ここから本文です

2019年問題の解決に期待、ヒートポンプ給湯機のデマンドレスポンスを評価

6/14(水) 7:10配信

スマートジャパン

■デマンドレスポンス効果を定量的に評価

 2012年に開始した固定価格買取制度(FIT)により、導入が急速に進んだ太陽光発電システム。住宅用は当初48円/kWh(キロワット時)の買取価格が適用されてきたが、最も早いものだと2019年11月に買取期間が終了する。それに伴い、余剰買取価格は大幅に下がり、5~10円程度になる見通しという。これが太陽光発電の「2019年問題」である。

【図2:ヒートポンプ給湯機最適運転によるコストメリット】

 この2019年問題への対応として、太陽光発電の自家消費拡大に対するニーズが拡大するとみられている。そうした中で、東京大学 生産技術研究所エネルギー工学連携研究センターの岩船由美子氏らは、ヒートポンプ給湯機のデマンドレスポンスと蓄電池の活用による家庭用太陽光発電システムの自家消費量拡大の効果について評価を行った。

 デマンドレスポンスとは電力系統の柔軟性向上施策の1つだ。電力系統側のニーズや供給状況に応じて、インセンティブの付与などと引き換えに需要家が消費パターンを変化させることである(関連記事:キーワード解説「デマンドレスポンス」)。

 研究グループは家庭のデマンドレスポンス効果を定量的に評価するため、柔軟な料金システムに対応できるヒートポンプ給湯機と蓄電池最適運用モデルを構築した(図1)。太陽光発電と給湯機を保有する世帯で、24時間先までの料金を最小化するものである。

 過去需要と発電量、気象予測情報を用いて、前日の23時に翌日の給湯需要、その他電力需要、発電量の予測を行い、予測に基づいて給湯機と蓄電池の運転計画を作成する。当日はこの計画と実需要に基づいて運転が行われる。

 ヒートポンプ給湯機のモデル化では7世帯の実運用データに基づいて、貯湯ロスと運転効率を模擬した。給湯機の最適運用による経済性の評価は、家庭用太陽光発電と給湯機を保有する357世帯の家庭用エネルギーマネジメントデータを用いたとする。

■年間平均5800円のコストメリット

 今回の想定では、購入電力を旧一般電気事業者のオール電化向け新料金(昼間32円/kWh、夜間/16kWh)、家庭用太陽光発電余剰買取価格は10円/kWhと想定。最適運用の結果、晴れた日には余剰電力で湯沸かし運転が行われ、平均5800円/年のコストメリットが生じるという(図2)。従来の夜間運転における電気料金の7%に相当する額だ。

 コストメリットは夜間電力価格の16円/kWhと余剰買取単価の10円/kWhの差から生じるもので、買取価格がより安くなると、コストメリットはさらに大きくなる。ヒートポンプ給湯機の電力消費量は、夜間運転に比べて平均11%程度省エネになることもメリットだ。昼間は高い気温下で運転できるためエネルギー消費効率が向上すること、お湯を作ってから使用までの時間が短くなることの相乗効果によるものとしている。

 最適化を行わず、翌日の太陽光発電量が基準値以上の場合「晴れ」と判断して10時に湯沸かし運転開始、それ以外は従来通り夜間運転という簡易な方法でも、コストメリットは5300円/年となった。最適化したケースに近い効果が得られていることが分かる。

■自家消費率も32%から45%に増加

 図3は蓄電池と給湯機の最適運用による357世帯平均の年間コストメリットと、蓄電池の単純償却年数を示したものとなる。電池の価格は9万円/kWhと、資源エネルギー庁が2020年の目標に定めている数値を想定。2~10kWhの蓄電池を家庭用太陽光発電保有世帯に導入して余剰発電を貯蔵し、夕方以降放電すると1万~3万2000円/年のコストメリットが生じる。しかし蓄電池容量が大きくなるにつれて、コストメリットは飽和する。

 蓄電池容量が小さいほど償却年数は短くなっているが、最も短いものでも、電池の公称寿命である10~15年では電池のコストを回収できない結果となっている。

 図4は、ヒートポンプ給湯機最適運転と電池の導入による正味の電力消費量と自家消費率の変化を示している。蓄電池の場合、充放電によるロス(それぞれ90%)が発生するため、正味の電力消費量は電池がないベースケースに比べて大きくなる。

 最適運転を行うと省エネになるため、正味の電力消費量が8%減少したという。また家庭用太陽光発電自家消費率は、ベースケースの32%から45%に増加。2~4kWhのバッテリー導入による効果に相当するものであることが確認されたという。

 研究グループは今後、実フィールドで実機に導入可能なヒートポンプ給湯機の運転方法を検討するなど、より現実的な自家消費量拡大効果を評価していくとした。