること、連戦を可能な限り避けること、移動手段も多様化させることなど、さまざまな対応を考えています。

 ただ、選手たちは常に出場機会を求め、リング上で最高のパフォーマンスを披露することを追求しています。それにどう向き合うか。経営する側は問われているのだと思います。

常見: 企業での働き過ぎの問題では、必ずしも経営者が酷使しているからというわけではなく、従業員が自ら働き過ぎてしまっているという問題もあります。それと似ていると思います。

 最後に、今後の抱負を聞かせてください。

原田: グローバル展開もそうですが、20年に東京ドームを超満員にするという目標を立てています。今日、お伝えしたような打ち手を確実に行っていけば、間違いなく実現できると信じています。

常見: ありがとうございました!